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ホームトレーニーのリングフィットアドベンチャーレビュー #3 アドベンチャーモード

さて、「リングフィットアドベンチャー(以下、RFA)」のレビューも3回目ということで、いよいよ「アドベンチャーモード」のレビューをしていこう。というか、大半のプレイヤーはこの「アドベンチャーモード」をメインに遊んでいると思うのだが、手慣らしにと思った「大胸筋チャレンジ」「ストイック大胸筋」に思いのほか気付いた点が多く、後回しとなってしまった。

あのまま個別メニューをやって、その都度レビューをしていては「アドベンチャーモード」のレビューが何年先になるかわからない、ということで、ここらで少し触れておくべきである。

ちなみに先に言っておくが、筆者は3つのステージから成る「ワールド1」を攻略したに過ぎない。この先、現段階より多くの要素・キャラクターが登場することは大いに予想のつくところだが、レビューの約束事として、それらのことは触れすぎず、主に現時点での雑感をまとめておこうと思う。

悪の筋トレドラゴン登場

「アドベンチャーモード」はプレイヤーの分身たる「主人公」と、リングの精(?)であるその名も「リング」と共に、世界を闇のオーラに包まんとする悪の筋トレドラゴン「ドラゴ」(「悪の筋トレドラゴン」はTwitterで見かけた表現だがあまりに良いので借用させていただいた)を追い、戦うというストーリーだ。

先にボス戦の画像を出してしまうが、これがドラゴ様のご尊顔である。

主人公は「リング」に封印されていた「ドラゴ」を、「このままだと大変なことになる」と騙されてあっさり解放してしまうのだが、この展開のスピーディーなことといったら、さすがは「クッパがピーチを」の流れを重んじてきた任天堂だと言わざるを得ない。

やれ、運動することが主体のゲームだから、主なストーリーとしてはたったのこれだけで、「リング」と「ドラゴ」の因縁が伏せられているものの、この後どんな運動をすることになるのかが気がかりで仕方ないプレイヤーとしてはなんというか、この時点ではいまいち興味がわかない。まあ、こういうゲームに求めるストーリーは極限までシンプルなほうがいいだろう。下界のファルシのルシがコクーンでパージされる様子を見せられて運動する気になるかと言われたらならないし。

プレイを再開するとストーリーを数行で説明してくれる親切心に泣いてしまう。

なんでも吸い込んで空気弾を吐き出す任天堂のキャラクターってな~んだ?

「アドベンチャーモード」の実際の流れを軽く解説しておこう。

「アドベンチャーモード」を選択すると、プレイヤーのパーソナル情報を入力し、それによって最初の「運動負荷」が決まる。筆者の場合は「26」で、その後、日を改めてプレイしたときに行った選択で「30」にまで引き上げられた。ちなみに「30」が最高らしいので、それ以降は最も難易度の高い状態でプレイすることとなってしまった(設定画面で変更可能)。

ステージに赴く前には「動的ストレッチ」を勧められる。やれ、ひと昔前までは運動前のストレッチといえば「静的ストレッチ」が主流だったが、怪我の危険性やパフォーマンスの低下が指摘され、現在では殆どの場合「動的ストレッチ」が推奨されている。これは、関節をダイナミックに動かし、筋肉を温めていくような運動になるのが特徴だ。

筆者もウエイトトレーニングを行う前は大抵の場合ウォームアップを行うが、1種目目のメニューを軽量で反復するほか、動的ストレッチを追加することもある。実は「エイサイハラマスコイおどり」こと、ブランカの立ち強パンチ→しゃがみ強キックの繰り返しが非常に良い動的ストレッチとなるため、動きをご存知の方はお試しいただきたい。

余談は置いといて、ステージの構成に移ろう。

ステージは(少なくとも筆者がプレイしたところまでは)1本道のランニングコースとなっている。例えが伝わるかわからないが、筆者の第一印象としては「クラッシュバンディクー」シリーズの強制奥スクロール面のような感じである。左脚に装着したジョイコンによって、プレイヤーがその場で足踏みをすると主人公も走り出す。これが最も基本的な操作だ。多くのアクションゲームだと、キーやスティックで行うアクションが足踏みになるわけだから、すこぶる大変である。

また、リングコンを押し込むとリングは空気の弾を発射して、木箱などのオブジェクトを破壊し、中のコイン(?)を獲得することができる。逆に、リングを引っ張る(広げる)と、周囲の空気ごとアイテムを吸い込んで獲得することができる。ピンクボールじゃん。

リングコンを下に向けて押し込み続ける(キープ)と、空気を下に吐き続け、一定時間浮いて移動することができる。ランの勢いのおかげか、下に空気を吐いているだけなのに前進する。

その他、大きく「モモあげ」をすることで階段を上る、身体を捻ってリングの向きを変えるなどの操作もあり、全身を使ってステージを駆けていくことになる。

これは後ほど詳しく解説していくので存在にだけ触れておくが、敵シンボルとぶつかることで(強制?)行われる「戦闘」もある。

全編において、運動負荷に比例して主人公の髪が激しく炎上するといった演出がなされており、これのおかげでプレイヤーは視覚的にも負荷を確認できるというわけだ。ゲームならではのユニークな仕掛けと言える。

アドベンチャーモードの意外と複雑な実態

筆者のレビューの決まりとして、レビュー対象の運動がどういった分類になるのかを今回も考えていこう。既・未プレイ問わず、多くの方が「アドベンチャーモード」を「有酸素運動」と捉えていると思う。確かに、「有酸素運動」の要素は多分にあるのだが、筆者は「戦闘」の要素が含まれていることを考慮して、これを「サーキットトレーニング」であると位置づけたい。

「サーキットトレーニング」とは、複数の種目をインターバルなし(或いはかなり短くとって)連続して行うトレーニングのことである。

ここで「戦闘」を解剖していこう。主人公は、プレイヤーによる「筋トレ」で敵を攻撃する。例えば、攻撃手段として「スクワット」を選択し、プレイヤーが「スクワット」を行うと、1回ごとに敵にダメージが入る仕組みだ。Wiiの「ゼルダの伝説」シリーズではリモコンを振るとリンクも剣を振るうが、あれの筋トレ版である。

攻撃回数は「負荷設定」によって決まるようで、一定数の攻撃を繰り返したのち、敵の攻撃に移るというターン制だ。

さてこの「戦闘」においても決して見逃せない筋トレポイントがあるのだが、今は分類の話をしているので、それは後ほどとしよう。

攻撃手段は「スクワット」「バンザイプッシュ」「ニートゥーチェスト」「椅子のポーズ」から選ぶことができる。さすがに、この4種だけで終盤まで遊ぶのはいろんな意味でキツいので、ゲーム進行とともに増えていくだろう。選択は基本的に自由だが、同じ種目を連続して行うことはできない。「スクワット」で敵を倒しきれなかった場合、次の自分のターンで「スクワット」を選択することは出来ない。

さて、「戦闘」ではプレイヤーは足踏みをする必要がない。「戦闘」のあるステージでは、プレイヤーは「ラン」→「戦闘(ほぼ強制的に複数種目の筋トレを行う)」→「ラン」…の順で運動内容を変化させながら攻略していくのだ。これが単なる「有酸素運動」ではなく「サーキットトレーニング」とする所以である。

サーキットトレーニングは間違いなくキツい

「アドベンチャーモード」では、戦闘以外の場面では「走る」「身体を捻る」「リングコンを押し込む」「リングコンを引っ張る」の要素があり、それぞれ対応している筋肉は

「走る」→「大腿四頭筋」「ハムストリングス」「カーフ」

「身体を捻る」→「腹横筋」

「押し込む」→「大胸筋」「上腕三頭筋」

「引っ張る」→「広背筋」「僧帽筋」「上腕二頭筋」「三角筋(後部)」

といったところだろう。さらに、戦闘では

「バンザイプッシュ」→「三角筋(側部)」

「ニートゥーチェスト」→「腹直筋」

を行えるので、運動として(筋トレとしてではない)は全身をほぼ網羅しているといってよい。「サーキットトレーニング」「ある部位の運動をこなしている間に、動かしていない部位は回復する」ことを利用して、連続して複数の種目を行うわけだが、現実として、全身をくまなく対象とするサーキットトレーニングは非常に高い強度の運動である。

よって、何も考えず、対策もせずに毎日これを行うのは、確実にやりすぎである。時々は負荷を下げたり、休みの日を設けたり、個別メニューだけの日を設けるなどして無理のない範囲で運動を楽しんでいただきたい。休むことは決してズルでも不真面目でもなく、次の運動をもっと高負荷でハードに行うために必要なことなのだ。

過ぎたるは猶及ばざるが如し

恒例として、「アドベンチャーモード」の効果についても考えておこう。

運動面ではないが、「アドベンチャーモード」の進行はとても親切で、「リング」が事あるごとに褒めたり応援してくれたりするので、非常に気持ちがいい。また、ステージもきっと単調になることなく、先に進めば進むほど面白いギミックが出現してくることだろう。多彩なギミックのステージをシンプルな操作で攻略していくのはこれもまた任天堂の得意とするところである。また遊びたいと思わせる面白さは継続の助けになる。

スコアや経験値、レベルといった要素もゲームに親しんでいる人にとっては継続の大きなモチベーションとなるだろう。

運動面においてだが、「アドベンチャーモード」のメニューは「ラン」「モモあげ」などから成る「有酸素運動」と「戦闘」を構成する「無酸素運動」複合だ。よって、「有酸素運動」と「無酸素運動」両方のメリット・デメリットを得ることになる。

結論としては、「運動を習慣化したい人」には優秀だが、「ダイエットしたい人」「筋肉を成長させたい人」にはパーフェクトとはいえない運動だ。

残念ながら「有酸素運動」など長時間の運動は筋タンパクの分解を亢進させてしまうため、やりすぎると筋肉の減少を招く。しかし、せっかくゲームを楽しみ、或は購入を考えているのにこんなことを言われては面白くないだろうから、ここではメリットを活かす方向で考えてみよう。

「有酸素運動」は「大多数の人が行える」「心肺機能の向上」「血行の改善」といったメリットも持つ。これらのことから、(ハードな)「筋トレ」の補助として考えると良くなりそうだ。すなわち、「戦闘」における筋トレのために「ラン」で身体を温めておくという構図だ。そして、自身の疲労度は「戦闘」中の状態で考える。「戦闘」でヘトヘトになっても、足踏みに戻るといくらかは再び動かせるようになる(スクワット等の脚トレをしなければ特にそうだろう)と思うが、「戦闘」で疲労困憊にまでなったら、いくら「ラン」ができそうでも、そこで「アドベンチャーモード」は終了しておこう。

もちろん、「ラン」自体を楽しむのを否定するつもりはない(筆者も走ること自体は大好きだ)し、何時間走ろうともその人の自由ではある。ただし、ここでは運動の効果を考え、述べるものであるから、それに沿った文を書かせてもらった。

さて、もしかしたら、「ダイエットに向かないのはなんで?」という疑問をもった方もいるかもしれない。これについては、先述の通り「有酸素運動」が筋肉の減少を招くリスクがあるからなのだが、せっかくだからダイエットにおける筋肉の有効性についてもほんの少し触れておこう。筆者の生活は「せっかくだから」に振り回されている。

せっかくだからおれはこの赤の筋肉を選ぶぜ

「筋肉が多いと基礎代謝で消費されるカロリーが増えるので太りにくい」というのはなんとな~く、どこか~で見聞きしたことがあるだろう。

それはそれで間違ってはいないのだが、今回は「ほんの少し触れる」と言った手前もあるので、「インスリンヒエラルヒー」の理屈から筋肉のダイエットへの有効性を語るにとどめておこう。ちなみにこれはリングフィットアドベンチャーのレビュー記事である。

「インスリン」ほど有名なホルモンは他にないだろう。血糖値を下げる唯一のホルモンである。この「インスリン」は血糖を身体の組織に送り込むことで、結果的に血糖値を下げてくれる役割があるのだが、これは「筋肉」→「肝臓」→「脂肪」の順に働く。つまり、「筋肉」が身体における割合として大きければ大きいほど、インスリンの肝臓や脂肪への働きを抑えることができるため、太りにくくなるのだ。この、インスリンが働く順番のことを「インスリンヒエラルヒー」という。

わかりやすくするために数字を用いてみよう。A君の血糖キャパシティをそれぞれ「筋肉:3」「肝臓:2」とし、一方でB君の血糖キャパシティを「筋肉:5」「肝臓:2」とする。インスリンヒエラルヒーは「筋肉→肝臓→脂肪」の順であることを念押ししておく。

さて、両者が「10」の血糖を得ている場合、A君の「脂肪」に作用する量は「10-3-2」で「5」となり、実に血糖の半分が脂肪に作用することになる。B君はというと、「10-5-2」で脂肪に作用する血糖は「3」だ。つまりB君はA君よりインスリンが脂肪へ働く割合が少なく、肥満しにくいということが言える。

これが、「筋肉が多いと太りにくい」所以のひとつだ。豆知識程度の感覚でもいいから、覚えておくといいだろう。

ちょっとだけドラゴさんについて話させてほしい

もう筋トレ理論なんだかレビューなんだかわからなくなってきた感があるが、最後に「アドベンチャーモード」の宿敵であり萌えキャラでもある「ドラゴ」さんについて、彼がどういった人ぶ…じゃなくてドラゴンなのかを見ていきたい。

まず、「ドラゴ」さんは「リング」に封印されていたわけだが、「リング」をテープでぐるぐる巻きにしてあるという、筆者のようなスーファミロクヨンプレステ世代にとってはコードを巻かれた有線コントローラーを思い出さずにはいられない郷愁的な封印方法だった。

それも主人公が筋力でブチ破るだけで解かれてしまうのだから絵面の勢いが凄い。昭和ライダーか。

さて、主人公のおかげで無事、自由を手に入れた「ドラゴ」さんは「世界を闇のオーラに包もうとしている」らしいが、主人公と「リング」が彼を追跡し始めた時点で「ドラゴ」さんはまだ何もしていない。強いて言えば、主人公を(極貧のボキャブラリーで)騙して脱獄したことであろうが、そもそも投獄された理由がハッキリしていない。まあ、何か悪いことでもして封印されたのだろうと思うのだが、この考えこそ冤罪のもとであり、まだ彼を悪者だと決めつけることはできないのだ。そんな彼を悪と決めつけ、追跡する主人公の様子はさながらレッドマンである。

さて、ワールド1の3面ではそんな「ドラゴ」さんがボスとしてレッドマンの前に立ちはだかるのだが、腕立て伏せをしながら待機しており、「筋トレは継続が大事なのに、ずっと閉じ込めておくからなまっちゃったじゃん」などという健気すぎる台詞をボヤいてくれる。その筋骨隆々の肉体は並大抵の努力では構築も維持もできないだろうから、封印の苦しさは人、いや竜一倍だったであろう。この努力家ぶりなら、封印中はインスリンヒエラルヒーの勉強でもしていたに違いない。

ところで、そのシーンのスクショを撮り損ねたので再プレイしてみたところ、「ドラゴ」さんはいずこかへと飛び去ったままで、ストーリーを反芻することはできなかった。このあたりはアップデートで再挑戦できるようにしてもらいたい。

さて、ボス戦ということでこの「ドラゴ」様をレッドマンが筋トレでボコボコにしばくのであるが、体力が非常に高く、筋トレのボリュームもなかなかのものとなる。さすがは悪の筋トレドラゴンを名乗るだけのことはある(名乗ってはいない)。

ただこの「ドラゴ」さんはいわゆる「はねる」を行う敵で、「筋トレのメニューを考えている」とかなんとかで攻撃を行わないターンがあり、かなり一方的な攻撃をその身体に受けることになる。ここまで何も悪いことをせず、筋トレに打ち込み、理不尽な暴力を受けながらも反撃は最小限に留めるなどこれを平和と言わずしてなんと言おうか。悪の筋トレ平和竜とでも改名したほうがいいのではないか。

これからの「アドベンチャーモード」は「ドラゴ」さんに大注目して行っていきたい。今回はここまで。ありがとうございました。

がんばれぼくらのドラゴさん!

まけるなぼくらのドラゴさん!

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