さくら

桜が散った。ひらひらと静かに落ちていく桜の一つ一つに命が宿っていて、そこから華々しい光が放たれていた。
「眩しくない?」
「眩しい」
「地球の生物はどうしてこう眩しいんだ」
「さあ。でもここでなら面白い経験ができるんじゃない?」
「そうかもな。お前がやるなら私もやろう」
「じゃあせ~ので」
大気に飛び込んだ彼らも、眩しい花びらになる。


あなたの心を聞かせて。
わたしの心が見えないから。
お互いの心を交換したら、自分の心が見えるのかしら。


雨が降る、雨は地面に染み込む。植物が吸い上げる。吐息に紛れて空気に混ざる。空に上って雲になる。雲は集まり雨になる。雨は降る、川に流される、海に出る。太陽に熱せられて飛び上がる。今、あなたはどこ?


眠ればほどけて幻を見る。かつてあった物語。遥か昔の記憶、遠い未来の自分の姿。すべての可能性がそこで交わる不思議な場所。
夢の中の図書館にて、本を開く。

昔々、人々は祈りました。
昔々、神様はそれに応えました。
すると人々は神様を祭り上げ、神様は願いや思いを取り込んで形を作り、神なる概念ができました。
「もうそれを捨てられないの」
ポツリと誰かが言いました。

星は星のままでは使えません。星は砕いて、ぐらぐらと煮詰めて、燃やして、熱や光を捕まえて、それでさらに巨大な風車を回して、それからここをカチッと回すとほら、使える電気に早変わり。ほら、これが星の力でできたスープ。原型なんてもうないけど。


宇宙のとなりには宇宙がある。隣の宇宙の晩御飯はどうやらシチューのようで、自分の宇宙の晩御飯は唐揚げだった。
「もっと違うのかと思ってた」
「そりゃ、お隣だもの。でもほら、もっと離れた宇宙は光を食べて生きているかもしれないよ、離れるほど法則は変わるから」
「いいなぁ」
「じゃあ唐揚げは要らないかなー?」
「食べる!」


おわり

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