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不可解な自己言及「自分は詐欺じゃない」

SNSで盛んに個人間での売買がなされるようになり、それに伴いよく見かけるようになった
「自分は詐欺じゃない」
なる類の文言。
 まるで”言語は万能である”とでも言いたげな態度がチラホラ見受けられる。しかし、この「自分は詐欺じゃない」という表現は、その内容に効力が無く、詐欺ではないことを全く証明できていない事は簡単に指摘できる。にも関わらず、その簡単な事に気付いていない(と思われる)人があまりにも多いため、記事にしてみることにした。

この自己言及で詐欺ではないことは証明出来ない理由として、次の二つがある。

1.言語の限界
 「私は詐欺師じゃない」という主張の発言者(主語)を「私」の場合と「本物の詐欺師」の場合で考えてみる。

        私「私は詐欺師じゃない」
        本物の詐欺師「私は詐欺師じゃない」

 両者の主張は同じである。例え真に「私」が詐欺師ではなく、「私」がそれを主張していたとしても、それは飽くまで「私」の主観に過ぎず、「私」にしか分からず、自己の内に留まるのみ。ひとつも客観性を持たないため他人と共有はできない。他人と共有出来てこその「証明」であるが、それが出来ない。

私「私は詐欺師じゃない」
他者「知らんがな」

お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中ではな
「主観」はその個人だけの物。他人と共有出来ない。ある個人の「主観」は他者からは手の届かない、見ることも出来ない「絶対的異物」なのである。

 加えて、本物の詐欺師も「私は詐欺師じゃない」と主張することが出来るため、この表現には逆説が含まれる事になる。論理が破綻しているため、説得力がまるで無い。

【余談】
A氏「私は詐欺師じゃない」
水晶海「一般論として、そのような発言自体が詐欺師によるものである可能性もありますが、Aさんはどうお考えですか?」

 上記のようなやり取りをTwitterでしていたら、A氏(の腰巾着のような)この人の知人数名が
「Aさんは詐欺師じゃない」
と的外れな事を言って私を罵ってきた。

 読解力ゼロなのだろうか……?

【2020/07/18追記】
※当時保存したスクショが見つかったので、ここに貼っちゃいます。スクショを保存した理由は「腹が立ったから」などではありません。“論点ズレ”の良いサンプルだと思いまして。

詐欺しませんよ20200718
この「先輩」は実は裏社会の重鎮らしい

2.実績は証拠にはならない。
”太陽が明日も昇るというのは仮説に過ぎない。すなわち、われわれは、太陽が明日昇るかどうかを知ってはいないのである。”
(ウィントゲンシュタイン)

 「これまで自分は1度も詐欺をしていない」
という意味でこの自己言及を使っていたとしても、将来の詐欺を働く可能性を0%にする事は出来ない。
 例えば、今まで10000回、実直な取引きをして来た善良な売り手が10001回目の取引きで詐欺を働く可能性はゼロなどとは言い切れない。
 どんな売り手にだって詐欺に転ずる可能性は常にある。
 「詐欺ではない」と証明されるのは、無事に取引が終了したその瞬間であるのは、皆経験的に理解しているはず。その取引の結果が出るまでは、Amazonや楽天のような大手通販サイトですら詐欺の可能性はいつでもある。

実績は参考に過ぎないのである。

そして、人は誰しも一寸先は闇。

どんなに自分で「詐欺はしない」という自信を本人が持っていたとしても、一寸先は闇な以上、生きとし生けるもの全てに「詐欺をしない確率100%」の根拠はどこにも存在しない。自分の意思が及ばない事や自分の意思ではどうにもならない理由で、気付いたら「詐欺をしてしまっていた」という可能性も十分考えられる。
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既に述べたが、「詐欺ではない」と普遍性を持って理解されるのは、その取引の結果が出てから。つまり、「詐欺ではない事の証明」は取引の都度、結果論でしか語れないのだ。

【2021/11/14追記】
傍ら痛い。未だにこんなツイートをする人がいた。

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「自分は詐欺じゃない」系自己言及の何がおかしいかがこの人は本気で分からないらしい。この表現の何がおかしいか?ーーーそれは学歴関係無しにその辺のガキにでもおかしい事にすぐ気付くような事。本文で述べたように簡単な理由である。
せめて、このツイート主にはこの自己言及には論理が成り立たない事くらい自力ノーヒントで気付いていただきたい。

【2021/11/23追記】
取引の途中、特に買う側がお金を支払う前にその取引が詐欺ではない事を証明する方法を私は知らない。
そこで、「詐欺じゃない」とよく言う人ならその証明する方法を知っているはずと思い、実際にその手の人にコンタクトをとって質問してみた、ソクラテスと同じノリで。

「いくらでも証明できる」
おお、頼もしい答え。でも、その方法について何やら言ってきた。リクエスト?いくらでも証明出来るんならとっとと自分で考えた方法で証明すればいいのに・・・。その方法が知りたくて、私はわざわざこの人にコンタクトをとって「詐欺じゃない事を証明して欲しい」旨を伝えた。どんな反応をするか本気で期待を大きくしたが、期待はずれもいいとこ。

この人は注文した商品を自分の名前とその時の時刻を記載したメモと一緒に写真に撮り送信する事を「証明方法」と言ってきたが、そうやって商品の写真を客に見せて、実際に現物が有ると安心させておいて、支払い後、「商品を送らない」という手口の詐欺があるので、これは詐欺じゃない事を証明する方法にはならない。
「いくらでも証明できる」と豪語したので私は期待したんだが、
「証明方法がそれぐらいしかない」
という始末。期待して損した。

詐欺じゃないことを取引の時に証明するなんて方法が本当にあるのなら、その方法はとっくに知れ渡っているに違いない。そんな都合のいい方法が無いからこそ、詐欺は跡を絶たないのではないだろうか。

(たぶん、まだ続く)



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