じいじとピクサー映画

これは私が中学生のこと。

とある休日に、じいじを映画に誘った。じいじは私のことが大好きで、一緒に出かけるとなれば喜んでどこにだって付いてきてくれた。

私が見たいと行った映画はピクサーの「少年とアーロ」という映画で、子供向けのものである。多分私はそんな子供向けの映画に友達を誘うのが恥ずかしかったんだと思う。何が見たいとも告げず、ただただ渋谷の映画館に行った。

昔から買い物や用事は渋谷ですることが多く、デパートや109での買い物には必ず母ではなくじいじと行くことが多かった。私が長々と買い物をしたりキッズスペースでゲームをして遊んでいてもずっと待っていてくれたのを覚えている。(今考えれば、ひどい孫だ、、、)

席に着いて映画が始まると、最初のうちはじいじも真剣に映画を見ていた。しかし、予想通りじいじは途中からうたた寝を始めてしまっていた。私は映画を楽しんでいたし、起こす必要性も感じなかったのでじいじをそのままにして映画の世界に入り込んでいた。

映画も終盤となり、感動のラストシーンに入る。ふと、じいじが気になって隣の席を見てみると、なんと、じいじが泣いていたのだ。

さっきまで寝てたのにこのシーンを見ただけでこんなに泣けるのか、、、なんと豊かな感受性、、、

私は映画のラストシーンと、じいじの感受性の豊かさにほっこりして、また見たい映画があれば、じいじと見に行こうとおもった。

映画が終わりカフェへ立ち寄り映画の感想を話していた時、寝ていたのを隠したいのか、一所懸命に自分が起きていて覚えているシーンの話を語らうじいじが、愛らしくて愛らしくて、微笑ましいひと時だったのを覚えている。

それから数回またじいじと映画に出向く機会はあったが、『少年とアーロ』を見に行った日が一番印象深い。だから私はこの映画が大好きになった。じいじとの思い出の詰まった作品である。

ちなみに、私が生まれて初めて映画館で見た映画は『モンスターズ・インク』で、その次に見たのが『ファインディング・ニモ』。どちらもピクサー映画で、二回ともじいじと見に行った。(記憶はない、、、)

じいじはこの出来事を覚えているだろうか。認知症で薄れて行く記憶の中、一つでも多く私との思い出を覚えていてほしいし、家族の誰よりも、私のことを記憶していてほしい。

今は老人ホームに入っており、なかなか一緒に出かける機会がないのだが、またもう一度、じいじと映画館で映画を見たい。

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