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でも夜が長すぎたので

多忙。

日本人は「忙しい」と主張した人間に対して尋常じゃなく牙を剝く。忙しいアピールをするな。寝てないアピールは寒い。俺はもっと忙しい。私はもっと寝てない。

全員等しく大変ですね、でいいだろ。

忙しいエーンエンと喚き散らしているがそもそもの原因は自らの怠慢だ。計画的に取り組んでいればここまでの悲劇的状況に追い込まれることはなかった。でも常にやることがあるのは嫌いではない。

最近は歌うとなると録音ばかりだった。というか動画を投稿し始めてからはずっとそうか。もっと前、nanaを始めてからかもしれない。歌は誰かに聴いてもらうための行為になり、カラオケでもツイキャスをしたり「どうせ歌うなら誰かに聴いて欲しい」という考えが常にあった。

ついさっき、閃光ライオットの存在を久しぶりに思い出した。かつてスクールオブロックというラジオ番組が主催していた10代限定の音楽フェスで、今は未確認フェスティバルというイベントに変わっている。二年くらい考えることもなかったので記憶の彼方に忘れていたが自分の青春だった。

青春だったといっても出演したわけではない。オーディション形式で全国から選ばれし猛者だけが決勝の日比谷野外音楽堂で演奏できるのだ。しかも10代限定。中学時代は本気でファイナルステージに行きたいと夢見ていたが地元ではとてもバンドをやれるような状況ではなかったので早々に諦めた。

そのフェスの初代王者が、いちばん好きなバンドだ。

そのバンドが決勝で披露したのが、

今日はそんなことを思い出しながら閃光ライオットのwebページを眺めて、自分もいつかこのステージに…と目を輝かせていた過去の自分を顧みた。

するとなんだかどうしても歌いたくなってきた。録音するかとマイクをセッティングしてソフトを立ち上げた。違う。じゃあnanaか。違う。ツイキャスか。違う。録音しておく気分じゃない。せっかく歌いたいのに。

「せっかく歌いたい」ってなんだ?

全部違うから、ただイヤホンをつけてその曲を流して歌い始めた。口ずさむってレベルじゃなく丁寧に歌った。自分しか聴いていないし、なんならイヤホンしてるから自分も聴いてない。すっごく新鮮な気持ちになった。厳密には、懐かしい?

かつてはこうやって歌っていた。これ以外になかったし。音程に合わせて声を出すことを単純に楽しむ心構えがすっぽり抜け落ちていたことに気づいた。

どんどん加速する日々から、数や値打ちをつけられていない誰にも触れさせない領域を守らないといけない。そこでしか生まれないものがあるんだろう。なんとなく感動した。

イントロを聴くだけで涙が出るほど懐かしくて少し寂しい曲だ。閃光ライオットに応募しなかったことを、ちゃんと後悔している。


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