2021/09 映画など

映画
・星の子

 評価が分かれそうな映画だ。パッと分かるキャッチーさは無いけれど、おもしろい映画だったと思う。
 ドラマチックじゃない、一定の距離感で、限りなく透明なフィルター(私が持ってるものと同色なだけかもしれないけれど)を介して新興宗教と一緒に生活している家族を描いている。人を簡単に悪者にしない、かといって善人にもしない、そのバランス感覚がとても心地よかった。
 ちーちゃんの天秤が揺れている。あの終わりの後で、彼女の天秤は大きくドラマチックに傾くのかもしれないしそうじゃないかもしれない。その不安定さを「中途半端だ」と感じる人もいるだろうけれど、彼女が物心ついてから今までずっと宗教とともに生きてきて、しかもそれと両親は分けることができないのだから疑念を抱いても、また揺り戻しが来るのだろう。
 私は、こういうテーマの作品とか現実問題としての話を聞いたりすると「そんなもん切り捨ててしまえよ、自分が楽に生きるのには無駄なものじゃないか」「嫌ならなんで行動できないんだよ」「何もかも捨てちまえ」って思うのだけれど、そう簡単なものじゃないんだって感じた。大森立嗣監督、どんな魔法を使ったんだ……

・残酷で異常

 あのタイプの地獄、嫌だな〜暗くなって終わりであってほしいよ。終わりがないことが一番怖い。死ぬより怖い。終わらない恐怖を描いたホラー映画ってないのかなって思うけど、映画という媒体が「終わること」を前提としたものだから矛盾してしまう。スプラッタよりお化けよりも怖いと思うから、もしあったら教えてほしい。
 後ろ30分がワクワクした。その準備のための1時間。

・ファイト・クラブ

 タイラー・ダーデンカッコ良すぎか??いや〜主人公の人生がタイラー・ダーデンに引っ張られてめちゃくちゃになる話かな?と思ってたらそういうことか……まあ、広義では当たってるよね!
 これが噂のケミカル根性焼きか〜絵面が良い。除け者にされていると主人公が感じる場面やマーラへの嫉妬を裏返すと、タイラーへの執着がふんわり見えて良い。憧れの人物に特別扱いされているのは癖になるからね。
 周りの人からはどう見えていたのだろう。
 タイラーがアニメ映画にポルノを一コマ入れてるのを見て、これ自体タイラーが切り貼りした映画なのか?とか思ったけど、タイラー自身がナレーターの人生(映画)に紛れ込んだ別の映画ってことなのね

・ドライブ・マイ・カー

 チェーホフの戯曲って台詞が良いんだな、知らなかった。「苦しみに耐えて生き抜きましょう。そして、死んだ後に申し上げるのです。つらかった。苦しかったと。そうして、穏やかに休みましょう」ざっくりこんな感じのことを言ってる(手話で)シーンが良かった。沢山の要素と物語をうまくまとめていて、なるほどこれが村上春樹ですか……1Q84読んで心に残ったの、拳銃自殺が正しい方法で成されたことへの感心だったので……
 セックスが描かれる世界で、渡と家福の関係性が性関係じゃなかったのが良かった。傷ついていたのに自分を覗き込むのが怖くて直視できなかったんだね。
 ソーニャともう1人の女の子が公園で稽古するところが「何かが起こった」ことを本当にスクリーンのこちら側にまで伝えてきたのすごかった。ああいうのって、「こちら側では特に何も感じ取れなかったけど向こうがそう言ったのならそういう体で受け取りますね」っていうのが多いけど、今回はちゃんと感じ取れた。

・ベイビーわるきゅーれ

 最高だった…………めちゃくちゃ良かった……これオタクが絶対好きなやつなのに何故こんなに上映館が少ない??もっとバカ売れしてほしい映画。
 2人の掛け合いのテンポも良いし、普通にカップ麺を啜ってる横でマガジンの手入れしてるのも良い。アクションはガチ。めちゃくちゃかっこいい銃撃戦もあるし、泥臭いステゴロもある。体力おばけのステゴロめちゃ強い子が戦闘終わって「つかれた〜」って座り込んで相方に(起こして!)って手を伸ばしてアピールするの可愛すぎて死ぬかと思った。まひろが「お願い!」するシーンもちさとが「お願い!」するシーンもあってどっちも🥺するのほんまに可愛い。どっちも「仕方ないなぁ」ってお願いきいてあげるのも可愛い。
 キマる映画。アッパー系。観終わった直後にもう一回観たいな、と思った。早く円盤化しないかな。続編出たらいいな〜

・ブラックスワン

 ん〜〜〜〜〜〜普通…?演技力すごいし、つまらなくはないけど……
 主人公の母親が「役に壊される!」って言った時、いやいずれこの子はあなたに壊されてただろうと容易に予測できるよとは思った。好きな登場人物が1人もいなかった。
 幻覚と妄想がかなり何度もあったから、主人公が代役の子刺した時もどうせこれも幻覚なんだろうなあ、むしろ現実で本当に刺してた方がきついなあと冷めた目で見てしまった。
 いまいちこの映画の楽しみ方が分からなかった。

・幼女戦記

 悪魔だな〜最初の教会のシーンで「帝国はいずれ負ける」ことが明示されたのでターニャ・フォン・デグレチャフちゃんが最終的にどうなるのか気になる。平穏な暮らしを手に入れることはできるのだろうか。
 父の仇への憎しみを原動力にするメアリー・スーとの戦闘で、感情的な相手に狼狽えたデグレチャフが「理性的な自由意志に基づいて、殺そう」って切り替えたところがカッコ良かった。メアリー・スーあれだけ撃たれてなお生きてるの怖すぎる。ほんとうに人間なのかな?
 軍人として部下の鼓舞がものすごく上手いんだけど、本心では戦争って無駄だよな〜と思ってるので、安心して観られる。

・生きちゃった

 これ……武田から厚久に対しては友情以外の感情もあると捉えて良いのですか?最後、なんで見ることができなかったのだろうと考えたんだけれど、うまくいかないであろうところを見たくなかったか、うまくいくであろうところを見たくなかったかわからなくて。見届けていたら、なんでこんなに良くしてくれるのかわからないぐらいのめちゃくちゃ良い友達なんだと思ってたけど、見れないとなるとちょっと話が変わってくるじゃないですか?厚久のずっと言えなかった本心は「奈津美が大好きで、すずのことも本当に本当に大好きで一緒に暮らしたい」だからそこに武田の居場所は無い。それが辛いから、見届けられなかったのかなと思ったのだけど違うのだろうか。
 武田が本当に良いやつ……奈津美は落ちぶれて死んじゃったけど、厚久が全然本心を言えない人間だったこと差し引いても奈津美が悪いよ。あの人生の終わり方、ある意味奈津美の理想通りだと思う。だって愛のために生きたかったんでしょ?愛した人の残した借金を返すために頑張ってる途中で、自分の過失全く無く被害者のまま死ねたね。夢が叶って良かったね。

アニメ
・オッドタクシー

 いや、ミステリーキッスのあの子好きだ……終わり方が不穏〜〜〜どうなっちゃったの!?大丈夫なのかな??脚本が綺麗だった……
 白川さんのカポエラは全てを解決してくれる……関口の「踏めてません!!!」は笑っちゃった。どういうこと?韻踏まないと死ぬんか、矢野は。

ゲーム
・死印

 ホラーゲームやるの久しぶりで、楽しかった。逃げるのすごく苦手で何回も失敗して怖さが全く無くなってしまうので、そういうシステムじゃなかったのがとても良かった。懐中電灯を使った探索システムも、照らすと顔が浮かんだり文字が浮かんだりして良いシステムでした。難易度的にもちょうど良くて、怖さのタイムパフォーマンスが良いホラーゲーム。

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