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Happy な読書

どうしても誰かと会話したくてメッセしたらChatに付き合ってくれた友達がいて。こんな時だしハッピーな本が読みたいと言われて、少し考え込んでしまった。

ハッピーな本ってどんなだっけ?

わたしは不幸な話は全然好きじゃない(それを目的に読んだりしない)し、ホラーはお風呂で読んでると怖すぎて出られなくなるくらい苦手だし、不愉快なものの方が簡単に目に触れる世の中でわざわざ不愉快なものを求めたりはしていない。はず、だ。
でも意外と、好きな話って、途中必ず寒かったり悲しかったり辛かったりする気がしたのだ。

浅薄な自己分析を披瀝するなら、ものすごく辛い失恋をした時聴いた失恋の歌がそれまでと全く別物だった感じとか、大切なものを失った痛みのあまり体脂肪率14%まで落ちたときに見えていた世界とか、主に実体験の鮮やかさに引っ張られて、そういう体験をした人の書くものやそういう体験の話の方が簡単に理解できるからじゃないかと思うのだけれど。
でも別に、だからといって表層としての物語がハッピーじゃない話である必要もまったくないのだ。
では改めて、ハッピーな話ってなんだろう。

幸せな気持ちのなりたいときに手に取る本。ハッピーな本…読んでいる時の、あるいは読み切った時の幸福感の記憶。
長く残る記憶は、わたしの場合、最中より主に読後感に左右される。
であれば、ハッピーな本とはハッピーな読後感の本であると定義した上で、今日はそれをあげてみたい。順番は思いついた順。

家守綺譚
梨木香歩著、新潮文庫 
圧倒的に清浄な潔斎領域。

ヘリオット先生奮戦記(上)
Jヘリオット著、大橋吉之輔訳、ハヤカワ文庫NF
ヘリオット先生はどれも大好きなんだよね…でもやっぱりこの初出のあたりが何回読んでもさいこうだし翻訳も良い。
表紙が変わっていて驚いた。
池澤夏樹さんも一冊翻訳している。そちらもおすすめ。

人間の大地
サンテグジュベリ著、渋谷豊訳、光文社古典新訳文庫
堀口大學の訳が有名。新訳版が出ており、こちらも読みやすい。Prime会員はお買い得。
特に今読むべきものだと思う。
わたしの人生の指針になっている本の一つ。

ゼンダ城の虜
アンソニー・ホープ著、井上勇訳、創元推理文庫
現実隣接型架空ロマン派冒険小説の走り。
般教のつもりで手に取ったけれど、なんか知らないけどスッキリするのが思いの外気に入った本。忌憚なくワクワクドキドキハラハラしていい。ネヴィル・シュートでもいいのですが、いま「パイド・パイパー」売り切れだし、という理由であえて古いものを。
いつかルリタニアの物語を描きたいと思っている。

度胸
ディック・フランシス著、菊池光訳、ハヤカワ推理文庫
ハードボイルドの圧倒的な面白さはディック・フランシスに教わった。チャンドラーとか目じゃない。←コラ
絶版なんだよねー。新訳出ればいいのにと思います。

運命綺譚
カーレン・ブリクセン著、渡辺洋美訳、ちくま文庫
これと夢織り女とエレンディラのマジカルさはクセになるけれど特にやはりこの北欧の芳しさは他にない。

三谷清左衛門残日録
藤沢周平著、文春文庫
長寿社会の生き方入門的な。
なんのかんの愛読していてうちに2冊ある。
なんというか、お節介おばさんみたいなおじさんの話。引退する時のギャップの乗り越え方とか、祖父を見ていて思ったことと合わせて考えたり、自分が勇気づけられる。
仲代先生のNHKドラマは良かった。

九マイルは遠すぎる
ハリイ・ケメルマン著、永井淳&深町眞理子訳ハヤカワ・ミステリ文庫
ラビシリーズが大好きなのですが、彼の本で日本で入手できる翻訳は今やこれくらい。
めちゃめちゃ面白い。
謎解き好きはとにかく読んでみてっていう。短編集で読みやすいし。
ラビシリーズの方はさらにユダヤ教の聖典ついての知見が増えて面白いのですが、英語版すら希少なので…

丘の家のジェーン
モンゴメリ著、村岡花子訳、新潮文庫(絶版)
The complete book of L M Montgomery
なんか角川の新訳がめちゃめちゃ評判悪くてですね、でも新潮版はとっくの昔に絶版であまり良い状態の中古もなさそうで、いっそのこと英文?って思ったら今Kindleは52円でモンゴメリ全集手に入るのね…常々「丘の家のジェーン」は英語で読みたいと思っていたので迷わずポチり。
わたしは小さい頃「赤毛のアン」が辛すぎて全然読めなくて、それに対してジェーンは、同じくらいダメな子認定なのに大好きで。
これは一重に作中の人物たちの暖かさや、父親による世界や文学に対する導きのあり方や、著者のあふれるプリンスエドワード島愛が子供心を掴んだからだと思う。
モース刑事とか教養主義的ミステリの引用の原典にあたるようになったのも海外の詩を読むようになったのもこの本のおかげだった。
ジェーンの父のように、世界と人類を愛したい人のための本。

子供の時、遅くとも高校までに読んだ本が圧倒的に多くてちょっと引く…けれども、何かの参考になれば。

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