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【京大吹零会 起業家インタビュー】株式会社Medixpost 大平 純一朗さん 医学部医学科 2014年卒

「京大吹零会」とは、京大出身(在学中も含む)の起業家を集めた、起業家コミュニティです。京大には変人が集まると言われるように、京大出身の経営者も変わった人が多いので、周りに理解されず、孤独になってしまうこともあります。そんな「吹き零れ」たちが集まり、経験をシェアして切磋琢磨する、唯一無二の会です。メンバー同士の交流を促すため、また、これから起業したい方に吹零会メンバーを知ってもらうため、隔週で「京大吹零会 起業家インタビュー」をオンラインで放送中。このイベントで収録した起業家たちの講演内容を書き起こし記事としてお送りします



【要チェック!】

公開インタビューのスケジュールや、記事を見て「起業したい!」と思った方のための「京大・起業相談デスク」についてはコチラをご覧下さい

学生時代のこと。

京都生まれ、大阪育ちということもあり、父親も京大出身だったので、東京に行くという選択肢をあまり考えていませんでした。1番好きな京都かなっていうことで京大に入りました。

生物の勉強が好きだったことが一つの理由ではありましたが、最初から医者になろうとは思っていませんでした。中高生のときに強く医師になりたいと思っていたわけではありませんが、人や脳への興味はありました。
入学後、医学の授業が面白くて次第に興味を持つようになりました。基礎医学が臨床、つまり治療にどう結びつくのかを楽しんで勉強していたのを覚えています。

医学部を卒業して医師になりましたが、当初は起業するつもりは全くなく、そういう選択肢も持っていませんでした。ただ、医学部に入って医師としてやっていこうと思ったとき、どこかの分野でトップになりたいという想いがありました。

神経内科を専門にしていましたので、この分野での研究でトップになることや、その道のエキスパートになることを目指していました。そのため、新しいことを追求しながら論文を書き、人と違うことをしなければならないと考え、精力的に臨床と研究に取り組んでいました。

当時私がテーマにしていたのは「臨床研究」というもので、患者さんのデータを基に、どの治療が最適かを仮説立てて解析するものでした。臨床医だからこそ持つ疑問を研究で解決するというものです。
具体的な治療方法にまで踏み込むのは難しかったものの、例えば「この背景の患者さんはこれくらい症状が続くが、こうだったらこれくらい短くなる」といったことを分析していました。

臨床を通じて感じたのは、神経内科の疾患には治らないものが多いということでした。治らないものを治せるようにすることが責務だと感じ、2020年から研究の道に進むことにしました。

ただ、その頃より臨床や研究でトップになる素質が自分には少し薄いと感じるようになりました。周囲が非常に優秀で、私以上に仕事を楽しんでいる人が多かったからです。

その中で、臨床の課題も感じるようになり、友人医師の中で起業を選択する人たちの存在に気づき、起業について考え始めました。

起業のこと。

医者の起業で最も身近なのはクリニックの開業ですが、私は強い魅力を感じませんでした。開業すると忙しくなり、自分の時間が取れなくなることや、患者さんを効率よく捌くことが重視するポイントになりがちだからです。

ビジネスモデルを考える前に、解決すべき医療業界の課題を考えました。自分の経験から、医師としての知識をどうアップデートするかが一番の課題だと感じました。論文数含めて取得すべき知識が増える一方、各個人の時間は増えないため、知識取得が追いつかないのです

例えば、医学の教科書は10年前と比べて分厚くなっていますし、脳神経内科領域の論文は40年で100倍になっています。新たな研究、新たな発見によって新しい事実やケーススタディが増えるため、必要な知識量も増えているからです。論文掲載サイトやSNSでも多くの情報が発信されていますが、英語での情報や膨大な量の情報を取捨選択し、優先順位を付ける必要があります。

情報量の増加に対応するのは大変ですが、各医師には得意分野があります。得意分野の知識をシェアし、他の医師からの情報をインプットする仕組みを作れないかと考えました。

医師には無料で使ってもらい、製薬企業や医療機器企業からの広告料でマネタイズするビジネスモデルを考えました。課題解決を目指しつつ、ビジネスとしても成立するモデルにしています。

実際に今のサービスを立ち上げてみて、診療科ごとに特化しないとこの仕組みは機能しないと感じています。例えば、私は脳神経内科医なので、脳神経内科の知識アップデートしか求めていません。他の知識は院内の他の医師に聞いたり、オンラインで質問したりします。

まずは脳神経内科に特化し、アウトプットとインプットが有機的に繋がる仕組みを作りたいと考えています。それによって、効率的に知識を得ることができ、医療の質が向上することを目指しています。

まず取り組んでいるのがパーキンソン病の治療の最適化です。日本には約30万人の患者がいます。60歳以上の100人に1人の割合です。治療薬は症状を緩和するもので、病気を治すものではありません。最近の研究によって、あるタイミングで手術を含めたデバイス治療をすることが治療に重要だとわかってきました。では、いつ手術すべきなのか?そういった治療の最適化を進めたいと考えています。

現在の課題は、組織作りで、少人数で始めた会社をスケールさせるために組織をしっかり作っていく必要があると考えています。

20代にすべきこと。

20代にしておくべきことは、いろんなものに手を広げておいた方がいいんじゃないかなと思います。海外も留学とまではいかず海外旅行でも、いいかなというふうに思いますし、バイトとかでもいいかなと。部活も含めて、何かいろいろやっておくと、何かやっぱり自分の視野が広がるだろうなというふうに感じています。

ちょっとかなり陳腐な答えですけど、特に医学部生にとってはそれが大事かなと思います。まもなく先生と呼ばれるようになって色んな人とも接するんで、色んな世界を知っておくに越したことはないですね。


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