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【京大吹零会 起業家インタビュー】Planet Savers株式会社 池上 京さん  法学部 2018年卒

「京大吹零会」とは、京大出身(在学中も含む)の起業家を集めた、起業家コミュニティです。京大には変人が集まると言われるように、京大出身の経営者も変わった人が多いので、周りに理解されず、孤独になってしまうこともあります。そんな「吹き零れ」たちが集まり、経験をシェアして切磋琢磨する、唯一無二の会です。メンバー同士の交流を促すため、また、これから起業したい方に吹零会メンバーを知ってもらうため、隔週で「京大吹零会 起業家インタビュー」をオンラインで放送中。このイベントで収録した起業家たちの講演内容を書き起こし記事としてお送りします



【要チェック!】

公開インタビューのスケジュールや、記事を見て「起業したい!」と思った方のための「京大・起業相談デスク」についてはコチラをご覧下さい。

学生時代のこと。

日本の学校の雰囲気が肌に合わず、高校2年のときにアメリカに留学をし、そのまま現地の大学に進もうと思いましたが、当時は奨学金制度も今のようには充実していなかったため、いったん日本に帰って京都大学法学部に入学しました。大学では、途上国支援や紛争問題への興味から、模擬国連の活動に打ち込みました。将来は外交官になろうと思っていたんです。
外務省の採用担当の方から、「外交官になりたいなら、国際問題以外にも幅広い知見を持っていた方が良い」というアドバイスを受け、大学院進学後に震災復興ボランティア、外資系企業のインターン、シェアハウスの運営など、様々な分野に活動の幅を広げました。
理系の友人が増えたりビジネスを学んだりと、国際政治一色だった生活が一気に広がり有意義な2年間を送ることができました。その後はJICA(国際協力機構)に入りました。

起業のこと。

イラクやエジプト、ヨルダンで働き、JICAで様々な現場を知ることができたのは良かったのですが、手続きなどで時間がかかり、動きが遅いことも気になりました。それとは比較にならないスピードで発展するスタートアップやテクノロジーのパワーを目の当たりにして考え方が変わりました。エジプトでは、Uberがたった3年くらいで誰もが使う交通手段になっていました。他の国でもスタートアップが次々と社会課題を解決していたんです。
以前は途上国や社会を変革するには政府や国際機関などが主導するのが良いと考えていましたが、技術の進歩により民間企業でもできることが大きく広がっていることを知り、起業やテクノロジーのレバレッジという手段に興味を持ち始め、ケンブリッジ大学のMBAに留学することにしました。留学中にビジネスコンペに応募する機会があり、JICAの時から問題意識を持っていた課題の1つが教育だったので、教育のジャンルでアイデアを練り始めました。

これはJICA時代にヨルダンで撮った写真なんですけど、彼らはヨルダンの難民です。今のイスラエルパレスチナ問題でまさに影響を受け、ヨルダンからパレスチナに難民として移住した人たちです。そんなヨルダンでキャリア教育支援に取り組んだんですが、大学生ってすでに価値観が出来上がってしまっていて、中高生くらいの年代から考え方を変えていかないといけないと思うようになりました。
アメリカにいた時の経験も踏まえて、自分が考える理想の課題解決型教育(今でいう探究学習)をオンラインで届けるというテーマで起業してみようと決めました。リーダーシップを教えるようなプログラムですね。

コロナ禍でオンライン教育が流行ってきていたので、海外向け含め追い風になるのではないかと考えたんです。起業直後は順調で、2年で500名を超える学生が有償で参加したのですが、アフターコロナの反動でオンライン教育自体が下火になり、最終的には対面のキャンプをするという事業になりました。これはこれで一定の手応えがあったのですが、リアルの事業だとどうしても影響を与えられる人数が限られてしまい、社会に対するインパクトが限定的になります。JICAにいた時から、社会起業的に小さく展開するというよりは、大きくスケールする事業がやりたかったんです。ですので軌道修正を考え始めました。
自分なりに色々と調べていく中で、「ディープテック(最先端の研究成果に基づく起業)」と「気候変動」をキーワードにインパクトのある事業が作れないかと考えました。まずはこの分野の知識を徹底的に学び、そのあと脱炭素の研究分野で著名な先生方にコンタクトを取っていきました。何度も議論を重ね最終的にPlanet Savers共同創業者となった伊與木さんと組むことを決めました。

伊與木さんは東京大学でゼオライトという材料の合成と応用を主な研究分野としていました。これを吸着剤として、大気中のCO2を回収するシステムを製造・販売する事業です。地下に貯留すると1,000年ぐらいCO2を隔離できるので、気候変動を緩和することができます。例えば飛行機は電化が難しいので、航空会社などが大量のCO2を排出します。大手IT企業でも運営するAIのデータセンターなどでは大量のCO2を排出するので、私たちのシステムを用いて作ったプラント施設がこういった企業に対してCO2をオフセットするソリューションを提供してカーボンクレジットを作っていくのがこの事業の肝です。あとは回収したCO2を農業においてハウス栽培で利用するとかコンクリート製造で利用する方法、あるいは水素と混ぜて合成燃料を作る道筋とかも有り得るかなと考えていますが、そういった周辺事業はパートナー企業と一緒に進めていければ良いと考えています。

気候変動へのインパクトを起こしていきたいんです。ちょうど2023年に娘が生まれたんですけど、自分の子供とか孫とかが地球には住めなくなって宇宙に行かないといけなくなるってすごく悲しいじゃないですか。近くの環境でも日本で住めないところが減ってくとか、自分たちが享受したものが変わっちゃうのはすごい悲しいなっていうのがあって。そんな悲しい未来にならないように、自分にできることがあるならそうしたいなって本気で考えているんです。

20代ですべきこと。

3つあります。
1つ目は、全力で取り組めるものを何でもいいから見つけられるといいんじゃないでしょうか。本当に、何でもいいと思うんです。僕の場合は学生時代に立ち上げた団体で「国際開発ユースフォーラム」っていうのがあります。外務省や大手企業を巻き込んで資金を提供してもらいながら、世界中から50人ほどの学生を日本に招待し、途上国の開発についてディスカッションするという企画です。 半年でゼロから立ち上げたので、取り組んでいるときは本当にハードでしたけど、その経験があったことでどこでどんな仕事してもそれ以上きついことってなかなか無いので、何かしらコミットして全力でやるっていう経験はとても良いものじゃないかと思います。

2つ目は、遊ぶなら全力で遊ぶみたいなのがすごい大事だなと思ってます。

この写真を見ていただいたらわかりますが、国際交流のイベントでAKBを踊ってる時のものです。テニスサークルとかって勉強していないみたいに揶揄されがちですけど、学生のときに思いっきり遊んで誰とでも仲良くなったりできることって大事なのかなと思います。

3つ目は、海外に行くことですね。

ケンブリッジMBAの留学の時の写真です。僕は30歳で行ったんです。30歳で行くのもすごく良かったんですけど、若いうちにいろんな国籍とかダイバーシティの人たちと話して、体感として世界を知るっていう経験はきっと自分の幅を広げてくれるし将来のネットワークとしても活きてくるはずです。バックパック旅行でもいいし、留学するとかいろいろ海外で挑戦してほしいなって思います。日本人はみんな英語力にコンプレックスがある人が多いし、僕もそうだったんですけど、英語力が全てなのかっていうと、そうでもないこともわかります。ケンブリッジに行った時も、ディスカッションに全くついていけなかったりしたこともありましたが、しっかり議事録をまとめるとか、期限通りにタスクをこなすとか、当たり前のことができない人もけっこう多いんです。地味なリサーチとかも挙手して積極的にやってたりすると、割とパワーバランスが変わっていく経験をしました。口だけのイギリス人はどんどんチームの中での影響力が落ちていってですね、何故か私の影響力が上がっていって、最後はチーム内だけじゃなくて同級生全体で池上は良いやつ仕事もちゃんとやる優秀な同級生という評判もできて、とても良い留学生活になりました。今も、同級生が日本に旅行する時は大体私に最初の連絡をくれます(笑)

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