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【京大吹零会 起業家インタビュー】株式会社TechBowl 小澤 政生さん 経済学部経営学科 2010年卒

「京大吹零会」とは、京大出身(在学中も含む)の起業家を集めた、起業家コミュニティです。京大には変人が集まると言われるように、京大出身の経営者も変わった人が多いので、周りに理解されず、孤独になってしまうこともあります。そんな「吹き零れ」たちが集まり、経験をシェアして切磋琢磨する、唯一無二の会です。メンバー同士の交流を促すため、また、これから起業したい方に吹零会メンバーを知ってもらうため、隔週で「京大吹零会 起業家インタビュー」をオンラインで放送中。このイベントで収録した起業家たちの講演内容を書き起こし記事としてお送りします



【要チェック!】

公開インタビューのスケジュールや、記事を見て「起業したい!」と思った方のための「京大・起業相談デスク」についてはコチラをご覧下さい

学生時代のこと。

私が京都大学に入学した理由には、兄の影響が大きかったかもしれません。男三人兄弟の真ん中で、兄が灘中、灘高、東大現役合格で進学したため、周囲からも「次は君が灘中だね」とよく言われました。その環境で自然とその道を目指すようになりましたが、京都が好きだったので、自由な校風の同志社中学も受験しました。しかし、結果として同志社中学には落ちてしまい、清風南海中学に進むことになりました。

清風南海中学では多くの優秀な学生に囲まれ、私も勉強に打ち込みました。京都が好きだったこともあり、再び挑戦しようという気持ちが強くなり、中学受験のリベンジとして京都大学を目指しました。しかし、現役では緊張のあまり、選択する問題を間違え、不合格となり、一浪して再挑戦することにしました。浪人時代は予備校で朝から晩まで勉強に励み、勉強の合間には百円ショップでアルバイトをして過ごしました。周囲のプレッシャーもありましたが、何とか経済学部に合格することができました。漠然と学歴コンプレックスのようなものも感じていました。大学生活では、テニスサークルに参加し、アルバイトもしていました。テニスサークルでは、新入生歓迎会の準備などサークル運営に多くの時間を費やし、組織の運営や人材の確保といったビジネスの基本を学びました。特に新歓活動では、優秀な新入生を勧誘するために様々な戦略を駆使し、朝早くから女子大の近くで場所取りをしてビラを配る日々は大変でしたが、後のビジネスに役立つスキルとなりました。とはいえ、パラダイス経済の恩恵を存分に受けて楽しく過ごしていました。

大学では企業分析のゼミに参加し、曳野先生の授業は非常に興味深く、90分があっという間に過ぎるほどでした。このゼミでの経験が、私のビジネスに対する興味をさらに深めました。企業分析やSWOT分析を通じて、企業の強みや弱みを理解し、それをどのように活かしてビジネスを展開していくかを学びました。この経験が後のキャリアに大いに役立ちました。

卒業後はサイバーエージェントに入社しましたが、元々はテレビ局の報道に行きたかったんです。中学生の頃、父がフジテレビの番組で取材を受けたことがあり、その経験がテレビ局への興味を引きました。しかし、リーマンショックの影響で採用人数が減り、最終面接で落ちてしまいました。その後、サークルの先輩の勧めでサイバーエージェントの説明会に参加し、最終的に入社しました。説明会にラケットを背負って行くくらいの軽いノリでしたが、人生何があるかわかりませんね。
サイバーエージェントでは、最初はメディアの営業を担当しました。その後家庭の事情もあり、わずか入社半年で一度退社しました。退社後は実家の運送会社を手伝いながら、夕方は家庭教師として自分で仕事を開拓しました。他にも居酒屋のアルバイトやコールセンターの派遣等も掛け持ちし、フリーターのような生活を送りながらも将来の自分の進むべき道を模索していました。ぼーっと考えながら稼いだお金をスロットやパチンコで増やそうとしたりもしました。
24歳の頃、居酒屋でバイトをしていたとき、女子高生のバイト先輩にかき氷の作り方で怒られたことがきっかけで再び社会人としてのキャリアを考えるようになりました。シロップをいれる順が逆だ、と(笑)。その後、証券会社に1年間勤め、国債や投資信託、がん保険の営業をしていました。サイバーエージェントでの経験とは180度異なる世界に興味を持ちました。証券会社では法人営業を担当し、様々な企業との取引を通じてビジネスの基本を学びました。しかし、もっと自分に合った仕事を探したいという気持ちが強くなり、再びサイバーエージェントに戻ることを決意しました。
サイバーエージェントに戻ってからは、採用の仕事に従事し、特にエンジニアの採用を担当しました。エンジニアの採用は非常に競争が激しく、他社との違いをアピールする必要がありました。京都で町屋を借りて、風鈴の音がなるところで正座をして開発するイベントを企画したり、ハッカソンを通じて、多くの優秀なエンジニアを採用することができました。

起業のこと

サイバーエージェントでの7年半の経験を経て、31歳の時に起業を決意しました。起業のきっかけは、サイバーエージェントでの経験を通じてエンジニアの育成と採用に課題を感じたことです。「エンジニアになりたい人は増えているが、企業が求めるエンジニアは全く増えていない」という課題です。日本の企業が求めるエンジニアの数に対し、供給が追いついていない現状を改善したいと考えました。
つまり、「採る・採らない」の採用の仕事じゃなくって、「育てて、増やす」ことに取り組み、いろんな企業にそれを再分配していくような仕組みを作る方が、社会的な意義があるんじゃないかなっていうふうに思ったんです。

起業後は、エンジニアの教育と採用を支援するTechTrain(テックトレイン)を立ち上げました。この事業では、エンジニアのスキルを向上させるためのプログラムを提供し、育成したエンジニアを企業に紹介しています。また、企業向けのリスキリングやDX人材の研修も行い、企業の技術力向上を支援しています。事業の柱として、エンジニアの教育、企業への紹介、リスキリング研修の3つを展開しています。
サービス開始から5年で13歳から60代まで8,000名以上の方にご利用いただいています。
社名のTechBowlの由来は、プロのエンジニアと次世代のエンジニアがサラダボウルのように集い、混ざり、交わることで面白いサービスや新しい技術が生まれるような技術のサラダボウル、つまりTechBowlを創る、という意味からきています。イケてるエンジニアを育てて増やし、エンジニアリングで日本の国力を上げます。

これまでの経験を通じて感じたのは、柔軟性と適応力の重要性です。ビジネスの世界は常に変化しており、状況に応じて迅速に対応する能力が求められます。また、失敗を恐れずに挑戦することも重要です。失敗から学び、それを次の成功に繋げることが成長の鍵です。
起業初期の最大の課題は「資金不足でした。1人で起業し、資金を確保するために採用コンサル業務を開始しました。幸いにも早期にVCから出資いただけたのですが、今後何に、いくらかかるのか、手触り感が全くなく、ただ不安と期待しかなかった時期です。自力でいくら稼げるのかを試したい時期でもあったので、コンサル業務で数千万円を稼ぎ、それを元手に人を雇いプロトタイプを作成するという形で事業を進めました。しかし、この過程で多くの困難に直面しました。特にエンジニアチームの形成が大きな壁となり、強力なエンジニアを数人集めたものの、チームとしての機能がうまくいかず、なぜかログインができないサービスやユーザー数が不明なサービスが出来上がるなど、初期のプロジェクトは失敗続きでした。
次に、キャッシュフローの管理に関する困難です。サイバーエージェントで働いていたとはいえ、ずっと採用畑だったため、事業計画や資金計画についてはどことなく他人事というか、とにかく無知でした。自分の会社のキャッシュフローがどのように動くのか、どの程度の資金が必要なのかを理解していませんでした。これにより、常に資金不足の不安に苛まれる日々が続きました。夜中に夢の中で口座の残高がゼロになる夢を見て、飛び起きることもありました。今でもたまにありますけどね。(笑)
これらの困難や失敗を通じて多くの学びを得ました。それでも、準備に時間をかけすぎるのではなく、まずやってみて、修正しながら前進することも大切だと感じています。

20代のうちにすべきこと

起業だけでなく、社会に出たら借り物競争のようなものです。自分ができなくても、他人の力を借りて結果を出すことが求められます。だから学生時代から、困ったときは勉強のできる友達にノートを貸してもらったり、仕事のできる友達に食事をおごって助けてもらうなどの経験を重ねておいたほうが良いですね。
もう一つ大事なことがあります。形はどうでもいい。成功しても失敗してもいいから、自分が心からやりたいと思うものをその場で5%でいいからとりあえずやってみるってのは大事じゃないでしょうか。今って検索とかAIとかで調べるのは結構楽だし、先生とか大人に聞けば模範解答っぽいものが出てきますよね。それで満足しちゃったら何も始まらない。実際にやってみたらそこから学べるものが必ずある。

「自分で決める、自分で動く」ことが大切です。
会社を経営していて、調子が良いときはもっと行けると思い、悪いときは何とか改善しようと頑張りますが、停滞して「何も動けない」というのが最も怖いことです。「そのままでいいんじゃないか」という思考が会社を蝕むので、自分でどんどん決めなければなりません。何を問われても「何でもいいよ」が口癖になっている人は、おそらく起業家には向いていないと思います。
何かを問われたとき、賢い人はベストアンサーを考えようとしますが、それは大学まででしょう。そうじゃなくてあなたはどう思いますか?何が好きなんですか?どうしたいんですか?っていうところを、突き抜けないと起業家の世界ではやっていけない気がしています。
便利な世の中だからこそ、自分で思いつくような大体のサービスはすでにあるんです。たとえ既に存在するサービスでも、自分なりの工夫や挑戦、狂ったように続けて磨くことで差別化されていくと思います。後発であっても、他社を出し抜くために徹底的に研究し、良いものは取り入れて改善する。そういった柔軟な思考と行動力が重要です。起業はその連続だと思います。もっと事業を大きく、組織を強くしていきたいと思います。

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