machia.3【MATIere-2】
最初、マチも俺もお互いのことが認識できなかった。
俺の友人が彼女とマチとで最近も会っていたようで、友人の方から声をかけた。
「まーちゃん!」
「おー!久しぶり……でもないか!」
マチは友人に声をかけた。
「今日はかえちゃんとじゃないの?」
かえちゃんとは、友人の彼女。別れたりよりを戻したりを繰り返している、マチと初めて会った時にいたあの子。
「かえは仕事。多分。」
「で、そちらの方は……?」
マチは俺の方をチラと見た。
「まーちゃん、初めましてじゃないよ。俺が高3の夏にかえとまーちゃんと遊んだ時に一緒にいたじゃん。」
「海藤頼です。お久しぶりです。」
「小林茉知です。お久しぶりです。」
初対面のインパクトある不思議な表情しか記憶になかったが、今回のマチは満面の笑顔で自己紹介をした。
その日から友人と彼女とマチと俺とで会うことが増えたが、それ以上にマチと二人きりで遊ぶことが増えた。
以前聞いた話だと、彼氏がいるときは他の男と連絡を取らないようにしていたみたいだが、数年経ってそのルールは変わってしまったようだった。
彼氏がいるけれど、俺とも遊んでくれる。
その「遊び」が健全なうちはまだ良かったが、段々と「遊び」の意味が変わっていった。
もう何度目か分からない食事の帰り、どちらからともなくキスをした。
それが始まりだった。
俺と体の関係はあるけれど、相変わらず彼氏は次から次へと移り変わっていった。
「マチはなんでそんなにすぐ彼氏ができるの?俺なんて大学卒業して以来彼女いないんだけど……」
俺とマチが体の関係を持つようになって数年、何人目かの彼氏と別れ、何人目かの彼氏ができたときに訊いてみた。
「それ、ベッドの上でするのに相応しい質問?」
逆にマチに返されてしまった。
「多分相応しくないし、彼氏がいるならやめた方がいいとは思うけどね……」
「でもやめないんでしょ?いいよ別に。お兄さんはそれがいいんでしょ?」
マチは少し拗ねたように言った。
「やめようか?」
俺はマチが「やめないで」と言うのを確信して意地悪を言った。
「……そのうち。」
少し悩んで、意外な回答が来た。
それだけ今の人に対して本気という事だろうか。
「それで、さっきの。すぐ彼氏ができるのは何故かって質問なんだけど。」「こんな私のことを好きになってくれる人なんてこの先現れないと思うと、断れないんだよね。
好きじゃないのに付き合うのは相手に悪いからやめろって言う人もいるけど、そのうち好きになることもあるから、可能性は潰したくない。
実際、元彼はみんなちゃんと好きになったよ。程度の差はあるけどね。」
そう言い残してマチはバスルームへ消えた。
どうやら今日はもう帰りたい気分らしい。
俺はマチの彼氏ではないので、マチと朝を迎えることはない。
「それだけは彼氏の特権。それくらいの境界線がないと本当にダメだと思うから」
と、いつだったか言っていた。
俺には理解出来ないが、マチの中では整合性の取れている言い訳なのだろう。