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口にだされなかった言葉をくみとるために、必要なのはつねに想像力

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口にだされなかった言葉をくみとるために、必要なのはつねに想像力

記事一覧

「アーヤと魔女」世界の悲しみをのぞくまで

私の子供時代、確かに宝物は 春はシロツメクサ、秋はホオズキで、 古くなったお鍋で水をくんで ご馳走になる食材はいつだって生えていて お料理だって魔法だって 庭でなん…

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3年前

「太陽の王子ホルスの大冒険」やさしいこと、正しくあること

ヒルダという少女の、 悲しくも複雑な心理描写を アニメーションによって完成させたことへの 功績の大きさは計り知れない。 行動と心、さらには表面と深層の心が 食いちが…

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3年前
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「レッドタートル」ジブリが本当にやりたかったこと

この映画についての感想は もうずっと書きたかったことでした。 公開された2016年9月、 映画館で1回観て、びっくりして、 ぼんやりと日々を過ごして そのままもう1回映画館…

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3年前
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「かぐや姫の物語」救いのない物語

高畑勲監督の作品は、 とにかく観るのに頭を使う 主人公にしろ、周りの人間にしろ、 物語だからといってドラマチックに、 簡単にその人を描こうとしないからだ 時に我が…

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3年前
3

「もののけ姫」本当の憎しみからみえるもの

アシタカは腕の呪いが エボシの放った礫のせいだとわかり 怒りに震え 剣を掴んだ右腕を押さえ込んだ おさめた左腕が、本当の憎しみを 教えてくれた気がする 「ここのも…

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3年前
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「風の谷のナウシカ」矛盾を抱えて

風の谷のナウシカを 大人になってみてみると ナウシカの凛々しさが どこかもろく冷たく見えました だれにも心を開いていないような、 だれも信じていないような。 「でも…

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3年前
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「カードキャプターさくら」恋と愛を分けてしまうには、少し悲しい

「空に向かう木々のように あなたを見つめている」 という歌詞が流れると、 いつも不意に立ち止まってしまっていた そんな感情を、 わからないけれどどこかで知っている、…

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3年前
6

「少女革命ウテナ」恋よりずっと大切なもの

このアニメを観てからもうずっと考えている。 どうしてアンシーはあの時泣いたのか。 どうして暁生は王子様になりきれない自分に泣いているのか。 どうしてウテナは誰から…

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3年前
3

「美少女戦士 セーラームーン」なぜ死ななければならなかったか

どうしてセーラー戦士が 死ななければならなかったのか、 どうしてセーラー戦士であったことを 忘れなければならなかったのか 今ならずっとよくわかる 変身シーンは1話ご…

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4年前
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「アーヤと魔女」世界の悲しみをのぞくまで

「アーヤと魔女」世界の悲しみをのぞくまで

私の子供時代、確かに宝物は
春はシロツメクサ、秋はホオズキで、

古くなったお鍋で水をくんで
ご馳走になる食材はいつだって生えていて
お料理だって魔法だって
庭でなんだってできたし
できると思っていたことがあった 

アーヤの思うように、
庭が私の世界だった

でも、摘んだシロツメクサが枯れて
茶色くしおれるのが悲しくて、
それを伝えると
じゃあ摘むのをやめなさいと言われた

私は遊ぶことをやめよ

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「太陽の王子ホルスの大冒険」やさしいこと、正しくあること

「太陽の王子ホルスの大冒険」やさしいこと、正しくあること

ヒルダという少女の、
悲しくも複雑な心理描写を
アニメーションによって完成させたことへの
功績の大きさは計り知れない。

行動と心、さらには表面と深層の心が
食いちがって揺れ動くヒルダの難解さを
表情やカメラワークによって
それは見事に描かれていた。

人間の感情の醜さに耐えられず、
拒絶し嘲笑する「悪魔」のヒルダを
私たちはどこまで理解できるのか、

製作側も観ている側も 
試しているようだった

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「レッドタートル」ジブリが本当にやりたかったこと

「レッドタートル」ジブリが本当にやりたかったこと

この映画についての感想は
もうずっと書きたかったことでした。
公開された2016年9月、
映画館で1回観て、びっくりして、
ぼんやりと日々を過ごして
そのままもう1回映画館に観に行くなんて
この作品が初めてでした。

これか、これこそがやりたかったことなんだと
ジブリアニメのゴールが見えたのと同時に、
そっと何かが終わろうとしていることも
感じました。

この映画を最後に
高畑勲監督が亡くなったこ

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「かぐや姫の物語」救いのない物語

「かぐや姫の物語」救いのない物語

高畑勲監督の作品は、
とにかく観るのに頭を使う

主人公にしろ、周りの人間にしろ、
物語だからといってドラマチックに、
簡単にその人を描こうとしないからだ

時に我が儘を言い、反発し、牙をむき、
私たちは動揺する

簡単に感情移入をさせてはくれない
そもそも、感情移入は目的ではないのだ
あくまで論理的に、忠実に
まなざしや言葉から、その人を思いやり
初めて理解できるようになる

つまり、受動的に観

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「もののけ姫」本当の憎しみからみえるもの

「もののけ姫」本当の憎しみからみえるもの

アシタカは腕の呪いが
エボシの放った礫のせいだとわかり
怒りに震え

剣を掴んだ右腕を押さえ込んだ

おさめた左腕が、本当の憎しみを
教えてくれた気がする

「ここのものすべてを殺すまで鎮まらぬか」

憎しみは誰かを憎めばおさまるのか、
また誰かを許せばおさまるのか、
でも、本当にそんな簡単なものなんだろうか

暴れて泣いて
タタリ神をみて、私とおんなじだ
と思った

ナウシカのときとも同じだった

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「風の谷のナウシカ」矛盾を抱えて

「風の谷のナウシカ」矛盾を抱えて

風の谷のナウシカを
大人になってみてみると
ナウシカの凛々しさが
どこかもろく冷たく見えました
だれにも心を開いていないような、
だれも信じていないような。

「でもみんなには内緒。
怖がるといけないから」

1人の少女として、
あのこはいつ心の底から笑うのかしら
そんなことをずっと考えていました。

腐海に不時着して
王蟲と交流したときのシーン、
気を失って幼いナウシカが登場するシーン。 

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「カードキャプターさくら」恋と愛を分けてしまうには、少し悲しい

「カードキャプターさくら」恋と愛を分けてしまうには、少し悲しい

「空に向かう木々のように
あなたを見つめている」
という歌詞が流れると、
いつも不意に立ち止まってしまっていた

そんな感情を、
わからないけれどどこかで知っている、と
思った
忘れかけていたことなのかもしれない、
色々と見ないようにしていたこと、
諦めてきたことを

幸福なのは、
実は自分はひとりだということを
感じないですむことだけれど、
それでも私は臆病な子どもだったから
実はひとりだと気が

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「少女革命ウテナ」恋よりずっと大切なもの

「少女革命ウテナ」恋よりずっと大切なもの

このアニメを観てからもうずっと考えている。

どうしてアンシーはあの時泣いたのか。
どうして暁生は王子様になりきれない自分に泣いているのか。
どうしてウテナは誰からも
忘れられてしまうのだろう。

なんてかなしいアニメなんだろう。

それでも私の心の中に、
ウテナとアンシーの
「10年後もこうして一緒にお茶を飲もう」
という約束が消えない。

私はだんだん気がついていく。
そうか、これは
王子様に

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「美少女戦士 セーラームーン」なぜ死ななければならなかったか

「美少女戦士 セーラームーン」なぜ死ななければならなかったか

どうしてセーラー戦士が
死ななければならなかったのか、
どうしてセーラー戦士であったことを
忘れなければならなかったのか
今ならずっとよくわかる

変身シーンは1話ごとに絶対1回はあって、
でも何万回みても飽きることはなかった

どんなに辛い戦いでも
バックミュージックのコーラスの
高く澄んだ声と、
揺れるスカートや光る宝石にうっとりして

私は、女の子が強くなる瞬間に
こんなにも愛をこめて描かれ

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