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クラフトマンが作るシンプルなシルバーリング

下準備

まずは、ローラを使って板の厚さを調整。

地金屋さんで厚みを指定して購入してもいいが、0.1mm単位で変えることが多いので自分で調整している。

リングのデフォルトのラインナップでは、リング幅によって厚さを変えている。
指から外した時、単体でのバランスが良い組み合わせだ。
もちろん、号サイズや指触りによって若干変えることもある。

なお、イベント出展時にはリングサイズだけではなく、通年を通してストレスなく使えるサイズを案内提案している。
リング注文で気になる点があれば相談して欲しい。(宣伝営業)

厚さを調節したら、シルバー制作で切っては切り離せない”火ムラ”を削っていく。
火ムラについては別記事にまとめる予定。

火ムラを処理すると、白乳色系になる。

これでシルバー制作の下準備が完了。
中々に面倒だが、手を抜くと途端に仕上がりのクオリティが下がってしまう。
手は抜けない。


形成

屋号の刻印は大事

自信と責任を持って自分が作ったと証明する為のものだから。
だからこそ手を抜いたり、中途半端な仕事は出来ないと思っている。
そんな自身への戒めも兼ねて刻印をぶっ叩いている。
少しカッコつけて語ってみた。

リングの幅と長さを罫書いて、切り出していく。
板の厚みと号サイズからリングの長さを計算して、罫書き。
切り出していく。
特に切り口部分は大事。

念入りに垂直かつ、面を出しておく

ゴムハン等の当たりが柔らかいハンマーで丸くする。

あまり硬いハンマーだと跡がついたり、加工硬化で変な癖が付いたりする。
そのため、予め焼鈍しを下準備でしてある。

切り口を合わせて擦り合わせ

画像のように光に透かして見て、隙間がないか確認。
隙間があれば、切り口を再度、ヤスリで整える。

この隙間は曲者で、後々に悪さをしてくる。

ロウ付けする際、隙間がロウ材で埋まるため硬度の差からそこだけ凹んでしまう。
また、ロウ目と言って、灰色の線が残る。しかも削っても消えない。
時間が経つと材質の差からそこだけ黒っぽいシミのような線が出てくる。
等々。

色々とごまかす処理する方法はあるにはあるが、こういった影響が出るのはお客さんの手に渡ってしばらく経ってからだ。
実に厄介だ。

さて、ロウ付けだ。

ロウ付けを大雑把に解説すると、金属の接着剤のようなもので、これを熱で溶かして溶接するのだ。
熱をかけるため、火ムラの心配が付いて回る。
そのため、できるだけ素早く熱をかけロウ付けをしなければならない。

これだけは経験と技術が物を言う世界で、まだまだ修行の身である。

その後、酸洗い溶液にぶち込むのだが、熱したシルバーが発する"ジュボッ"という音が好みだ。


形成

ヤスリを使って削り出す。
リング幅はここで合わせている。

リング内側は見えないから手を抜くのではなく、見えないからこそ、こだわりを持って形成している。

それは、指通りを滑らかにしつつ、フィット感を合わせ持たせる事。
指の動きにストレスをもたらせない事。
見た目にもキレイである事。

そのためリング内側は、幅によってそろぞれ形状が微妙に違う。
幅が細くてもフィット感はあるし、幅が太くても指は動かしやすい。

そんな形状。


磨き

リューターを使ってヤスリの跡を消していく。
大体3種類くらい番目を変えながら形も整えていく。
この時点で形が変わるなんて事はないが、深めの傷があった場合はヤスリ掛けから改めて修正していく。

その後さらに研磨剤で磨いていく。
ここまで来るとほぼ鏡面状態になっている。

傷や面の調子を見ながらバフ掛け。
バフの摩擦熱で素手では持てないくらいになるので、ホルダー必須。
たまに肌に落としたりして、騒ぐことがある。

研磨剤で磨いたあとは洗浄して、高硬度のスチールで表面を撫で擦っていく。

これは表面の見えないくらい細かな凹凸を潰し、さらに金属表面を硬くするため。
こうすると、指輪は変形しづらくなり、キズも付きづらくなる。
また、シルバー特有の黒くなる硫化が起きにくくもなる。

要はキレイなまま保てる。

一番細かい研磨剤で仕上げ磨き。
表面を整える感じ。

洗浄後は肌に吸い付く様な質感が生まれる。

仕上げ用にワックス付きの研磨剤で磨いて、完成

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