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石読み日記 無理を押した先は

そのお客様は、常連さんからのご紹介でいらっしゃった。

お客様はデトックス足湯をする前に、持ってきたパワーストーンブレスレットをテーブルの上に置いた。一目でオーダーメイドだと判った。

とりあえず、私は足湯の支度を始めた。お湯を溜めている間、あることが思い浮かんだ。

あのブレスレット、無理して作ったんだろうな…

無理したのはお客様ではない。ブレスレットを作った人だ。クライアントの要望に合わせて無理して作ったのが読み取れた。他店で作ったブレスレットであっても、ある程度のことは読み取れる。石の種類や組み合わせは関係ない。ブレスレットを作った時に、石が取り込んだエネルギーを読んでいる。

ブレスレットを組んだ人は判っていたはずだ。クライアントの依頼内容が、叶う見込みのない願いであること、むしろ、叶わない方が善いはずだと。
それでも無理して石を選んで組み合わせたんだろう、仕事だから。

石の質は良い。極上品ではないけれど、オーダーブレスレットに相応しい質だと思う。だからこそ、エネルギーが現れてしまってるんだろう。
「それは無理な願い」
だと。


石達の言葉を伝える前に、お客様にはデトックスと足つぼ施術を受けてもらった。私は足と身体にも問いかける。時によるが、石と同じように足や身体も答えてくれる。

そのお客様は持病があった。病気によってはメンタル面にも特有の性質があらわれる。考え方や行動パターン、嗜好が変わる。異性の好みも変わる。
そのお客様も典型的な変化がでていた。
本来、明晰であったはずの思考回路は混濁し、単純で短絡的な回路になってしまっていた。その状態では、どの店へ行っても適切なオーダーブレスレットを作るのは無理だろう。1本作っても満足せず、また次を、さらにもう1本と増えていくだけだ。

テーブルの上に置かれたブレスレットは、無理を強いられて疲れているように観えた。ある意味、持ち主と似た状態かもしれない…


そんな状態であることをご本人に説明した。
元々は、非常に回転が速く明晰な頭脳の持ち主である。体を調えてグラウディングしている状態なので、私のややスピリチャル的な説明も難なく理解してもらえた。
発症時から時間を追って、今までの出来事を思い返してもらった。

「そうか、そうだったんだ」

何度も何度も、自分で自分に相槌を打っている。



疲れた様子のブレスレットは切った。
そして、一部の石を交換して組み直し、新たな1本を作った。
もう無理はしてない、人も石も。

組み直したブレスレットは持ち主が驚くほど輝いていた。
それは石が喜んでいる証拠。

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新しい目標は、他店で購入されたブレスレットのメンテナンスもできる店になること。商売的には難しいことですが、それがちょっとでも「山を守る」ことになれば…