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【はかせエッセー】 「1985年のビートたけしの弟子志願」①(21/1/3)

 エッセー「たけしビート」(2021年1月3日)

  令和3年1月3日──。

 今日は来客ありで
 古い書類箱を開けた。
 そのなかから発見されたのは、
 ボクが弟子志願の時、
    ビートたけしに宛てた手紙だった。

(当時から自分が
 相手に送る手紙のコピーを
  わざわざとる習慣があるところが、
 ボクが紙への偏執狂であることの証明だ)

 そこには、こう書かれている。

「長谷川和彦よりも、森田芳光よりも、
 江川卓よりも、カート・ヴォネガットよりも
 沢木耕太郎よりも、大友克洋よりも
 筒井康隆よりも柄本明よりも
 島田紳助よりも、笑福亭鶴瓶よりも
 近田春夫よりも尾崎豊よりも
 ウディ・アレンよりも
 落合博満よりも泉谷しげるよりも
 つかこういへいよりも吉田拓郎よりも
 桑田佳祐よりも竹中労よりも
 誰よりも「ビートたけし」が好きだ。

 おこがましいのもご迷惑になるのも
 重々承知です。
 ドラムもたたけないし、
 料理もろくに出来ない、
 スポーツもとりたてて得意でもないし
 野球も上手ではないでしょう。
 足手まといだとも自覚します。
 「ビートたけし」と
 同じ時代を生きたことだけでも
 幸福に思うべきだと
 言い聞かしています。
 それでも、自分が
 「ありえない不幸、
 『ビートたけし』と巡り会えぬまま
  一生を終える不幸を嘆きます。

 3年間考え続けました。
 今まで行動出来なかっただけでも
 自分に実力がないものだと
 思っています。
 芸人向きの性格だと思えないし、
 テレビに出たいわけでもありません。
 どんな形でも良いから、
 殿のそばでおつかえしたい。
 「ビートたけし」を身近に見てみたい。
 夢は捨てきれません。

 笑えない駄文で申し訳ありません。
 忙しい殿に、
 時間のロスだけを与えているようで
 自分でも心苦しく思います。

 とにかく殿のそばにお使えさせて下さい。

 追伸、
 同封したわけのわからない小説もどきは
 自分の単なるマスターベーションです。
 ご面倒ならそのまま捨てて下さって結構です。

              85,9・4  おのまさかり

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 こんな手紙を受け取ったら、
 あまりにも不憫で、
 どこの馬の骨かもしれぬ
 正体不明のチビの家に
 電話をかけてやろうかと思うだろう。

 この手紙を渡した、翌日、電話が鳴り、
 直立不動でビートたけしからの
 生電話を受ける23歳の俺よ。

 58歳の今、
 この殿への直訴文を
 予期せぬまま見つけて、
 読み返しながら嗚咽で声が震えた。

 このはなし、弟子志願②へ つづきます。


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