【TET教師訓練】:Revisiting Gordon’s Teacher Effectiveness Training: An Intervention Study on Teachers’Social and Emotional Learning
(普通のストレス対処やジェネラルウェルビーイングの介入に顕著な効果があるなら教師のメンタルヘルスは問題になっていないので、特異的なアプローチを読むことにする)
概要
問題と目的
生徒が自律的に活動して自己効力感を感じることが重要だといわれている
教育者は、生徒の既存の能力をわずかに超えた課題を設定し、生徒がスキル習得のさまざまな段階を通過するにつれてサポートのレベルを調整し、生徒が自分で課題を習得するスキルが高まるにつれて、徐々に援助を中止する必要がある
自己決定理論
Self determinant theory (SDT; Ryan & Deci, 2000) では、自主性、創造性、内発的動機づけを促進することが重要だとされる
この観点から見ると、教師の主な仕事の 1 つは、生徒の自主性をサポートすることである
近年ではソーシャルインタラクションスキルが生徒の内発的動機付けを上げるとうたわれ (Leory et al., 2007) 内発的動機付けにおけるソーシャルインタラクションの重要性が指摘されている
例えばGordon (2003) は、教師がアクティブリスニングスキルを身に津得ることで生徒の自己決定・自己コントロール・自己評価を促せるとしている (理論だが)
しかし、そもそも教師が生徒に自律・自己決定を促せるよう教育・トレーニングする方法はあまり知られていない
本研究では、教師のソーシャルインタラクションスキルをTETにより研修する (Gordon Training International, 2012)
社会的・感情的学習 Social and emotional learning (SEL)
SLEでは、自己知覚、セルフマネージメント、社会的知覚、関係性のマネージメント、自己決定の責任が構成要素となる
これらは教師の社会・感情的能力の中核要素である
SLEは自己決定理論に基づいており、Perez-Escoda et al (2012) は教師と生徒の感情能力の向上を通じて社会的ウェルビーイングが向上したと報告している
また、教師のコントロールと同時に交友関係を感じた生徒は、そうでない生徒よりも、より大きな成果、より強い取り組み、およびより積極的な教科関連の態度を示した (Brekelmans et al., 2011)
(ここで確認しておきたいのは、生徒の出席率が低いと教師の抑うつが高まることから、教師自身の生徒へのかかわりを訓練することで生徒とのかかわりが改善され教師のメンタルヘルスを保てるのではないかと仮定している点です)
教師の効力感トレーニング Teacher Effectiveness Training (TET)
TET では、教師がリスニングスキルを使用すると、教師の社会的認識と共感や理解が生徒とのやりとりの中で具体的かつ現実的になるとされる
Active Listeningは、教師が生徒が言ったことへの理解を反映する特別なリスニングスキルである
これにより、教師はメッセージを理解したかどうかを確認し、必要に応じて生徒に教師を修正する機会を与えられる
さらに、リスニングスキルは、教師が生徒と敬意を持って友好的な関係を促進し、誰もが自分も含まれていると感じられる責任ある意思決定を強化するのに役立つ (とされているということ)
また、教師と生徒の関係、教師の自己認識と自己管理は、TET で教えられる他のツールである肯定的な I メッセージや直面化の I メッセージを使用するときに必要になる
生徒の言動に言及したのち教師自らが感情を言葉で伝える際には、教師が自らの感情、要求、信念や思考など自らの特徴や状況に気づく必要がある
社会的および感情的に有能な教師が回避する、批判的な態度や嘲笑の使用などのメッセージは、障害 Road Blocks と呼ばれる
それらは実りある相互作用を損ない、教師が問題を抱えている場合には効果のない対立的なメッセージになり、生徒が問題を抱えている場合には効果のないカウンセリング的メッセージになる可能性がある
(つまり批判的態度や嘲笑などストレートではないものは生徒とのやり取りを妨げるということ)
さらに、TETには、教師が他人を支配する方法を減らし、対立解決や積極的な傾聴など、勝ち負けのない方法に置き換えることによって、自主性と自己責任をサポートするという考えが含まれる
これらのスキルは、教師が生徒の問題や感情の責任を負うのではなく、生徒が自分自身の問題の解決策を見つけられるように支援することを目的としている
自律性をサポートするTETスキルは、責任ある意思決定と人間関係のスキルを促進する
ゴードンによれば、積極的に傾聴することで生徒の内的な葛藤の解決が促進され、生徒の自主性と自己責任が高まる
TETによる社会・感情学習の測定
必要な言動が生じた瞬間をとらえることは難しいため、単純に技術を使用できるようになることを目的とせず、教育全般への態度が変わることを目的とする
効果測定はKirkpatrick (2006) の多側面からの効果評価に従う
本研究の目標は、教師が教室内だけでなく、同僚、学校管理者、保護者と遭遇するような困難な状況におけるソーシャルインタラクションを明らかにすることとした
本研究では、第一にTETへの教師の反応を調べた。第二に、介入中の知識及び知識の応用 (スキル) の変化を調査した。第三に、介入によるソーシャルインタラクションとウェルビーイングの変化を調査した。
方法
TETは4日間のトレーニングコース
小学校のクラス担当教師 (n=20)、中学校の教科担当教師 (n=23) が介入群
中学校の教科担当教師 (n=26) が対照群 (waiting-list)
測定内容
①トレーニングコースのフィードバック質問 (10項目):
②知識のテスト Knowledge test (8項目):
③Challenging Interaction のマネージメント (7つの場面):
生徒とのよくある挑戦的な場面について対応法の記述を求める
たとえば、生徒の不正行為に直面する場面で、教師は生徒の態度について説明するように求められる
他には、クラスに感謝すること、生徒の両親と仲良くすること、二人の生徒の間の問題を解決すること、心配している生徒の話を聞くこと、同僚の悪い行動に立ち向かうこと、制限を設定することなどが挙げられる
それぞれの記述について、リスニング、Iメッセージ、直面化のIメッセージ、自律を促すメッセージ、総合的な望ましさの評定について0-2で評定する
詳細はTalvio et al (2012) 参照
④学校のウェルビーイング (Konu, 2005)
社会的関係、両親との関係、自己実現、ウェルビーイングの四領域に関する5件法のリッカートスケールに回答
データ分析
各スケールの内的整合性は、クロンバックα.66-.89により担保されている
ANOVAで各群のプレポスト、ポストの群間比較を実施
結果
受講の感想
リッカートスケールのレンジ1-5に対し、小学校のクラス担任はMean=4.20(sd=0.42)、中学校の教科担任はMean=4.06 (0.33)
参加者はポジティブな感想を持った
両群の感想得点に差はなかった
知識とSELスキルの変化
介入群は知識も技術も向上
知識とスキルに相関あり (r=.67,p<.01)
介入後に、社会的関係性と自己実現 (r=.32,p<.05)、ウェルビーイング (r=.33,p<.01) の間に関連が見いだされた
DCIスキルの応用
基本的にはすべての項目で応用スキル (場面実践) ができるようになってる
ネガティブなかかわり方 (Road Blocks) は減少あるいは変化がなかった
ウェルビーイングの変化
介入群の中学教科担任教師は、親との関係性が悪化
介入群の小学校教室担当教師は、自己実現が向上した
考察
介入群のうち、小学校教室担任教師の自己実現が向上したのは理解しやすい
中学教科担任教師の親との関係が悪化したのは、生徒の親への葛藤が意識化されたためかもしれないと考察されている
文献
Gordon, T. (2003). Teacher effectiveness training. New York: Three rivers press.
Gordon Training International (2012). T.E.T. teacher effectiveness program. Retrieved from http://www.gordontraining.com/teachertrainingprogram.html
Kirkpatrick, D. L., & Kirkpatrick, J. D. (2006). Evaluating training programs: The four levels
(Third ed.). San Francisco, CA: Berrett-Koehler Publishers, Inc.Leroy, N., Bressoux, P., Sarrazin, P., & Trouilloud, D. (2007). Impact of teachers' implicit theories and perceived pressures on the establishment of an autonomy supportive climate. European Journal of Psychology of Education 22(4), 529-545.
Pérez-Escoda, N., Filella, G., Alegre, A., & Bisquerra, R. (2012). Developing the emotional competence of teachers and pupils in school contexts.
Ryan, R. M., & Deci, E. L. (2000). Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being. American psychologist, 55(1), 68.
Talvio, M., Lonka, K., Komulainen, E., Kuusela, M., & Lintunen, T. (2012). The development of the Dealing with Challenging Interaction (DCI) method to evaluate teachers’ social interaction skills. Procedia-Social and Behavioral Sciences, 69, 621-630.
Talvio, M., Lonka, K., Komulainen, E., Kuusela, M., & Lintunen, T. (2013). Revisiting gordon´ s teacher effectiveness traininig: an intervention study on teachers´ social and emotional learning.
所感
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目標が教員のメンタルヘルスであることを忘れない
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