見出し画像

【教師の抑うつ】Teachers' wellbeing and depressive symptoms, and associated riskfactors: A large cross sectional study in English secondary schools

概要

教師は高レベルのストレスと一般的な精神疾患を抱えていることが示されているが、学校環境のどの要因が教師の精神的健康状態の悪化に関連しているか調査した研究はほとんどない。そこで、8 校の教師 (n=555) を対象に自記式アンケート調査を行った。教師の健康レベル (Warwick Edinburgh Mental Wellbeing Scale-WEMWBS) とうつ病の症状 (患者の健康状態: PHQ-9) と、学校関連の要因を測定した。測定変数に対し、階層的重回帰分析を行った。
その結果、教師の幸福度スコアは労働人口サンプルで報告されたものよりも低く、19.4%に中等度から重度のうつ病症状の兆候があった。
ストレスや落ち込み、仕事への不満を抱えているときに同僚に相談できないと感じること、そして高いプレゼンティーイズムがウェルビーイングの低さ (beta 3.39-4.65)、抑うつ症状と関連した両方の健康状態の悪さと強く関連していた(ORs 2..44-3.31)。
また、仕事でのストレスや最近の学校統治の変化がウェルビーイングを抑制し(beta 2.17-4.22)、病気欠席と学生の出席率の低さはうつ病の症状と関連していた (ORs=1.93-2.14)。
ただし、クロスセクショナルデータのため因果関係は不明、学校数が少ないため学校レベル変数の検出力が小さい、自記式質問紙を用いているという限界があった。

(やはりウェルビーイングと精神疾患で関連要因が少し異なってくる)

問題と目的

  • 教師生徒関係の悪化は児童の精神疾患や三年後の学校からの除外と関連がある (Lang et al., 2013)

  • 指示的な生徒教師関係は生徒の将来の抑うつの低下と貧困と学校へのエンゲージメントの低下の関連を緩和させる (Hughes & Kwok, 2007; Kidger et al., 2012)

  • すなわち教師のメンタルヘルスは児童生徒のメンタルヘルスに影響を及ぼすといえる

目的

イギリス北西部の中学校教師を対象に、ウェルビーイングの程度とうつ病発症率を明らかにする
ウェルビーイングとうつ病に関連する個人・学校レベルの要因を明らかにする

方法

8の学校の教師が対象

個人測定

Wellbeing (WEMWBS)
Depressive symptoms (PHQ9)
Stress and satisfaction at work
Presenteesm (WPAI)(Reilly et al., 1993)

組織測定

  • 無料の学校給食の対象となる生徒の割合

  • 16 歳の生徒の出席率

  • 試験における生徒の到達度

  • 教育基準に関する当局による最新の評価

  • その学校が(地方自治体ではなく中央政府によって直接資金提供されている)かどうか

  • およびこの変更は最近のものか

分析

  • 階層線形モデル、階層的ロジスティック回帰モデルにより、ウェルビーイングと中程度・重度の抑うつ症状と、以下の個人変数及び学校変数との関連を調べた

  • 個人変数:性別、役割、仕事のストレス、仕事の満足度、先月の欠勤の有無、過去一年間に同僚から援助を得られた程度、過去一年間にストレスを感じた時に同僚に話したいと感じた程度、一週間の平均労働時間が60時間以上、プレゼンティーイズムが60%以上

  • 学校レベルの変数:無料の学校給食対象か、数学と英語の成績が国の平均より上か、学生の出席率が国の平均より上か、その学校が(地方自治体ではなく中央政府によって直接資金提供されている)かどうか、アカデミーのステータス、1年以内にアカデミーステータスに実際にまたは計画的に変換される

結果

univariate multilevel linear/logistic regression

Multilevel Multivariate linear regression for WEMWBS

以下の要因が教師のウェルビーイングを阻害する

  • 仕事に満足していない、

  • 職場がストレスフル、

  • 過去一か月の病欠、

  • 同僚に困ったとき話せなかった、

  • プレゼンティーイズム60%以上、

  • もうすぐAcademyに変更する

Multilevel Multivariate logistic regression for depressive symptom

以下の要因が教師の抑うつを促進する

  • 女性

  • 仕事に満足していない

  • 過去一か月間の病欠

  • 困ったときに同僚に相談できない

  • プレゼンティーイズムが60%以上

  • 学生の出席率が平均以下

級内相関係数

ウェルビーイング0.04 (95%CI 0-0.10)
PHQ9 0.03(95%CI 0-0.09)

考察

教師のウェルビーイング、抑うつ症状の重度

本論文では、教師のウェルビーイングはUKの平均より低く、PHQ-9のカットオフを超えるものはナショナルサーベイの2倍の割合だった
この点はほかの論文との差があるためメタ分析を探すしかない

同僚のサポート

  • 本論文では、同僚にサポートを得られない場合に、ウェルビーイングの低下に加えてよくうつ症状が高まることが示された

  • 先行研究によれば、質的研究ではあるが、教師は上司や同僚に悩みを打開けると弱いとか能力がないとみなされることを恐れて一人でコーピングしたり上司を頼るのを望まないことが知られている (Kidger et al., 2009)

  • また、教師を対象とする研究でも同僚のサポートに加えて、職場の信頼、互いを尊重し開放的である文化が仕事満足度に影響を及ぼすことが知られている (Klassen & Anderson, 2009; Moore Johnson et al., 2012)

級内相関係数

先行研究では生徒の健康が学校レベルで関連することが知られていたが、本研究によりウェルビーイングや抑うつ症状も学校単位で特徴があることが示された

文献

  1. Hughes, J., & Kwok, O. M. (2007). Influence of student-teacher and parent-teacher relationships on lower achieving readers' engagement and achievement in the primary grades. Journal of educational psychology, 99(1), 39.

  2. Kidger, J., Araya, R., Donovan, J., & Gunnell, D. (2012). The effect of the school environment on the emotional health of adolescents: a systematic review. Pediatrics, 129(5), 925-949.

  3. Kidger, J., Brockman, R., Tilling, K., Campbell, R., Ford, T., Araya, R., ... & Gunnell, D. (2016). Teachers' wellbeing and depressive symptoms, and associated risk factors: A large cross sectional study in English secondary schools. Journal of affective disorders, 192, 76-82.

  4. Kidger, J., Gunnell, D., Biddle, L., Campbell, R., Donovan, J., 2009. Part and parcel of teaching? Secondary school staff's views on supporting student emotional health and wellbeing. Br. Educ. Res. J. 36 (6), 919–935.

  5. Klassen, R.M., Anderson, C.J.K., 2009. How times change: secondary teachers' job satisfaction and dissatisfaction in 1962 and 2007. Br. Educ. Res. J. 35 (5), 745–759.

  6. Lang, I.A., Marlow, R., Goodman, R., Meltzer, H., Ford, T., 2013. Influence of problematic child–teacher relationships on future psychiatric disorder: population survey with 3-year follow up. Br. J. Psychiatry. 202, 336–341.

  7. Moore Johnson, S., Kraft, M.A., Papay, J.P., 2012. How context matters in high-need schools: the effects of teachers' working conditions on their professional satisfaction and their students' achievement. Teach. Coll. Rec. 114, 10.

所感

面白い関連があるように見えるが
連続変数から二値変数に変換しているのは、ウェルビーイングに対して説明変数に一次関数関係がなかったためだと考えられる (属性などに合わせるためかもしれないが)

また、明確な理論がない調査だとこのようにいろんな変数を組み込んで調べることになってしまうことも分かった

いずれにしても
サポートが重要な役割を及ぼすこと、ウェルビーイングと抑うつは要因が異なること、学校の生徒が休みがちだと教師の抑うつが強まることは面白い結果だった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?