Flexible working conditions and their effects on employee health andwellbeing
概要
問題と目的
Karasek (1979) のモデルに基づき、職場では仕事の要求度とコントロール度及びソーシャルサポートの相互作用によって心血管疾患、精神的健康、病欠などに影響を及ぼすことが明らかになっている
しかし、報酬など心理社会的な要因以外の影響が指摘され、努力ー報酬不均衡モデルが提唱された
その後、ステークホルダーたちは、介入を健康と健康の不均衡を対象とするようになる
介入は、個人レベル、micro-organisational level、macro organisational levelに分類される
介入により次の方法でタスクは再構成される①仕事の拡充、②集団的な対処と意思決定(チームワーク)、③自律的な生産グループ (Karasek, 1992)
すなわち、決定権があり、相互サポートがあるということになる
(言い換えれば、ミクロな組織レベルの介入であったとしても、参加型の職場環境改善を通じて、②③を達成することになる
対象とする介入内容
雇用契約の流動性 (自由性)、空間的な自由性、時間的な自由性に分類する
2003年からフレキシブルワーキングコンディションを要求する権利が6歳以下の児童を持つまたは養育する責任をもつ全UKの従業員に認められた(!!)
この権利は近年に16歳まで拡張された(!!!)
発展途上国はその経済性や同労方法ゆえに非正規雇用や柔軟な労働形態を雇用主が主体的にとることが多い
上記の背景を踏まえてWHOはワークライフバランスの問題に着手するための政策開発の必要性を言及している
したがって、柔軟な労働方法が職業生活に及ぼす影響を明らかにする必要がある
介入の作用機序
柔軟な労働形態は、雇用主からの求めと、従業員からの求めではその目的が異なるため、どちらの要求に基づく労働形態なのかが重要となる
従業員主導の柔軟な労働形態がストレスや病欠およびワークライフバランスに正の影響を及ぼすことが報告されている
組織が主体的に行う在宅ワークは主に女性に育児の責任を負わせて仕事と私生活の境界をなくすとする見解もある
特にこのしわ寄せは女性に影響を与えて使い捨てられる危険性が高いとする指摘がある
(この点が読者の皆さんもお分かりのように単年度契約の非正規雇用において、雇用主ドリブンの場合は副業が可能ですよとか能力評価によってはほぼ正職員として扱われる可能性がありますと言及しながら確実に5年を迎える前に雇止めする結果を生んでいる)
(雇止めについては継続雇用が期待される場合の一方的で不合理なものを認めないとしているが、合理的か否かの説明や理由づけはくらでもできる
したがって、従業員ドリブンのフレキシブルな労働 (すなわち、自らが単年度契約のほうが働きやすいと望んだ場合のような例)のほうが心身への正の効果がもたらされるだろうとしている
(これは非常に重要な観点で、ダイバーシティーの名目で恐ろしいほどの雇止めが生じているし、その構造に気づかない場合がすくなくない
(あたりまえだが基本的には正職員として募集をかけない事業や企業はいつでも損切りできる手法を採用している
(なお、訴えようとするものもいると思うが、基本的には単年度契約が一年継続して賃金が支払われるだけでそれ以上の見返りはない。当然、翌年度はさまざまな理由をつけて雇止めになる
レビューの必要性
柔軟な労働形態の統合された効果が不明
効果があるグループの属性が不明確なため一様な適応は公平性を欠く可能性がある
レビューの目的
柔軟な労働形態の効果
効果があるグループ属性と介入内容の明確化
方法
対象とする研究
RCT, ITS, pre-post
対照群のない研究および6か月以内の効果測定のないものは除外
対象者
16-64歳の労働者
介入の種類
シフトのセルフスケジュール、フレックスタイム、残業、段階的・部分的な退職、自発的ではないパートタイム・固定時間制の労働が調査対象
労働者・使用者のいずれの提案か
効果測定
プライマリアウトアムは上の表を参照
セカンダリアウトカムは上表参照
病欠、健康サービスの利用、生活行動の変化、QOL、ワークライフバランス、ソーシャルウェルビーイングなど
データ統合
研究数が少ないうえに効果指標も一致していないため、ナラティブレビューとした
結果
10の対象研究のうち、6つは時間的な柔軟性に関する研究で、4つは自主的なシフトスケジューリング、1つはフレックスタイム、一つは残業であった
残りの4つは、段階的・部分的な退職、非自発的なパートタイム、固定時間制の契約であった
テレワークやジョブシェアはなかった
10の研究のうち7つは労働者からの提案や横暴であり、2つは雇用主や組織の意思によるものであった
1つは不明であった (残業に関する論文)
実施場所は、ヨーロッパが主で、United States (n=3)、Australia (n=1) であった
バイアスリスク
コンタミがバイアスとして設定されている
介入の効果
フレックスタイム制は効果なし
セルフスケジュールは心理社会的効果に加えて、血圧、心拍数の減少も認められた
残業
残業の導入による健康や仕事への顕著な影響はみられないが
主体的に残業しているもののほうが、会社からの要請で残業を導入された従業員よりも疲労の回復や心の苦痛が少ない傾向が指摘されている
段階的・部分的な退職
結果は分かれているが
退職の方法を自ら選択できるほうが感情的に前向きで、健康だが、長期的な効果も認められる
正社員と有期雇用契約
心理社会的アウトカム、健康のアウトカムに差はない
セカンダリアウトカム
ローテーションによるシフトにすると、ソーシャルサポートやコミュニティ感覚が向上する
段階的な退職・部分的退職によって、自主的に決めると一年後のフォローアップで人生の満足度が高く、家庭生活の満足度も高い
compressed working weekによる介入は効果なし
セルフスケジューリングにしても身体的な健康に効果なし
文献
Cochrane Database of Systematic Reviews, 2, CD008009.
Joyce, K., Pabayo, R., Critchley, J. A., Bambra, C. (2010). Flexible working conditions and their e%ects on employee health and wellbeing.
Karasek, R. (1992). Stress prevention through work reorganisation: a summary of 19 case studies. Conditions of Work Digest, 11, 23-42.
感想
シフト・退職のタイミングや形態を自ら決められるともっともストレス低減効果がある
それぐらい柔軟にすると逆に人が集まってきて自由に組めるようになるのか
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