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冬暁にnote開設

先月下旬から都内では一気に冷え込み日中8℃前後の外気温になる日も多く、それに加えての強風だから文字通り身を切るような寒さに参っている人も多いことと思う。

特に東京湾に面したいわゆる湾岸エリアや隅田川・荒川・石神井川・善福寺川などの川縁界隈では、水面の上を撫でた風が吹き通るためより一層寒さが際立って感じられる。

東京に移り住んで26年になるが2月中旬に曇天から舞い来る雪を見上げた記憶がたくさんあり、今年もそろそろそういう時節だからいよいよ今晩あたり本格的な降雪になるかもしれないぞと身構える日々が続いていた。

すると3日の朝まだき、ほんの小降り程度の雨だったがそれがついに雪のかけらを生じた。

環状八号線沿いを荻窪駅に向かって歩いていた私の前方に広がる大型トラックが轟々と走り抜けるだけの殺伐とした空間は、何か神聖なものでトッピングされたかのように特別な景色へと一変した。

その景色の中のひとつとして、この時空間のただの構成物に過ぎない自分すらもが、おそらく都内では今年の初雪が降りたのだろうこの時この場所に居合わせたことで何でもない存在だと思っていた自分が私という独特な存在として輪郭付けられて少しばかりにせよマシな人間になったような、そんな魔法めいた錯覚を楽しみながら、それまでよりは歩幅を広げて手を振って、前へ前へと進み荻窪駅前に着いたころには高台から見渡す線路の向こう側は白んできていた。

〈冬はつとめて〉とはよく言ったもので、私は冬の早朝、具体的には空の遠く向こう側が少し明るくなってくる6時台の時間帯がとても好きだ。空気がすっきりと澄んでいて、昨日までの悩み事や蓄積している面倒事がリセットされたような感覚をおぼえるからだ。

もちろん実際には何も片付きはしない。
それでも、そう思うことができる不思議なひととき、それが冬の朝だ。

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