見出し画像

ビリヤード、サトウキビ、氷室京介

夜中にひとり資料整理や書き物をしていると、だいたいは1~2時間くらいでちょっと休みたくなりその際”心の琴線に触れる”ような音楽を聴きたくなるものである。

それは生まれ故郷の山形県酒田市で過ごしていた高校生の頃にCD・MDウォークマンのイヤホンから流れて来て、うまく説明するのは難しいのだけれど「毎日なんだかつまらないな」「ダルいな」などと思って過ごしている自分に自転車のペダルを強く・速く漕ぐための力を与えてくれたものだったり、一度くらい背広でも着てみるかと軽い気持ちでサラリーマンになってはみたもののノルマに追われて「どうにもこれは、マズい世界に足を踏み入れてしまった」などと思いながら外回り営業中に公園のベンチで口ずさんだ懐かしい楽曲だったりするわけだが、県人寮に居た大学時代に同年代の連中と飲んで騒いで過ごしていた駒込の夜、誰かの部屋で聴いた楽曲のことを最近は特に懐かしく思い出す。

斎藤さんの部屋ではミッシェル、清野君の部屋ではブランキーやナンバーガール、彩人君の部屋では彼独特のチョイスで様々なジャンルの最新の楽曲が夜ごと爆音で流れていて、私はそういうものを無節操に全身で浴びながら酔っぱらって寝て、気付いたらもう9時過ぎで1限の講義にはどうやっても間に合わないからじゃあパチンコスロットでも打ちに行くか、みたいな毎日を過ごしていた。

そんな楽曲のひとつに、R.E.M.の『Imitation Of Life』がある。

すっかり気に入ってしまったので何か機会があればいろんな場面で聴いていたのだが、たとえば駒込からバイクですぐに移動できる距離の王子駅前のビリヤード場でもジュークBOXに100円玉を投げ込んで、意味不明ながらも音の響きが妙に格好良い歌詞と都市の片隅に気だるく漂うようなメロディーラインをBGMにして玉撞きに興じていたものである。

そこに登場するワードはハリウッドだったりシナモンだったりするわけだが、特に私の心を捉えたのはサトウキビ(Sugarcane)だった。

何かひとつ引っ掛かると、それが契機となって、普段はただ移ろい過ぎていくだけの様々な物事の中から、その時々の心情に応じたものが浮かび上がるように五感を刺激してやおら”形を成す”ことがある。ひとつの原因物が樹木の枝葉のようにして連想を広げていく。

そういった意味では、心の中にいかにしてこの”切っ掛け”を持つかということに、精神が健康で豊かにいられるかどうかが懸かっているのだともいえる。

たとえばImitation Of Lifeのサトウキビは私に、BOØWYの『JUSTY』をも連想させる。氷室京介はここに、退屈過ぎる黄昏時はボナンザグラム片手にちょっと気取って微笑むのだと書いているからだ。

ボナンザグラムとはラム酒の銘柄で、ボナンザ(Bonanza)とはスペイン語で思いがけない幸運・偶然掘り当てた鉱脈・繁栄のことを意味している。この銘柄はもう販売していない。

若い頃の人間関係と記憶のいくつかは既に消え去ってしまい、二度と戻ることはない。あれから私はいくつかのことで上手くいき、多くのことで失敗した。

ちょうどひと区切りついたところで、心が揺り動かされるような楽曲を聴くべく、動画サイトへ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?