【全文無料】掌編小説『春の迷想』柳田知雪
三寒四温を繰り返し、少しずつ春は芽吹く。花が咲き、一気に色づき始める世界は活気に満ちているけれど、それは同時に別れの季節でもある。
それは、俺たちも例外ではない。
「そろそろ、だな」
「なんだよ、寂しいのか?」
「う、うるせぇ!」
揶揄う俺に、彼はむっと唇を尖らせた。分かりやすい反応に、堪えきれない笑みが零れてしまう。こんな顔を見るのもしばらくは……いや、もしかすると最後かもしれない。
「俺たちの関係は春までだって分かってただろ? 湿っぽいのは、お互いらしくない」
「そ