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本を読むきっかけをくれた一冊の本

今回はタイトルにもあるように、私が本を読むきっかけについて書こうと思う。
つい最近、高校で3年間同じクラスだった友人と通話をすることになった。
彼とは放課後や休日に頻繁に遊ぶ仲だったのだが、進学を機にぱったりと会う事は無くなった。当然通話をする事もだ。
最初こそ寂しく感じていたが、日が経つにつれ彼の事は次第に頭から離れて行き、私は新しい生活を楽しんでいた。
でもそれはきっと彼も同じだったのだろう。
最後の学生生活を存分に楽しんだ後、お互い就職し、今度は社会人としてそれぞれ新しい生活をスタートさせた。だが同時にそれが彼との距離をさらに疎遠にさせていった。
それなのにどういう経緯か彼から突然電話が掛かってきたのだ。
懐かしい彼の声に思わず笑みが溢れ、色褪せていった彼との記憶に再び色が戻る。
会話の内容はお互いの近況報告とたわいもない雑談だった。
今何処で何をしているのか、恋人は出来たのか、お互いの趣味についてとか。
そんな会話の中で彼が唐突に、「何故本を読むようになったのか」と私に聞いてきた。
不意に投げられたその問いに私は即答する事が出来なかった。
正直自分でもいつから本を読むようになったのか、何故本を読むようになったのか、その真意を思い出すのに思いの外時間がかかってしまったからだ。
結局その場は「忘れた」と適当に流す事にし、会話は再び雑談へと戻る。
彼が私に対して、「本を読むようになった理由」こんな素朴な疑問を抱くのは無理もない。
何故なら、学生時代の私はとにかくじっとしているのが苦手で、常に何かしていないと落ち着かないような人間だったからだ。
そんな私が急に本を読み始めたら、誰だって疑問を抱く。
通話後、一人でにさっき友人から投げられた問いの答えを探していた。
頭を巡らせ、記憶を辿って行くと、その答えは案外直ぐに見つかった。
呆気なく見つかったその答え、今となっては「運命」などと美化することが出来るが、当時はそんな風に思ってもいなかったものだ。


社会人となった私は運動不足を解消するべく、24時間のフィットネスジムに入会する事にした。
その姿を見てか、進学先で出来た友人も入会する事になり、その手続きに同行して欲しいとのことで着いていくことになった。
一度聞いたことのある手続きの話を途中まで一緒になって聞いていたが、やはりじっとしていられなくなり私はジムの外に出た。そして隣接している谷島屋という本屋で適当に時間を潰すことにした。
本屋に来るのはいつぶりだろうかなんて考えてながら、本を眺めていた。
別に眺めているからって、本を買って読む気なんてさらさら無い。気になって手に取った本を見ては、再び棚に戻す。
それを何度か繰り返していると、ある一冊の本に目が留まる。

       「木曜日にはココアを

自分でもどうしてか解らない、ただ妙にこの本に惹かれるのだ。
すかさずその本を手に取り、パッケージを見てから裏に書いてあるあらすじを読んでみることにした。
どうやらこの本はそれぞれ違う話が集まって構成されているそうで、どの話も非常に興味を引くものだった。
そして不思議とマイナスな感情を抱くことなく、すんなりと購入することが出来たのだ。それよか友人には申し訳ないが、早く家に帰って読みたいとさえ思えた程だ。
こんな感情を本に抱くことなんて今まで一度も無く、だからこそこの感情をどう処理していいか解らず、少し戸惑っていた。
友人との会話の際中も、帰りの車中も常に購入した本の事が頭から離れない。早く読みたい、自分でもよく解らない程に。
家に帰り、早々に風呂を済ませ、食いつくように購入した本を読んだ。
何年振りかに本を読む、触れる、その感覚は新鮮でありながら、どこか懐かしさを感じ、思いの外しっくりきたのだ。
ブランクを感じさせない程にスラスラと内容が入ってくる、文字を追う毎に本の世界に引き摺り込まれていく。
不思議な感覚だ。
これはきっと作者の技術なんだろう。それともしかしたら自分とこの本との相性も良いのかもしれない。
時間を忘れ、純粋に本の世界を楽しんだ。
そして読み終わった頃にはいうに日付を超えていた。
読み終わって気付かされる、本の楽しさ。
今までどうして本を読んでこなかったのだろう、そして次はどんな本を読もうか、本に対しての向き合い方が180度変わっていたのだ。

私が本を読んでいる事に対して、友人達からは「意外」とか「似合わない」だと散々言われたが、私はそうは思わない。
何故なら誰しも本当は本を読む事が好きだと思っているから。
単にそれに気づいていないだけで、その気づきを与えてくれるのは本なのだ。
その本は人それぞれ違く、何処かでその人が来るのをじっと待っている。
恋愛において「運命」という言葉がよく使われるが、それは本にも言える事だろう。
スポーツと遊びにしかお金と時間を掛けてこなかった私が、今では日々の生活の中で意識的に本を読む時間を作っているからだ。
それも読みたいからであって、決して義務的なものではない。
とは言っても日によっては、思うように内容が入って来ない日も当然ある。そんな時は無理して読み進めることはしない。
本を読むようになってから、想像力と感性が豊かになったのを感じる。これは本から得た副産物なのかもしれない。別にそれが目的で本を読んでいる訳では無いから、ことさらにそれが嬉しい。

以上が私が本を読み始めた理由だ。
字を読むのは疲れるとか、単につまらないって思う人はいるだろう。
でもそれは本当にその人に合った本と巡り合っていないだけで、きっと何処かで貴方のことをずっと待っている。
その運命の本と出会うことが出来たら、きっと見えてくる世界もまた異なってくるだろう。





さて、次はどんな本を読もうかな


最後まで読んで下さり、ありがとうございました。



































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