森を守る虎。

小さな森に棲む虎がいました。

虎は、黄金色に輝いていて、

小さな森の、真ん中にある大きな木の下の

影でいつもゆったり寝ていました。

虎は、何百年も同じ森の同じ場所にいました。

動物なので、命に限りがあります。

もちろん虎も何回も命を終わるのですが、

しばらくすると、また生まれ出て、

そして始まるのです。

以前の生の中で虎にはたくさんの仲間が

おりました。

生まれ出て来るたびに仲間が減り、

今は、黄金の虎は、一匹限りでした。

虎は、森の災難を何回も受けました。

山火事、大雨、雷、大雪。

その度に家族や、友人をなくしましたが、

全ての記憶が虎には残っているのでした。

虎は、初めて生まれてきたときから、

黄金の身体をしていたので、森の他の動物は、恐れて近寄ってきません。

仲間がいる頃は、身を寄せ合い眠ることも

ありましたが、今は1匹です。

側にいるのは、大きなこの木。

一緒に生きて、どんな災害からも

免れた木。

ある日、そんな虎に話かける、

水色のたぬきとオレンジ色の猫が、

現れました。

水色のたぬきは、少しとぼけた愛嬌のあるたぬきでした。

虎が黄金色に輝いているので、憧れていて、

「虎さんみたいに私も黄金色になりたいな」

と虎に寄り添いました。

オレンジ色の猫は、少々暴れん坊で、

大きな木に駆け登って、鳥に飛びついたり、

木の幹をガリガリかいて、爪をとぎにくるのでした。

オレンジの猫は、自分より大きいけど、

なんとなく、似ている姿の虎に寄り添いました。

3匹は、特に何かを話すわけではないけど、

大きな木の下で過ごすことが日課でした。

どれくらい、そんな穏やかな日々が過ぎたでしょうか。

また、森に災難がやってきました。

地震です。そして、洪水。

大地が揺れて、動物たちは大慌て。

流されたり、何かの下敷きになったり、

そして、森からどんどん逃げていきました。

大きな木も揺れています。

虎は、夜には、どこかで眠っている

水色のたぬきとオレンジの猫が気になって

いました。

虎は、この木の下から動いたことがありませんでした。

しかし、いてもたってもいられなくなり、

立ち上がりました。

そして、森の中を黄金色で光らせながら、

2匹を探しました。

森は、荒れ果てておりました。

虎の目から、黄金色の涙が流れました。

逃げられたろうか。

すると、向こうの方から、水色のたぬきと

オレンジ色の猫が、虎の黄金色に導かれるように歩いてきました。

良かった、良かった。無事で良かった。

3匹は、大きな木の下まで戻り、

寄り添いながら、眠りました。

それからは、ずっと3匹は寄り添いながら

生きました。

黄金色に恐れていた動物たちも、

黄金色に導かれ、少しずつ戻ってきました。

みんなも虎に寄り添うようになりました。

虎は、とても暖かく、居心地がいいことに

みんなが気づきました。

それに、虎は何回も生まれ出ているので、

頼りになり、動物の相談相手になりました。

たくさん、たくさん聞いてやり安心を与えてやりました。

森の草花もまた、新しい芽を出し、

風に揺れています。

花の香りに虫たちが、楽しそうに

遊びだしました。

川もおだやかに流れ、魚が時々ピチヤと跳ねます。

虎は、今までに感じたことのない喜びにみち

いつか、眠るようにこの生を終えました。

生は、すぐにやってきます。

それからは、小さな森には災害はなく、

永遠に黄金色に全て光る平和な森に

なりました。

つづくかも(笑)