井手英策

【オススメ本】井手英策『富山は日本のスウェーデンー変革する保守王国の謎を解くー』(集英社新書、2018)

私の大学には北陸三県からの入学者が多く、2019年度で132人の入学者のうち26名、すなわち約20%が富山・石川・福井県からの入学者だったりします(したがって、私のゼミ生にも毎年北陸出身者がいます)。

その観点から思わず手にとってしまいました。

https://www.fukuchiyama.ac.jp/img/admission/result/2019/data01.pdf

「県民総生産は31位にもかかわらず、一人当たりの所得では6位、勤労者世帯の実収入では4位に浮上する。さらに持ち家率は1位、生活保護被保護率の低さ1位、この要因(背景)にあるのがいわゆる「ワークシェアリング的雇用環境」と女性が働きやすい仕組み(女性の正社員比率1位)であり、この仕組みが公教育への手厚い投資と独居老人の少なさを生む。すなわち、個人よりも共同体の秩序を重視するという意味において、保守王国にして北欧的である」

というのが要旨になります。ただし、内容的は基本的に類似本

『福井モデル』

https://www.amazon.co.jp/福井モデル-未来は地方から始まる-文春文庫-藤吉-雅春/dp/4167911078/

『全47都道府県幸福度ランキング』

https://www.amazon.co.jp/全47都道府県幸福度ランキング2018年版-寺島-実郎/dp/4492212388/

と基本的に同じ切り口で、個人的には特に目新しい発見はありませんでした。むしろ、序章を中心に論じられる「保守と革新」「右と左」という単純なイデオロギーでは現在の政治を説明できず、それを国ではなく、地方の事例で説明しようとした点に新しさがあったと思います。また財政学者が財政以外の切り口で自治体政策を論じる点にも幾分かの目新しさがありました(私の周りの財政学者は環境問題やSDGsを論じる方が多い)。

とはいえ、この手の本は、実際にお住いの住民からすると180度評価が変わることも多いも事実。今度富山出身のゼミ生の率直な感想を聞いてみようと思います。

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