怪獣映画と言えば「秘密兵器」だが・・・:ゴジラ-1.0を見て(3)
ゴジラ-1.0について、3回目も書いちゃいます。今日もネタバレありなので未見の方はお気をつけを。
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1回目と2回目では、怪獣映画におけるリアリティの描き込み方とか、ゴジラ映画の「お約束」について書きました。今日は「ゴジラ映画」というか「怪獣映画」の「お約束」から論を進めていきます(笑)。
「怪獣映画」のお約束とはなんでしょう?私はそれは「秘密兵器」だと考えています。1984年版ゴジラの「スーパーX」(およびその後のスーパーXシリーズ)、「サンダ対ガイラ」のメーサー殺獣光線車、(怪獣映画ではなく特撮映画ですが)「地球防衛軍」(1957年)の「マーカライトファープ」、そしてなによりオリジナルの1954年版ゴジラの「オキシジェン・デストロイヤー」といったものです。
「機動警察パトレイバー」の最初のOVA版の第3話「4億5千万年の罠」でも、「秘密兵器」ではありませんが、「高圧電流作戦」やら「水中超音波作戦」やらが登場してきます(笑)。こういうものが「怪獣映画のお約束」だからこそパロディネタとして出てきたわけです。
さて、本題のゴジラ-1.0。銀座の場面で、「これはゴジラ映画の『お約束』に忠実なんだ!」と確信したあと(前回をお読みください)、私は、「『秘密兵器』」はなんだろうか???」と期待を始めました(笑)。
とはいえ、戦艦長門は既に原爆実験で亡く、米軍は出てきません。日本軍は武装解除されてますから、日本側の秘密兵器はないでしょうし、米軍が静観している以上は「米軍が秘密に開発していた兵器」も出てきようがないわけです。
ただ、私はもしかしたら「あの秘密兵器」が出てくるのでは?と思っていました。旧海軍技術研究所で研究していた「殺人光線」です。これはマグネトロンを用いて、人体に危害が与えるほどの大出力の電磁波を放射して兵器として使用しようとするもんでした。コレが登場するのではないか!!と思ったわけです。
しかし、大出力マグネトロンは登場せず、フロンガスの気泡でゴジラを包み込んで浮力を失わせる、という「秘密兵器」よりもはるかにリアリティのある作戦が提示されます。
ここで、ゴジラ-1.0では、「空の大怪獣ラドン」と同じように、「秘密兵器」を使わないで怪獣を倒すのだな、と思いました。それはそれでこの時期の「リアリティ」の中で怪獣との戦いを描くならば十分「アリ」なわけです。
(「空の大怪獣ラドン」では、ラドンの帰巣本能を利用して、生まれ故郷の阿蘇山で待ち伏せし、戻ったところでミサイル攻撃で火山を爆発させて火山の手でラドンを葬ります。1984年版のゴジラも最後はこの方法で倒しますね)
しかし「秘密兵器」は出てきました。局地戦闘機「震電」です。
実は「ちょっと特殊な機体」と前振りがあったところで、私が予想していたのはジェット戦闘機「橘花」でした。米軍のジェットエンジンに換装したとか言うのが出てくるのかと。そしたらなんと「震電」だったわけです。これは驚きました。
とはいえ、1947年にフライアブルな機体があるわけもなく、また試作の域を出ていなかったハ43エンジンが設計通りの出力を出せるわけもないわけで、その意味でこの「震電」は相当な「秘密兵器」で、その登場にリアリティはありません。
しかし、「殺人光線」ほど突拍子もないものではなく、また旧海軍残存艦艇が精密に描かれたCGを見せられたあとということもあって、これはもう相当リアリティ度の高い兵器として頭に入ってきてしまいました(笑)。なんと言っても「震電」が飛んでる場面を見せられたら、なんの文句もわいてきません(笑)。
このあたり、第1回で触れた、リアリティと虚構のバランスが絶妙だと感じるゆえんです。さらに最後には射出座席というオーバーテクノロジーまで登場してくるわけですが、「ゴジラを倒す」だけではなく、「誰も死なせない」という作戦のもう1つの目的を描くためならということでなんの違和感もなく受け入れることができました。あの場面で敷島が体当たりして死ぬよりも、やはり生き残ってほしいと観客は思いながら見ていますし。
このあたりは、主人公たちが体当たりして死んでしまう「さらば宇宙戦艦ヤマト」と、「特攻はいけない」という考えのもとで作られた「宇宙戦艦ヤマト2」の違いを思い出させるものもありました。
このように、「ゴジラ映画のお約束」を守りながら、リアリティを描き込み、その中に虚構を混ぜ込んでいくという手法で、映画の世界観に耽溺したまま、醒めることなくエンディングにたどり着くことができました。
そしてエンディング。次回こそ最後のつもりですが、エンディングについてちょっと考えて見ようと思います。
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