TRPGシナリオ制作のヒント

おはようございます、自宅の書斎から杉本です。
秋めいてきた今日このごろ、私の体重も天高く肥ゆる感じです。
ついに人生で最大の重さに達しました……ダイエットの開始です。
最近運動をサボっていましたから、致し方ありません。

さて、今日の記事はクリエイティブな現場から、「ゲームブックの制作方法を用いて、おもしろいTRPGのシナリオをつくる」という横断的な内容に取り組んでみます。
この話題、いろいろなバージョンがあるんですが、今回扱うのはひとつだけ。
ひとつひとつの説明がまあまあ時間がかかるものですから、ひとつだけに絞ります。


◆スティーブ・ジャクソンの手法をベースに。
ゲームブック作家の王様と言えば、誰でしょう?
個人的な答えは種々あれど、スティーブ・ジャクソン(英)がゲームブックのトップ・ランナーの1人であることに異議が唱えられることはないでしょう。
今回は彼が用いたさまざまな手法(私もプロですから、多岐にわたる分析情報を保持しています)から、シナリオづくりに使えるものをひとつご紹介いたします。


◆シナリオの欠陥。
TRPGのシナリオをゲームマスター(以下GM)でなくプレイヤーでやっているとき、「ん?」と思ったことがあります。
それは、こんな状況でした。

冒険の途中で一行は、「この迷宮に入る必要がある」と突き止めて、その入口に立ったのですよ。
その扉は石でできていて壊せないし、使用しているゲームのルールには、T&Tでいうところの《開け》のような解錠の呪文がない。
そこでGMが盗賊に「解錠の判定ロールをお願いします」と言いました。
で、判定したところ、36分の1の確率で起こる、致命的失敗が出ました。
そして、解錠に挑戦できるキャラクターは、失敗したその盗賊だけ。
迷宮に侵入する方法を失って、冒険者一行は呆然とその場で立ち尽くしました。

この話を聞いて、どう思われたでしょうか?
不運な冒険者一行の話だと思われるでしょうか?
作り手の立場から言わせてもらうと、これは、シナリオそのものに欠陥があります。
それは、(後から確認したところ)正解のルートを選択しているにも関わらず、GMが「じゃあ、そこで成功するかどうか判定ロールしてください」と言われているところです。
この構造では、常に36分の1の可能性で、シナリオがうまくいかないことになります。


◆TRPGシナリオで陥りやすいワナでもある。
GMというのは、とかくプレイヤーに判定をしてもらいたくなるものです。
判定の成否によって冒険は盛り上がる「ように見える」からです。
じっさい、プレイヤーは成功すれば喜び、失敗すれば落ち込みと、サイコロの目に対して一喜一憂するものですから、ついつい何度もやってしまいたくなるもの。
しかし、これは危険なワナです。

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