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新排ガス規制BS-VIとインド自動車業界の未来

すっかりコロナの影に隠れて注目されませんが、インドでは今年4月、BS-VI NORMSという排ガス規制が基本的に全ての新車に適用されることになっていました。基本的に、今買うことができるのはこの基準をみたした車のはずです。(そもそも、4-5月はロックダウンで新車購入どころではなかったと思いますが。)

で、私は特に車オタクでも環境オタクでもないので細かい内容については興味はないのですが、注目している理由は、インドが今の規制基準であるBS-IVからⅤをすっ飛ばして現在の欧州と同程度の厳しさまで引き上げたという点です。まさにLeap frog 現象。

自動車業界の話をする時に、先進国では環境配慮や自動運転などの先進技術、新興国はとりあえず量の需要 (だけ)というイメージを持ちがちです。確かに価格及び利益率が全く違うので、製品ラインナップが異なってくるのは当たり前ですが、インドのこうした動きなどをみていると、新興国であれば古い型でも何でも売れるかというとそんなことはなさそうです。

これは当然、日本のような先進国メーカーのチャンスでもあります。インドは乗用車・商用車共に、TATAとかマヒンドラマヒンドラとかいう地元メーカーがそこそこ強いです。圧倒的に価格は安いですが、技術力では劣るので、おそらくこういった規制の導入は地元メーカにとって結構大変になるのではないかと思います。

しかし、さらに長期的に考えた場合はどうでしょう。インドで車といえばEVが基本となり、今は車を持っていない中流階級以下が、今後はじめて持つ車は全てEV。さらに今まさに全力で整えようとしている地方のインフラは、EVや自動運転を見据えて設計される。ガソリンスタンドをすっ飛ばして、街中にEVステーションが配置されるかもしれません。これがリープフロッグのすごいところだと思います。

中国がかつて世界の工場であったように、インドも世界的な生産拠点となりつつあります。そんな中、中国は今や、米国に並ぶ自動運転の研究拠点の地位を築き始めています。同じようにインドが先端技術イノベーションの中心となるのは、想像に難くないです。そして既にそれはバンガロールなどの一部の地域で着々と始まっています。

さて本題とずれますが、インド政府がなぜ無理にでも欧州レベルの排ガス規制を導入したのでしょうか。それは、モディ首相が特別環境保護に熱心だからという訳ではありません。

それは単純に大気汚染が本当に深刻で人の命に関わる問題だからです。いくつかの研究では、年間100万(〜200万)の人(特に子供が多い)が汚染された空気により亡くなっている計算になるそうです。 インドのコロナ死者は現時点で2.5万人。もちろんこれはとても深刻な数字ですが、比べてしまうとインドの大気汚染問題がいかに巨大で喫緊の問題かがわかります。

最後にまとめとして。自動車はインドにしろ、どの国にしろ、どちらにせよ、環境配慮、EVの方向に行くのは明白です。昨今テスラの株価高騰もあり、自動運転の方が注目されている感はありますが、EVの時代はもっと、早い段階でくると思います。日本や日本メーカーも乗り遅れることがないといいのですが...

参考記事:


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