読書メモ: Mobility X

年末、ヨーロッパを訪れた。留学時以来なので、8年ぶりだった。変化を感じられるエピソードのうちの一つが、最終日アムステルダムの市内から空港へ向かう際、ホテルから呼んでもらったタクシーは、テスラだった。

ちょうどその頃、ノルウェーでは2022年新車販売の80%が、電気自動車だったというニュースが話題になった。いよいよEVの時代が来たのだと確信した。

さて読書メモなので、日経BPから新刊で出ている『Mobility X』(木村 将之、森 俊彦、下田 裕和 )の話に戻ろうと思うけど、Chapter 1 のUberの顧客体験とデータ活用、デザイン思考に基づく新しいビジネスの創出についてが印象的だった。

ある日、米国でこんな質問を受けた。「今日乗ったウーバーの車種を覚えていますか?」

 確かに今日ウーバーで移動したのだが、乗った車両のメーカーも車種も覚えていなかった。面白いのでいろんな人に同じ質問をしてみたが、実は多くの人が即答できないことが分かった。

 ウーバーに乗った人は、「このA社の自動車の乗り心地が最高だ」とか、「B社のシートは高級感があって良い」などと話すことはほとんどない。むしろ、「今日のドライバーは、やたらとしゃべりかけてくる人だった」「想定より少し時間がかかった」「車内はきれいだった」「乗車料金が安かった」といったことである。

 タクシーにおいても同じことが言えるであろうが、モビリティサービスにおいては車そのものの性能よりも、配車オーダーをしたら時間通りに来るか、安全・安心・安価・清潔な環境で乗れるかといった移動体験に価値の力点が移ることになる。

 ウーバーは、従来のハイヤーやタクシーの体験を全く別のものに変えた。サービス開始当時のシリコンバレーのタクシーといえば、「高い」「汚い」、そして都心から離れた場所では「捕まらない」ものだった。最も困るのは、電話しても時間通りに指定場所へ来ないという問題だ。ウーバーは、この乗客が感じていた移動体験の課題をデザイン思考で解決した。ちなみに、デザイン思考とは、デザイナーが用いるプロセスを体系化したものであり、ビジネス分野の課題解決にも活用されている。

米ウーバー「すごい顧客体験」で移動ペインを解消 モビリティX
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01687/00292/

他にも、面白いと思ったのは、

  • 「Express Pool」の例
    そもそも価格が高いという顧客の不満に対して、私のような財務部門が取りがちな態度は、利益を守るために価格はさげない、コストを圧縮するということだが、ならば相乗りマッチングをしようと転換できるのが、会社も顧客もWin-winとなるという意味で素晴らしい。その上、相乗りしたいというニーズはあるのに、なかなかマッチングが成立しないという課題があったところに、ならばカスタマーに歩いてもらおうという従来の”タクシー”に捉われない発想で、課題を解決した。

  • Uber ドライバー向けの顧客デマンドヒートマップの例
    特定の時間・特定の場所に偏りがちなタクシーのニーズとそれに対する供給問題を、データビジュアリゼーションによって解決して、ドライバー側にもより儲けてもらうという仕組みが導入された。


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