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春が来て君は

ペットの柴犬と、
台所にあった「コンフィチュール」とかいう代物

春が来て
君は綺麗になった

まぁ、もう5月なのだが…。

僕は学生の身分なので、世間的に見ればそれこそケツの青い世間知らずという扱いにされて当然ではあるわけだが、それでも年下の存在がいないわけではない。

普段から使っている家から電車への道のりを繋ぐバス停で、一週間に三回位の頻度である女子高生と乗り合わせる。

特に美人というわけでは無く、どちらかというと顔に特徴がある感じの大和撫子といった風貌だったが、顔を覚えるのが苦手な自分としてはそれがかえって印象に残る助けとしてくれたわけだ。

言うまでもないが、会話などの交流は一度も無かった。
バスに乗り込んでからの彼女の記憶が一切ないため、どこで降りているかすら定かではない。
文字通りバス停の前に立っている姿だけが、僕の知る彼女の全てであった。

時は流れて、僕は大学生になった。

使うバス停自体は変わらなかったものの、乗る時間帯は不安定になり、以前と同じ時刻で乗る機会は一週間に一度だけになった。

相手は規則正しい生活リズムを送る高校生であるし、その一度の機会には当然、毎回乗り合わせていたのだろうが、この文章を書くまで彼女を意識したことは無かったため、実質的に「彼女を見かけない」期間になっていた。

今日も、いつものように
少し日が高くなってからバス停に辿り着いた。
その時間は人がいたところでせいぜい、おばあちゃんが一人いる位なのに、今日は違った。

若い女性がいたのだ。

何となくその顔に見覚えがあった。
僕はその時初めて彼女を認識した。

彼女は女子大生になっていた。

唇には紅い口紅を施し、背負ったカバンのメッシュポケットには化粧道具が入っていた。
それだけ認めると、僕と彼女はいつものように互いに干渉することなくバスに乗り込んだ。

前の方に座った僕は、後ろの方のどこかに腰掛けているであろう彼女を意識し、心の中でつい先輩面をしてしまうのだった。

昼間のバスは朝と違ってかなり遅れてくるから、
もう少しゆっくり来ても大丈夫だぜ。

そんで、
その浮いた時間でメイクとかすれば良いのだ。

頑張れ新生活。

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