勘違いしながら生きてゆく

 ここんとこ、取り返しがつかないほどではないが、ちっちゃく、ついてないことが続いた。

 駐車場で車をぶつけたり、歯のかぶせものが取れたり、アーモンドチョコアイスを食べていたら歯が折れたり、水道の蛇口が壊れてどうにも勢いのついた水が止まらなくなって全身ずぶ濡れになってお隣りに助けを求めて飛びこんだり。これはいかん、と厄落としも兼ねて、大掃除を前倒しで始めている。

 そもそも、年末の大掃除。休憩の名のもとに、ついテレビでもつけようものなら、年末の特別番組に目が釘づけになってしまう。特に漫才。「てい。てい、とは昔、近所のおっちゃんが子供を叱るとき...」(←てい、とは、こら、みたいな叱るときの掛け声とみられる)みたいな、鉄板ネタで押し切られるパターンに、とてつもなく弱い。

 わたしはいつも思う。そこへ至る道筋にバリエーションこそあれ、かけがえのないたったひとつの持ちネタで収束するのを待ちかまえて、腹の底から笑いたい。いや、掃除はどうなる。

 広島カープが日本一を逃した折、わたしは、おずおずと広島在住の友だちにお見舞いのメールをした。すると、即座に返事が返ってきた。広島人は心が折れて、カープの話を一切しないと。。その流れで、最近ついてないことが続くと伝えてきた友だち。わたしもそんな渦中と返信したら、メールで説明しあうのがめんどくさくなったのか、電話がかかってきた。

 そろそろ、上向いてきた感じがするのは、微妙なことで褒められることが、なぜか増えてきたからだ。髪につやがある(ほんと微妙)とか、やせた、とか、あんまり変わってないとか、だれそれに似ているとか。わたしのほうにも、ショートにしてからパーマをかけなくなったから、とか、逆に太った、とか、あんまりってどんくらい?とか、いくらなんでもおこがましい、とか、いろんな思いはある。が、そこんところは曖昧なままで、そのつど、にやける。そして、にやけながら考えた。いつのまにか、自信をなくしていたなと。見ためのことだけではない、いろいろ。ほかの人ができるなら自分だってできるだろうと、深く考える前にチャレンジを繰り返してきたんだったのに。そうやって勘違いしながら生きてゆくしかないのに、だ。

 しかし、もし、隣りの住人がずぶ濡れで助けを求めてきたら、どうしますか? ちょっとした事件ですよね。こわいです。でも、思い出したら、笑うと思います。まずは、今年中に大掃除を終えたい。

#エッセイ #2016年にやっておきたいこと #大掃除

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