日記 vs コロナ,俺の勝ち

今回は真面目に,真実のみを書く。

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発症期間: 1/31 - 2/7
主症状: 発熱,関節痛,喉の痛み,倦怠感
感染者: 男性,24歳,基礎疾患もち(喘息,性格が悪い,奨学金で100万以上の借金がある)
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以上。今日日コロナの仔細なレポートなど無数に転がっているから,わたしがあえて書くこともない。ライフハックの類も知らない。「コロナ ライフハック 最高善」とか検索すればいくらでも出てくるだろう。

発症中はつねに頭にもやがかかったようで,読書はおろかマンガアニメ映画もキツかった。できることと言えば死んだ目でSNSを眺めるか,死んだ脳でMTGアリーナをプレイするくらいだ。足し算を間違えて5回くらい負けた。

とりわけひどいのは喉の痛みで,毎回「ウッッ!!」と覚悟を決めねばツバも飲めない。トローチと浅田飴を1日でなめつくし,のど飴と氷もなめ尽くし,なめすぎのせいか舌が火傷したように荒れた。眠りに落ちると喉がカピカピに乾いていっそう痛むものだから,眠るのが怖くて布団に入れない……という我愛羅みたいな生活がしばらく続いた。

とはいえ裏を返せばその程度でしかなく,実害らしい実害は近藤芳正の一人芝居に行けなくなったことと,ESを死にながら書いたら締め切り10分前にサイズ制限に気づき,無理やり圧縮したガビガビゴミ画質で提出せざるをえなくなったことだけ。「は?読み込み中?」みたいな画質になった。さすがに落ちたか? まあどうでもいい話だ。なお,わたしは凡人なので就活はしている。

そういえば就活で「ケース面接」とやらを課されたので,前日にこれを読んだ。

ケース面接とはくだらない思考実験のことを指す。「ラーメン屋の売上を1年で2倍にするには?」とか「ホモ・サピエンスの総量を20年以内に1億以下まで減らして地球を住みやすい星にするには?」とか,そういうやつだ。この手の本が自分のKindleアカウントに入っているだけで不愉快なのだが,読んでみると意外とおもしろかった。

要はMECE (= 漏れなくダブりなく, mutually exclusive and collectively exhaustive) をいかに達成するかが(面接の)キモらしい。たとえばラーメン屋の売上ならまず売上を客単価と客数に分解し,更に客数に寄与する要因を営業時間とキャパ数と稼働率と回転率に分解し,あとは個々の要因に対してプラスを増やすないしマイナスを減じる策を検討する。
実際にはMEでもなければCEでもないし,横文字を並べてドヤ顔するまでもなく全く当たり前の操作なのだが,標語やスローガンとはそういうものなので別に構わない。

特に評価が上がったのは「大学生が3ヶ月で100万円作るには?」の項で,ギャンブルや犯罪が「確実性に欠ける」の一点のみから拒絶されていたことだ。犯罪だからやってはならないとトートロジカルに記述するのではなく,あくまでリスクリターンの観点からのみ判断をくだすスタイルが見ていて心地よい。ここには「仮にリスクに見合うなら犯罪を厭う理由はどこにもない」という倫理を超越した合理主義者の精神が感じ取れる。余命いくばくもない病人なら,あるいは死刑をも覚悟した人間なら,何をしたって構わないわけだ。だって,そうだろう。
「実害なき密室状況での違反」において,コンサルタントなら「渇しても盗泉の水を飲まず? ナンセンスだ(ここで独特のジェスチャー),実害がないなら飲んで一向にかまわないじゃないか」と返すに違いない。ケース面接に大庭健の出てくる幕はない。Why be moral? なんだそれは。


冗談はさておき,実際の面接はこんな感じだった。

面接官:今日はケース面接です。回答時間は10分とします。やり方はご存知ですか?
わたし:はい,大丈夫です。
面接官:了解です。お題は「ホモ・サピエンスの総量を20年以内に1億以下まで減らして地球を住みやすい星にするには?」です。では,早速回答をはじめてください。
わたし:わかりました。ところで,クライアントさんは誰でしょうか?
面接官:そうですね,地球と言いたいところですが,ちょっと難しいですね。寄生生物パラサイトにしておきましょう。人間に寄生し人間を食うパラサイト,彼らがクライアントです。それ以外の設定はご自分で決めていただいて結構です。
わたし:わかりました。

────10分経過────

面接官:時間です。発表をお願いします。
わたし:わかりました。まず,人間を減らすには,既存の人間を削除する方法と,赤ん坊の製造ラインを止める方向の2通りがあります。
面接官:そうですね。
わたし:ただ,明らかに後者だけでは足りません。例えば日本の年間死者数はおよそ1%です。新生児が生まれなければこの減少がそのまま人口の減少になりますが,年1%程度では20年かけても総人口は80%強までしか落ちません。もちろん国によって死亡率は違います。ただ,既存の人間を削除しなければクライアントの意向は達成できないのはほぼ間違いないかと。
面接官:はい,そうですね。
わたし:次に,単純にクライアントが「食う」ケースを考えます。パラサイトさんの生態がよくわかりませんが,肉体は人間ですから,食べるペースは人間と同じとします。問題は繁殖スピードで……
面接官:あー,パラサイトは本当は増えない設定なのですが,アナウンス不足でした。すみません,続けてください。
わたし:そうなのですね。とりあえず食べる量を考えると,肉って先進国でも年にせいぜい100キロちょっと食べる程度なんですよね。逆に1日単位のカロリーベースで考えると,だいたい日に3000キロカロリーとれば足りるわけですが,これって脂肪でいうと300グラムちょっとしかないです。毎日食べても100キロくらい。やっぱり,パラサイトさん1人あたり,年に2人食べれば足りてしまう。
面接官:確かにそうですね。意外と少食ですね。
わたし:そうですね。ですので,食による減少量はクライアントの規模次第なのですが,パラサイトさんはどれくらいいるのでしょう?
面接官:それは彼ら自身もわからないでしょうね。管理するシステムがないので。ただ,これだと問題にならないので……都内の高校に1人いるかいないかくらい,でどうでしょうか。
わたし:なるほど。では,ざっくり言って1000人に1人とします。日本だけで120万人くらいがパラサイトさんになり,年間で250万人くらいが食べられることになります。パラサイトさんが繁殖できればすぐ目標は達成できそうですが,増えないとのことなので……
面接官:増える場合はどうなりますか?
わたし:年に10%増えれば,20年間でおよそ6.7倍,日本の場合700万人くらいがパラサイトさんになりますね。この間に食べた人間の総量は単純計算で7000万人弱になりますから,だいたい7-8人に1人がパラサイトさんになります。もう少し繁殖率が高ければ,世界人口1億人を無理やり達成することは可能ですが……問題は,これだとすぐ食糧が枯渇して共食いが──可能であれば──始まるだろう,ということです。
面接官:結果的に,増えなくてよかったですね。
わたし:そうかもしれません。クライアントが地球なら雑に人類を滅ぼしても無問題ですが,パラサイトさんとなるとちゃんと人間を健康に生かしておかないといけませんからね。
面接官:それで,結論はどうなるんでしょう。ただ食うだけでは難しい,ということでよいですか。
わたし:そうです。回り道が長くなってしまいましたが,結局はひたすら殺しまくるほかないです。パラサイトさんはたぶん戦闘力はありますよね? 直接殺す方法と,大きな戦争を引き起こして勝手に殺し合ってもらう方法とがありますが……正直なところ,後者は自分の手には余ります。ただ,直接殺すにしても,いきなり殺しまくると社会に敗北しそうです。例えば最初の10年は潜伏期間にあてて,メディアや行政,警察等の中枢に食い込んでおくのがよさそうです。そうして機が熟したら一気に殺しまくる,とか……。
面接官:まあ,穏当な結論ですね。実際は個々のパラサイトを管理できないので,雑に殺すやつが現れて,結局すぐ存在が明るみに出てしまう,なんて結末になりそうです。
わたし:おっしゃるとおりだと思います。
面接官:ありがとうございました。そろそろ時間切れです。お題がちょっと難しすぎましたね,すみませんでした。最後になにか質問はありますか。
わたし:いえ,特にありません。ありがとうございました。しかし,繁殖できないというのは不思議ですね。この設定は正直引っかかりました。
広川 :そうですね。不思議ですね。
わたし:パラサイトは何のために生まれてきたんでしょう?
広川 :さあ。しかし増えないという意味では,別に人間だって何だって,本質的な意味ではなにも増えていないのではありませんか。ただひとつの世界があって,それが閉じる,それだけではありませんか。
わたし:おっしゃるとおりですね。本日はどうもありがとうございました。


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