魚豊 『チ。 ―地球の運動について―』 ☆2 殉教者万歳! (9話まで)
ここまでずるい作品は久しぶりに見た。
真理,美,知性,そういう気もちいい概念の皮でもって,古ぼけた二項対立の枠組みを覆いかくしてしまう。美徳は死によって完成され,もはや読み手はその輝かしい自己犠牲の精神にただぬかずくほかない。地動説の受容という約束された勝利にいたるまで,きっと本作には数々の殉教者が登場し,信者であるわたしたちの心を揺さぶることだろう。
真理のために死ぬ! わたしもそんな単純明快な世界に生きてみたい。
※以下の文章は9話公開時点 (2020年12月8日) に