Say Goodbye to Memory Den/DYGL


聴き終えた直後に、聴きすぎてしまったなと反省をした。
聴き終えたのはDYGLの1stAlbumの「Say Goodbye to Memory Den」で、聴きすぎていたのはそれではなく、既に発表されていたDYGLのいくつかの音源のこと。

いつだって聴きすぎてしまう。繰り返してしまう。何十回も、何百回も。曲の細部までひとつひとつ記憶してしまい、超イントロドンで出題されても即回答できる位に頭の中で正確に再生されていく。そしてしまいにはライブ会場などで歌詞やアレンジの違いにいちいち反応したり、面影を残しながらもちょっと雰囲気の変わったリミックス・ヴァージョンなんかを差し出されるとあー…と尻込み、思考は停止。正常な判断が出来なくなり、気付くと曲が終わっている。

仕方がない。やっとの思いでさりげなく、さりげなく購入し、タイミングを見計らってごく自然に、まるで昔からその場所にあったかのように部屋に紛れ込ませたCDなのだから。大事に、というよりむしろ野蛮なくらいにしつこくリピートしてしまう。

そんな主婦の戯言はともかく。

Ykiki Beatと並行して活動していた頃に知って同時にチェックしていたデイグローのデビュー・アルバム。ストロークスのアルバート・ハモンドJr.とストロークスのプロデューサーのガス・オバーグの2人が全曲プロデュース、という嬉しい情報に期待が膨らむ。発売前に視聴した時には聴きすぎていた昨年のEPの曲やライブでお馴染みの曲の小さな変化に戸惑ったけれど、そのまま黙って耳を傾けてみる。まず1曲目の「Come Together」の力強さに痺れた。一昨年のアルバートのソロ・アルバムが割とポップな仕上がりだったので、そういうテイストにまとめられるのかなと気になっていたけれど、すっきりと処理されつつもDYGLとしてのラフなところや個性はちゃんと主張していて、お洒落で芯が通っている。メロディも歌い方も演奏も唸るほど更に良い。元々好きだったものがしっかり形を作って手の中に戻ってきたような感覚。ジャケを含め、文句などなかった。身構える必要も。

DYGLを聴くと心と体がたちまち躍る。生活に埋もれた固い頭が解され、楽しくて楽しくて一瞬キッズに戻るのだ。カラッと明るく、ざらついた荒いギター、時々甘くて、エモーショナルで、ピリッと刺すようなフレーズなんかもちゃんとあって、リズムはスタンダードなロック。そしてアルバムの中に3分か4分でおさまるような簡潔な曲が沢山入っている。だらだらと飽きるほど長く続いたりなんかしない。余韻を残さず潔くスパッと綺麗に終わる。そういう音楽は意外と少ない。特に日本には。しかしまあ、よく自力でこんなに自分好みな音を探し当てたな、と自分のアンテナのしぶとさに感心する。

と、そんな事を考えているとさっき再び流し始めたはずのアルバムはあっという間に止まってしまう。しまった!とまた再生ボタンを押す。かつて「スクリーマデリカ」や「Is This It」や「When the World is Wide」を聴きすぎていた耳は、今度はきっとこのアルバムを何度も繰り返すのだ。

「Say Goodbye to Memory Den」

思い出を超えてくチケットを探して。



以前Ykiki Beatについて書いた記事はこちら
Ykiki Beatのこと


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