2019年間ベスト

☆年間ベストアルバム

まずはどこまでが2018年で、どこからが2019年なのか、記憶を辿るところからはじめなければならなかった。いつまでが平成で、いつからが令和になったのかも思い出せないような鈍い頭を使うのだ。スピーカーの周りに積み重ねられたCDやレコードを探り、Apple Musicのライブラリを遡りつつ、スケジュール帳をめくって時間を巻き戻す。よく聴いた音楽が今年のものだとは限らないわけで、昨年から引き続き魅了されていたアジアのインディー・ミュージックのうち、繰り返し聴いたものは何故か1〜2年前にリリースされたものが多く、残念ながら該当しなかった。そしてサブスクが勝手に集計してくれた今年の再生回数1位のアーティストは、7月に2枚のリマスター盤をリリースしたコーネリアスだった。確かに今年の初夏は『Mellow Waves』が発売されたあの2017年以上にコーネリアスを聴いた。でもそれも随分と昔のことのように感じる。

☆Atlanta Millionaires Club/Faye Webster
☆Ghosts/ミツメ
☆Oncle Jazz/Men I Trust
☆Forever Turned Around/Whitney
☆Designer/Aldous Harding
☆Novel/N0V3L
☆When I Get Home/Solange
☆Who Wants to Be a Millionaire?/Chinatown Slalom
☆Piercing/小袋成彬

上記で選んだ年間ベスト9枚に順位はない。順位をつけること自体にはわりと肯定的だけれど、新しい音楽をいつでも家で聴けるような環境のなかで、気になるレコードやCDを試しにじっくり聴いてから購入できるようになってからは、そのアルバムに対する思い入れはシャッフルされるみたいにどこかに流されていき、戻ってくる頃には優劣をつけることが難しくなっていた。それと同時に、無限に広がる未知の世界を想像しては、音楽を聴きはじめた頃のように夢を見た。フラットな気持ちで何度も聴いたものばかりを選んだけれど、昨年のベストアルバムにも選んだクラック・クラウドのメンバーがやってるらしいカナダのN0V3L(なんで読むんだろう、いまだに謎だけどノヴェルでいいのかな?)と、リバプールのチャイナタウン・スラロームのフレッシュな音にはわりと衝撃を受けたし、この2枚は聴いた瞬間から自分にとって重要なアルバムだという確信が持てた。1位を選ぶとするなら年末に来日公演を観たオルダス・ハーディングかもしれない。元々の不気味さはそのままで、穏やかな狂気をポップスにうまく変えた音、そしてなんといっても二面性のある素晴らしい歌声にやられた。世の中が早々に年間ベストを発表した12月の半ばに、突如ハイクオリティなアルバムを配信リリースした小袋成彬のインパクトは絶大だったし、痛快だった。メディアの真似をして我先にと年間ベストを決めなくていい、新しい音楽は日々生まれている、ということを改めて確認できた12月の終わり。


☆30/電気グルーヴ

残りの1枚は電気グルーヴ。こういう年間ベストではオリジナル・アルバムを選ぶもので、デビュー30周年の企画もののアルバムは対象外なんだろうか。いや、知るかよ。2019年は電気グルーヴの年だった。こんなに電気グルーヴのことを考えた年はなかったし、こんなに意識的に電気グルーヴを聴いたことも、聴けなかったこともなかった。年間ベスト曲50のプレイリストに「いちご娘はひとりっ子」を入れられないのが本当に残念だ。混乱の最中に行われたDOMMUNEの電気グルーヴ特集には心底救われた。電気グルーヴの再始動を心から願っている。

☆年間ベスト曲50

1.Kingston/Faye Webster
2.Used To Be Lonely/Whitney
3.All I Wanted/Hanneh Cohen
4.Lemon/ADOY
5.Alewife/Clairo
6.Sun Flower(feat.Steve Lacy)/Vampire Weekend
7.Girl/Girl Ray
8.Everybody Here Hates You/Courtney Barnett
9.Your Book/Say Sue Me
10.Apple Cider/Beabadoobee
11.A Paper Dream/DYGL
12.Poodles/TAWINGS
13.Natural/N0V3L
14.The Next Fix/Crack Cloud
15Bad Blood/Working Men's Club
16.Lift Off!/Parsnip
17.Soft Shape/Empath
18.UFOF/Big Thief
19.Cry For Another/Claude Fontaine
20.Maria Tambien/Khruanbin
21.フクロウの声が聞こえる(魔法的オリジナル)/小沢健二
22.The Barrel/Aldous Harding
23.なめらかな日々/ミツメ
24.Fort Green Park/Battles
25.Rocket Fuel(feat.De La Soul)/DJ Shadow
26.Fire Brain/Kroi
27.Dreams/Chinatown Slalom
28.Stay Flo/Solange
29.Do You Remember(feat.Death Cab for Cutie)/Chance the Rapper
30.Gaia/小袋成彬.5lack
31.Don't Miss It/James Blake
32.Elephant/D.A.N.
33.Do My Thing/Erika de Caser
34.Wicked Dreams/Rhye
35.Kiss It off Me/Cigarettes After Sex
36.新しい人/Ogre You Asshole
37.未来の人へ(feat.ゑでゐ鼓雨磨)/坂本慎太郎
38.サウナ好きすぎ/Cornelius
39.Pink&Blue(feat.Saint Shinner)/Tycho
40.LesAlpx/Floating Points
41.Dreamer/Four Tet
42.Toluca Stars/Underworld
43.Water Me Down/Vagabon
44.Just Like My/Homeshake
45.Say Can You Hear(Album V)/Men I Trust
46.Don't Call Me Windy/Luke Temple
47.ループ/Yank!
48.Money/Leisure
49.Fifa20/Gym and Swim
50.Enough Already/Pale Beach

・Spotify
Spotifyhttps://open.spotify.com/user/ykvvxeti5nktptnxppxlge0px/playlist/54si6cmbsgcWiObbhavAOK?si=PcAa9n-vSB-j3PmB5zud9A

※SpotifyにはLuke Templeの曲がなかったので49曲

・Apple Music
https://music.apple.com/jp/playlist/2019%E5%B9%B4%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E6%9B%B250/pl.u-pMyl1Blt02AN3o

プレイリストを作成するのは本当に楽しい。流れや繋がりを考慮しながら曲順を考える。好きな曲でもどこにも収まらないものは外したり、相性の悪そうなものを敢えて並べて流れを変えてみたり。時間を費やして完成させると曲に対していっそう愛着が湧いてくる。似たような音楽を聴いていてもそこから選ぶ曲はひとりひとり違うだろうし、人の数だけ心のプレイリストは生まれる。誰かが昔は年賀状で自分の年間ベストアルバムを発表していたと話していた。素敵じゃないか、インターネットの無い時代の知恵の使い方!その無邪気な自己アピールの仕方を見習おう。貴方も、私も。

ベストライブについては時間のあるときにゆっくり追記しようと思います。
文章を書くモチベーションがなかなか上がらず、ゆるい更新を続けているnoteですが、今年はnoteがきっかけでいくつか嬉しいことがあったので、来年も細々と続けていこうと思います。いつかまた情熱が持てるといいのだけれど。
#2019年ベストアルバム

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