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いつからaikoは「きゃーかわいい」と黄色い声をかけられるようになったのか

いつからかテレビにaikoが登場するたびに「きゃーかわいい!」と黄色い声をかけられるようになった。

僕はaikoの容姿が「きゃーかわいい」と言われる前からaikoのことが好きなので、「やっとウチのaikoのかわいさに気づいたか…」くらいの気持ちだ。

ただ、ただである。
矛盾するようだけれど、「aikoってかわいいだろうか?」

もちろんaikoはかわいい。それは僕の主観では疑いようがない事実だ。でも客観的にもかわいいだろうか? 大観衆から「きゃーかわいい」と言われるレベルだろうか?

そして、ここが問題の根幹なのだが、aikoはかわいい存在であるべきだろうか。


例えばこういう歌詞がある。

あたしの泣いた顔はブス
それを見る困った顔も格好いいな
(格好いいな)


もしも、この歌を新垣結衣が歌ったとしよう。皆さんはどう思うだろうか? 納得してこの歌を聞けるだろうか。

新垣結衣でなくてもいい、アイドルが、その辺の女性ボーカルが歌ったら説得力を持つだろうか。

これはaiko、aikoだからこそ説得力を持つのだ。
aikoの泣いた顔、それは確かにブスかもしれない。そんな気がする。

というか大体の人は泣いた顔はブスなのだ。鼻水だって出ちゃうし、化粧も落ちちゃうし、支離滅裂になっちゃうし。でも、この歌詞はアイドルや他のボーカルではaikoほど歌いきることはできない。なぜならばaikoより美しいからだ。

そして多くの人は、アイドルや他の芸能人よりもaikoよりの外見であり、aikoよりの内面を持ち、aikoよりの悩みを持って生きている。

人は誰しも、女性であれ、男性であれ、かわいくない面を持っている。そのかわいくなさを好きな人に見抜かれて嫌われてしまうんじゃないかと不安になる。まさにaiko的感性を持って日々生きている。

aikoの本質のひとつはこういったかわいくなさを持っていることにある。そして、aikoは自分の中のかわいくなさを自覚している。自覚し、強い不安すら持っている。

如実に表れているのが、「桜の時」だ。

まぶたの上にきれいな青 薄い唇に紅をひく
色づいたあたしを無意味な物にしないで
(桜の時)


aikoには不安がある。自分が「大切なあなた」にとって価値を持たないのではないかという不安だ。

しかし、aikoはただ不安を持っているだけではとどまらない。そこから前に進む。そこにこそaikoのaikoたる所以がある。

色づいたあたしが無意味な物なるのではないかと不安を持つ「桜の時」。サビはこのようになっている。

ゆっくりゆっくり 時間を超えてまた違う
幸せなキスをするのがあなたであるように
(桜の時)

自分の外見が、内面が、美しくない面を持っていること、そしてそれ故に「あなた」に嫌われてしまう可能性があることにaikoは自覚を持っている。

その上でaikoは「あなた」へのまっすぐな思いを歌う。打算したり、折り合いをつけたりすることはない。醜さや不安をことさらに隠すこともしない。ただ、まっすぐに「あなた」へと。これがaikoだ。


もうひとう、歌詞を紹介しよう。aikoの事実上のデビューシングルとも言える「ナキ・ムシ」だ。

泣き虫だし いい言葉も並べられない
笑顔も下手だし不器用だけど
苦しいほどの気持ちを誓う
(ナキ・ムシ)


早速のネガティブから入っている。泣き虫、上手いこと言えない、笑顔ヘタ、不器用の4連打だ。

ところで、人はどういったときに、自分の外見・内面の醜さに気づくだろうか。恐らくは多くの場合は人間関係で手痛い失敗をしてしまったときではないだろうか。

それはaikoにとっても例外ではないだろう。
aikoは、aikoだって、たくさん傷ついてきたのだ。あるいは人よりも多く傷ついてきたかもしれない。ちなみに、aikoが生まれて初めて作った曲と公言しているのが「アイツを振り向かせる方法」だ。この歌は土砂降りの雨の中で振られるところから始まる。キャリアのスタートにすでに、傷つきがある。

aikoは、ナキ・ムシで自分のよくないところをいくつも並べている。曲という制約上、数は限られているけれど多分aikoはもっともっとよくないところを並べることもできるだろう。そのくらいに、傷ついてきた。

それでもなお、aikoは"苦しいほどの"気持ちをあなたに誓う。デビューして20年以上経つ今でもそれは変わっていない。”もう”怖くないと、aikoは歌う。

ゴメンだよって言われたって もう怖くない
(ナキ・ムシ)


aikoは確かにかわいい。これからも「きゃーかわいい」と声をかけられるだろう。でも、aikoのかわいさの中には、醜さへの強いほどの自覚がある。

つまり、何が言いたいかと言うと、好きだaiko!!!

好きだaiko!!!

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