BIP信託の受益権確定時の処理(法人税)

前回はESOP信託の受益権確定時の処理について書いていきましたが、今回は題名にあるとおりBIP信託の受益権確定時の処理について書いていこうと思います。

BIP信託の場合には対象者が取締役などになるため従業員の場合のように無条件に損金算入されるということはありません。平成29年度税制改正で変更になった部分でもあるので下記表にまとめてみました。

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改正後の損金算入要件である業績連動給与については下記の要件を満たす必要があります。これらの要件を満たすように制度設計をする必要があるので注意が必要です。有価証券報告書や株主報酬規程を見ると要件を満たしているかどうか確認出来ます。

① 算定方法が指標に基づく客観的なものであること
② 金銭の場合は確定額、株式の場合は確定数を限度とすること
③ 他の業務執行役員と同様の算定方法を用いること
④ 算定方法を有価証券報告書で開示していること
⑤ 算定方法を適切な方法で決定していること
⑥ 一定期間までに交付又は交付される見込みであること
⑦ 損金経理をしていること(損金経理により引当金勘定に繰り入れた金額を取り崩す方法により経理していることを含む)

事前確定届出給与や業績連動給与の要件などの疑問点については信託協会のQAを見るとだいぶ解決されると思うのでご参考まで。
https://www.shintaku-kyokai.or.jp/archives/026/201902/esop02.pdf

具体的な処理方法については損金算入される場合とされない場合の2パータンありますが、損金算入される場合についてはESOP信託で書いたのでそちらをご覧ください。ESOP信託の記事はこちら
今回は損金算入されない場合について事例をもとに書いていきます。
<前提条件>
・従業員は1ポイントあたり1株を受け取る
・信託への現金200,000を拠出する
・会社は時価100の自己株式2,000株を信託に譲渡(簿価も100とする)
・受益権確定時の時価は2,500とする
・信託報酬、配当はわかりやすくするため無視
・退職時交付型とする

上記前提条件をもとにまずは会計上の仕訳を見ていきます。
ESOP信託については会計上も総額法での取り込みになるので①から③までに仕訳についてみてもらえればわかるとおり特段何もなかったことになっています。(会社と信託を同一に考えている。連結みたいなイメージかな)
④で株式報酬費用を計上して、⑤で退職を起因として受益権が確定という流れになります。

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次に税務上の仕訳を見ていきます。
税務上は会社と信託を同一とみていくので①から③については内部取引なので何も仕訳が起きません。
次に④のポイント付与時も税務上は引当金の計上は認められないので仕訳は起きません。
⑤は今日の記事のポイントになりますが、税務上は受益権確定時の時価により退職金を認識することになります。
なので、受益権確定時の時価2,500に交付される自己株式数1000株を乗じた2,500,000が退職金として認識されます。

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会計と税務の調整仕訳は下記のようになり、この調整仕訳を反映すると
別表4及び別表5(1)は下記のようになります。
結論としては税務上は退職金と資本金等(増加)を2,500,000を認識し、さらにその認識した退職金は損金不算入とする必要があります。
既に会計上100,000が株式報酬費用で費用化されていて100,000が自己株式として資本金等を増加させています。
なので、その株式報酬費用100,000を否認するとともに退職金2,500,000を減算し、その減算した退職金は損金不算入なので2,500,000を加算社外流出させます。
あとは、資本金等を2,400,000増加させる必要があり、利益積立金と資本金等の入り繰りになるので下記のような調整になります。
また、退職金2,500,000が認識されることになりますが、損金算入されていないので外形標準課税の計算に加える必要はありません。

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こちらも意外に長い記事になってしまったな。。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

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