葬式でなぜ泣かないと叱られた 寝顔は花より白い わかんない/瑞野透

うたの日無冠の短歌を紹介するシリーズ衝撃の第101回

2023年02月07日『自由詠』の一首

一旦貶すみたいになりますが、3句まではそれだけ読むと説明的でありきたりとも思えます。葬式で泣けなくて、怒られている。物語としてならなんだか聞いたことのある場面。アンサーとしての結句「わかんない」までの距離も近いと思います。そこに驚きはないかな、と。すると、やはり「寝顔は花より白い」の表現と位置が抜群に良いということなのかなと思います。

表現については、うたの日上の評でも青蒼紺碧さんが言葉を尽くされています。付け加えるなら、ここで景が立ち上がっていることも重要かと思います。作中主体の視線を追体験することが、結句を受け入れやすくしてくれているように感じました。わかんない、にまっすぐ向かわずに差し込まれた情景描写。花より白いのは、作中主体にそう見えるということかもしれません。

3句まで定型で進んで、急に破調するところは作中主体の心情にあっているのではないでしょうか。8・8の字余りというよりは、4句11音の字余りから結句5音の字足らずと感じました。

散りばめられたN音がリズムをつくっていて、だから「わかんない」の撥音便が受け入れやすいのかもしれません。少しの幼さや、なんとか死を受け入れようとし始める前のなんともいえない感情。かなしみはもう少し先にあるのでしょうか。美しい短歌だと思いました。

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