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さくらい
2017年6月19日 12:13
←前話あの子はいつもさみしそうな目をしている。窓際の一番うしろの席で、その小さな手にはいつもの本。分厚い、桜色の表紙の本。彼女はどこかさみしいような、かなしいような目でそれを眺めている。僕はいつもそれを見つめている。五月のやわらかな木漏れ日があの子の机の上踊っていた。休み時間の教室はひどく騒がしいはずなのに、彼女を見ていると何故だか何も聞こえなくなる。僕と彼女だけ、透明な箱の中にいるよ