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【コラボ記事:後編】シンガーソングライター3人がオンラインとオフラインで考える「音楽のこれから」談議。

7月10日にアコースティック生配信ライブを行うにあたり、ゲスト出演の依頼を K.K. にさせてもらったところから、この対談記事のアイディアは始まった。

今回の配信ライブは「recipeの仕込み」と題した。少し勇気や元気が欲しい、ちょっと心細い、そんな時に開きたくなるような、レシピ本をイメージしてライブを制作している。そこにはヘンテコなHow toや、誰かの哲学、秘密の材料で作られたあったかい飲み物や、思い出せる一つのジョークがある、そんなイメージ。そんなレシピの1ページを今回K.K.には彩ってもらうことにした。二人と共に当日つくるレシピのテーマは「笑顔の生み方」

その前段としての今回の対談記事の後編である。前編ではそれぞれの生活の変化を中心に。今回は、オフライン(リアルライブ)とオンライン(インターネットを使った配信など)などの具体的な活動について感じてきたことを中心に喋っている。

Goosehouseなどの活動を経て10年以上。全く異なる表現を届ける2組でありながら、交流が続いてきた。そしてコロナ禍の生活の中で、誰もが深く人との関わりや「笑うこと」の大切さを実感した一年。

人生のrecipeというと大袈裟に聞こえるかもしれないが、2組がこの一年、何を感じ、何を考え活動を続けたのか、その対談である。


1.コロナ禍での活動


木村「コロナ禍で気づいたことの一つが、自分たちの音楽を好きでいてくれる人とつながってる時間に比例して、自分たちが元気になっていってる事。全てがオンラインになったときに、お客さんとの間で気持ちを繋げているかのかどうか、最初は手探りだったけど、自分自身が気付いたら笑ってて、実感に変わってきた。」

工藤「以前はその実感の生まれる場所が基本的にはライブハウスだったんもんね。普段の生活とライブの差というのを明確に感じるようにもなった気がする。」

「生活とライブの差?オンライン、オフラインの差?」

工藤「うん、なんというか、今までのオンラインと、コロナ禍でのオンラインってまた変わったなって感じがする。家からオンラインを届けたりするようになって生活の中にライブが入ってきちゃってるって前はあまりなかったじゃない。」

木村「あー。確かに。自分だけかもしれないけど、家からオフラインやってる時ってすごく独特な隔絶された空間が生まれる感じがあって。映画館で映画を観て、終わったあとの寂しさとか現実感にちょっと近い。だから、工藤と配信やったあと、工藤の目をもうみずに帰りたい(笑)恥ずかしさとか、現実感がありすぎて。」

「それ、ライブハウスでのライブ終わりにはなかったの?」

木村「ライブではまだ、会場にいるとか、お客さんの声が聞こえるとか、自分の中のオフスイッチに段階があるんだよね。」

工藤「なるほどね。木村はオンオフ人間だからそうかもね。こうして考えると、スタッフさんに挨拶したりとか機材の片付けとか、帰り道とか、オフラインでのライブの終わりにはいろんな工程があるよね。それもやっぱり木村には特に大事な事だったんだろうね。気持ちが次に行くためにも。美容院で、終わる予感なしに、はい!終わり!お金払って!財布ありますから!とか言われたら嫌じゃんみたいな。」

「なにそれ(笑)お会計はお席にて、みたいな(笑)」

工藤「そうそう(笑)何事にも余韻って欲しいよね。」

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2.オンライン?オフライン?


木村「実はオンラインの方が掛け算の比率が高かったりするのかもって思うことがあるよ。どっちが良いとか、そうじゃないんだけど。」

「へー面白いね。それはどうして?」

木村「反応が実際に可視化されるってすごい面白いと思ってて。具体的にここのなにが好きとかって細かな感想を曲ごとにもらえることってオンラインならではだなと感じるんだよね。それで、あーそうなんだ、と思うことがあったり。Goosehouseの頃から感じていたことでもあるんだけど最近はもっと距離が縮まった感じがする。」

工藤「確かにオフラインのライブでは、曲中にそんなコメント聞けないもんね(笑)『ここ!ここのピアノかっこいいです〜』とか『サビの歌詞が好きです〜』とか。オンラインはオンラインの良さがあるっていうのは、演る方としてはそういう情報をたくさんもらえることも一つあるよね。」

「個人的には、この先もオンラインとオフラインの選択肢が持てることはいいことだと思ってるんだよね。CDが売れない時代で、収益化という側面も含めてこの先もっと、動画配信に可能性があるとしたら尚更。だからきっとこの先オフラインの代わりとしてのオンラインじゃなくて、もっと配信に特化した面白いものが届けられるようになっていくんじゃないかと思う。それはお客さんの関わり方なのか、届け方なのかその手があったか!という形でもっと面白いことができるんじゃないかとなんとなく思っている。」

工藤「あー。確かにオンライン、オフラインの考え方は同じではないし、もっとできることはあるよね、それはもっと音楽とか内容以前にもしかしたら配信技術的なことかもしれないし。ステージの見せ方としての変化だと、オフラインは、例えば木村がステージ降りて、お客さんに近づくだけでも笑いになる。なんかされるんじゃないかという恐怖心から(笑)でも例えば映像配信だとそれはきっと笑いにならなくて。『笑い』に対するアプローチそのものが変わるよね。映像にするなら例えば、ずっと木村はそこにいて誰も何も言わなかったのに、最後の曲になって後ろ向いたら、衣装前半分しかなかったみたいな(笑)」

「放送禁止にならないといいけど!笑」

「その話を聞いてて思ったけど、オフラインとオンラインで自己規制の在り方も変わるよね。オフラインだと、目の前のお客さんの反応に準じて自分の行動の軌道修正とか発言選んだりとか、尺を変えたり。オンラインは、それができないから最初から自己規制入ってる状態だよね。変な話、いい意味でも悪い意味でも事故らないみたいな。でも、オフラインライブでは使えない映像技術とか仕込みはどこまでもできるし、ステージがなくたっていい、とかね。」

木村「自己規制はあるかもね。あ、ここらへんできりあげようとか、もっといけるな、とかね。」

「あとは、共有の形で意味も変わってくるよね。例えば、有料にするのか、無料にするのかとかもそうなんだけど、オフラインのクローズド色はより濃くなったよね。」

木村「たしかにね。今とても悩ましいのは、オンラインから、オフラインのリアルライブの移行が一つ挟まると、医療従事の人だったり、どうしても来れない人が自分たちのストーリーが途切れさせてしまう可能性があること。なるべく途切れさせない形で作ってはいるものの、自分たちの決定一つで、誰かをご時世柄がっかりさせてしまうのでは、という気持ちはどこかにいつもある。」

工藤「コロナ禍においての変化は当たり前だけど改めてでかかったよね。コロナ禍でオンラインで出会えた人ももちろんいるし、逆に会えなくなって離れちゃった人もいると思う。本当に難しいよね。」



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3. 10年の中で感じた配信(オンライン)の変化

「この前ふと思ったのが、K.K. は10年近く前、それこそ動画配信の主流がUstreamだった頃から自宅から配信をやっていたじゃない。当時はまだYouTubeもライブ配信はできなかったし。あれは今思うと先進的だよね。その時はオンラインオフラインの棲み分けみたいなことはあったの?当時のオンラインはどんな役割だったの?」

木村「当時は見てる人も少なかったよね。この一年で有名な人たちがたくさんYouTubeに流れてきたけど。だからUstreamもたくさんはできていなかったんだけどね。」

工藤「でもUstreamは、海外と繋がれる手段だったんだよね。当時、台湾に行きたくて、とにかくたくさん台湾語を喋ってた。それで本当に見てくれてた台湾の子がメッセージをくれて、『学校の先生が家に泊めてくれるって』って。で、そのまま本当に台湾に行ったの。」

「すごいわー。」

工藤「だからその流れを考えると、あの頃はいつだってオフライン(リアルライブ)のための、オンライン(配信)だったよね。集客のことも含めて。」

木村「でも今は、配信自体の珍しさってもうないし、新しい人にはなかなかあの頃みたいにはリーチしないよね。」

「そうだよね。逆にこれからはどうして行けばいいんだろうね。コミュニティ形成としてのSNSというのは、すごく成長してきたよね。でも新しい人へのリーチについては、これからは案外アナログ化していくんじゃいないかと思っていて、そこに可能性があるのかもと思っているんだよね。音楽関係でデジタル化されて定着したものの例で言えば、例えばサブスクとかだと思うんだけど、それだけだと足りない感じがしてる。特に私たちみたいなインディペンデントなアーティストは特に。」

工藤「特に昨今、なかなか0スタートでうまくいくというイメージがない。例えば、既に自分を好きでいてくれてる人から生まれる拡散の重要性は思った以上に大きな役割を持っているよね。」

「そうだね。それこそ、ムーヴメントの在り方みたいな。積極的で活発な二人目がいてこそ広がるものがあるってやつ。あとは媒体に対する珍しさも案外大事なのかな、とか。『Ustreamを知っている自分』みたいな、いい意味での優越感があったのかもしれないよね。でいうと最近出たPla.Gooseのアプリとかも面白いよね。」

木村「K.K.も最近ファンクラブを新しくしたんだけど、手法こそオンラインではあるんだけど、在り方とか届け方はすごくアナログというか。」

「より実感、体感が大事だよね。デバイス上の流れを目で追うだけだと、動きがまだ足りなくて。だから変な話、アクションを誘導できるオンラインってすごく興味がある。笑うとか泣くって、見た人の動き自体が変わるし心が動いてるよね。いいものを作るってとこにも帰っていくし、そういうことが実際にできてるK.K.の活動見ててすごいなと思うと同時に、この一年、とても笑うって大事だなと痛感した!」

4.笑う、について


工藤「汀も、ライブで人を笑わせて見たいってこと?笑」

「二人と競う形では絶対無理(笑)だって絶対性格とかどこをとっても私は人を笑わせることで二人に敵わないから。でもこれは初めていうけど、コメディという形でいつか喜劇を書いてみたいと密かに思ってる。それは、音楽という形かどうかはさておき、ジャンルとして『コメディ』を作ってみたい。」

木村「俺は、瞬発力で人を笑わせたりする事が得意だけど、笑顔の形って色々あるなと思っていて。前に汀ちゃんのライブを見たときにバラードなのに、全部歌詞つきでお客さんに歌わせてたじゃん。あれちょっと衝撃だったんだけど、一つの笑顔の形だと思った。だからやっぱり、共有するってすごいパワーだし、笑顔の種になるよね。」

工藤「確かにね。その共有の形に関しては不思議なことに、オフラインでは今むしろできないよね。ご時世的にだけど、でもオンライン(配信)ではできる。そこにはこれからの俺たちの課題があるよね。どう楽しんでもらえるか、共有の形を作っていけるか、例えばオフラインをやったときでも感染者を出さずに徹底して成果を出していくことも大事だよね。」

「そうだね。共有という言葉が出たけど、声に出すと共鳴になるよね。音楽シーンにおいては共鳴もすごく大事だな、と思った。オンラインは、共鳴に対する実感が難しいよね。ライブシーンでの話にはなっちゃうけど。」

工藤「オンライン、オフラインを切り分けて、どういうものに感動してもらえるかとか、ちゃんと届くのかとか真摯に向き合っていくのが自分たちにできることだよね。」

木村「そうだね。まだこれからしばらくは、オフラインをやっても配信同時にやってほしいという声は上がると思ってるんだよね。だからなるべくいろんな立場の人のこと鑑みたときに持てる手段としての配信は持ってたいな。」

「わかる。配信ライブのコストって実際のライブかそれ以上かかるから葛藤しちゃう部分もあるんだけど、できることの一つとして大切だなと思う。かなりスタッフさん頼りでまだ手探りだけど。」

木村「そうそう。K.K.としては、すごくこの一年ですごく準備したつもりなんだよね。生き残る、生き残らない、稼ぐ稼がないじゃなくて、今のこの自分達のこと、絶対に置いて行きたくないという気持ちが大きいんだよね。いい意味で、感謝とかじゃもはやないんだよね。コロナがゼロとかもっと大丈夫にならないと来れない人めちゃくちゃいるしね。」

工藤「県を跨げないとかっていう人もまだまだ声を聞くよね。」

「そうだね。感謝とかじゃないって印象的な言葉だけど、本当にそうだなと思って。このお客さんとの関係って、本当に特別だと感じた。あとはこういうご時世になって、いろんな人の生活により思いを馳せたね。医療従事の人とかを始め、飲食だったりもそうで、普段の生活がこんなにも誰かの仕事よって支えられていたこと、誰かの心身の健康によって成り立っていたことを痛感した。」

工藤「本当にそうだよね。本当に頭が上がらないというか、自分に直接関わりのない仕事の人への配慮とか、想像する事がいかに大切か実感したし、ものづくりの人として、絶対に大切なことだよね。」

木村「そうだね。あともしかすると、海外は、少し電波のインフラなんかも含めて、日本より進んでるのかもしれないよね。それって、より広域で人に文化芸術を届ける基盤ができてるということかもしれないし、アーティストを支えてる気がした。日本だと、いまだに必要な機材が『一般の人には貸してないんですよ』と言われたりする。まだ制約が多いことが会場とかにもあったり。」

「そうだよね。国にもよるけど、カフェとかデパートに入ったらWi-Fi使えるとか普通だしね。助成金とか補償のあり方とかに対しても色々思うことがあったな。」

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4.心の変化

「このコロナ禍での変化の一つとして、数字に対する葛藤は減ったというか。何をやっても現状も思った以上に全然数字とか伸びなくて、頭を抱えることもあったんだけど、自分の行動一つで世界の中の一人が一瞬でも心救われることがあったらそれは意味のある事じゃんと思えたのはすごく大きかった。もちろんビジネスとして、活動を続けていく上では続かなくなっちゃうしそれじゃダメなんだけど。でも目の前のたった一人、という気持ちは強まった。」

工藤「うんうん。それってさっきの話にもつながるよね。数字としての認識はなくて、一人一人という個に向けての発信になったよね。ちょっと違う次元にいったよね。想いとしては。」

木村「そうだね。」

「ただ葛藤も増えた。奉仕活動ではない、けど、大きなプラットフォームがない分、繋がることをより大事にしたい気持ちと、生き残らなければ続けて行けないという気持ち。じゃあ、どこからが収益になってくんだろうみたいな。前はもっとシンプルだったから。本当はもっと前から棲み分けを考えておくべきだったけど(笑)工藤くんが言ったみたいにオフラインのためのオンラインだったから。まだもうしばらくは、コロナと付き合って行かなきゃいけないから、現状、観る方も演る方ももっと居心地よくなっていきたいなあ。」

工藤「本当にそうだよね。できること、これからもずっと考えていきたいよね。きっと身近なところにいろんなヒントがある気がする。見落とさずに、形にしていきたいね。」


対談はおよそ2時間に及びました。およそ10年の月日、お互いの活動を、近くから見てきた私たちが、改めて自分たちの歩んできた道や、今のこと、これからのことを話せた時間はとても価値がありました。

7月10日はこの3人で改めて「笑顔の生み方」というテーマでレシピを1つ作ります。

どんなHow toになるのか乞うご期待。

このライブが見られるのは、こちら。アーカイブは1週間とちょっとご覧いただけます。コロナ禍での活動の支援になります。参加していただけたら嬉しいです。






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