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パタヤの詩

タイから帰ってきた
紫の光に覆われた浜辺、白く老いた人たちが女を買う。性と音、ネオンに溢れたあの浮かれた通り。絡まる黒い電線、その下に横たわる人々、痩せたネコ
じめじめとした生に満ちた町


帰国して数日はぼやぼやと、からだと外の境界が不確実で実感のないまま過ぎていった。
この街は、白くモヤがかったようにやけに明るい。灰色に身を包んだ人々が、ランチの場所をもとめて通りに吸い込まれていく
日常に戻る。戻らされる。なんて安全で質朴な人々、なんて牧歌的な国なんだろう。ああ、、

あのパタヤのビーチでは、今も白い老人たちが女を買い
幹線道路沿いのマッサージ屋では、あどけない顔つきの女たちが客を待ち
旧市街の宿屋では、女主人が深夜に到着する客を迎える。
足元に寄り添う人懐こいネコ。

あの生ぬるいビーチの潮騒。ほおづえをついたオフィスの窓越しに、
じんわりと、浸み込んで来ないだろうか。


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