僕はシャツが欲しかっただけなんだ。

かつては愛した者達の別れに、子供や金が絡む場合の離婚は訴訟という措置が取られる。
愛は醒めると始末が悪い。
問題は子供にとっては親だという紛れもない事実があること。
半分の血を否定されたら、揺らぐものがある。
ましてや、我が息子は「ハーフ」なのだから。
だから、厄介この上ない状況に、私達は置かれがちだ。

先日、祖母が死んだ。
彼女は葬儀には呼んでくれるなと元夫の名前を口にした。
それは一族の合い言葉のように効いた。

ただ、葬儀が終わり、もし父親に聞かれたら事実を述べなさい。人の生死は偽るものじゃない。
そして、息子は話したのだ。
よりによって、葬儀の翌日。
すったもんだ第二章。
近所の人を巻き込む厳戒態勢が敷かれ、元夫と彼に捕まった息子は一緒に現れた。

全てが済むと、
息子は言った。

シャツが、デートに着ていく服が欲しかったんだ。

ああ、もうそんな歳になったのかと、涙ぐみ、好きな子のために服を選ぶなんて、気が利いていると誇らしくもあり。

シャツは派手だった。
とても元夫だった。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。

だから私は洗濯をしない。

息子はイソイソこそこそ洗う。
後ろめたい男性は総じて優しい。

悪くないレペゼン。
守りたいもののために。

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