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証券取引等監視官部門の役割と重要性

1.はじめに

こんにちは弁護士のスガオです。

今回は、財務局における証券取引等監視官部門について解説します。

私自身、任期付き公務員として、財務省関東財務局の証券取引等監視官部門において証券検査官として活動していました。

その経験を活かし、財務局における証券取引等監視官部門の役割ついてお伝えしていきます。



2.あるニュース記事について

証券取引等監視委員会は世間にも広く認知されているように思いますが、

証券取引等監視官部門は聞いたことがないという人が多いかもしれません。


例えば、ある証券会社に対する勧告事案において、以下のニュースでは「監視委は・・・の立ち入り検査を実施。」となっているなど、証券取引等監視委員会が検査を実施したと報道されています。


日経新聞:監視委、千葉銀など3社への処分を勧告「重大な問題」


しかしながら、その勧告事案に対応する証券取引等監視委員会が公表した勧告文には「関東財務局長が・・・を検査した結果」と記載しているため、その事案において検査を実施したのは、証券取引等監視委員会ではなく、関東財務局であることが分かります。


リンク:証券取引等監視委員会 ちばぎん証券株式会社に対する検査結果に基づく勧告について


3.証券取引等監視官部門の重要性

このような報道をみても、証券取引等監視官部門はまだマイナーな存在であるように思います。

しかしながら、証券行政における証券取引等監視官部門の役割も大変重要なものです。


私が以前触れたように、財務局は財務省の総合出先機関であり、金融庁・証券取引等監視委員会の事務委任を受ける機関としても機能しています。

財務局における証券取引等監視官部門は、財務局内において証券取引等監視委員会が掌握する事務を専門に担当する組織です。

証券検査について証券取引等監視官部門の重要性を具体的に見ていくと、例えば、令和4年度に実施された59件の検査であり、そのうち、証券取引等監視委員会によるものは12件であり、一方で、財務局によるものは47件となります。これは財務局が行う検査の方が多いことを示しています。


また、財務局70年史によれば、特に関東財務局の検査対象先は広範で、一定の金融商品取引業者を除き、金融商品取引業者の本店等の所在地を管轄する財務局長に検査権限が委任されています。

例えば、関東財務局が監理する金融商品取引業者は、約7,000社中約4,500社であり、適格機関投資家等特例業務届出者については約9割を占めています。


4.証券等取引等監視官部門の機構について

次に証券取引等監視官部門の機構についても見ていきたいと思います。


証券取引等監視官部門のトップである証券取引等監視官は、北海道、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州の各財務局及び福岡財務支局・沖縄総合事務局に1名ずつ置かれています(財務省組織規則190条1項、沖縄総合事務局組織規則第9条1項)。


証券取引等監視官が掌理する事務は、①金商法・金サ法・犯収法などの法律に基づく報告又は資料の徴取及び検査並びに調査(金融庁長官から証券取引等監視委員会へ委任されたものに限る)と②金商法・金サ法・犯収法に基づく犯罪事件の調査に関することです(同2項)。


証券取引等監視官部門の機構は、以下のとおりです。

各財務局により設置されていない役職もあります。



引用元 証券取引等監視委員会:令和4(2022)年度 証券取引等監視委員会の活動状況


財務局が行う監視事務には、➊証券調査(証券モニタリング)、➋取引審査、➌証券調査(証券調査の事務には、取引調査に係る事務と開示検査に係る事務がある。)、➍証券取引特別調査の4部門の事務があります(財務省財務局70年史より)。

他方、証券取引等監視委員会が行う監視事務が、①証券モニタリング、②市場分析審査、③取引調査、④開示検査、⑤犯罪事件の調査の5つに分かれておりますので(令和4(2022)年度 証券取引等監視委員会の活動状況の附属資料編より)、

証券取引等監視委員会が行う監視事務の①と財務局等が行う監視事務の➊とが、②と➋とが、③・④と➌とが、⑤と➍とがそれぞれ対応しているということになります。


そして、 ➊証券検査の実施に関する事務を分掌するのが「統括証券検査官」であり、関東財務局においては18人置かれています(財務省組織規則190条の2)。

統括証券検査官が、具体的な証券検査における「主任検査官」(証券モニタリングに関する基本方針参照)になります。


なお、ドラマ「半沢直樹」で片岡愛之助さんが演じた黒崎俊一の肩書は「証券取引等監視委員会事務局証券検査課統括検査官」となりますが、証券取引等監視委員会における「統括検査官」が財務局における「統括証券検査官」に対応するものとなります。


さらに、➋取引審査に関する事務を分掌するのが「統括証券取引審査官」、➌証券調査の実施に関する事務を分掌するのが「統括証券調査官」、➍証券取引特別調査の実施に関する事務を分掌するのが「統括証券特別調査官」となります。

そして、「統括」以上の役職に就いている者の氏名は、各財務局がHPで公表している幹部職員名簿で公表されている。


5.まとめ

このように、証券取引等監視官部門は、証券取引等監視委員会が掌握する事務を専門に担当する財務局内にある部門であり、証券取引等監視官をトップとします。公の認知度は高いとはいいがたいものの、その重要性は非常に高く、例えば、証券検査における対象先は広範なものとなっています。


以上、今回は財務局における証券取引等監視官部門について解説しました。

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