今、彼のことを話すのは

昨秋から観光地のカフェに勤め出した娘が 
紅茶やコーヒーに興味を持ち出し、
たくさんの茶葉やコーヒー豆を買い、
その淹れ方やそれらにまつわる本なども集め出した。

勤務先の店長さんに教えていただいたり
本やネットから調べた方法で楽しげに淹れている
(先日の誕生日には専用のケトルをプレゼントした)

私は飲むのは好きだけど人様にお出しできるほど
淹れ方が上手くはないので、受け売りだけど…と
かつて教えてもらった方法を娘に伝授する

教えてくれたのは元夫(=彼)だ。

茶葉はフォートナム&メイソンのアールグレイ
カップとポットは先に温めておき
ミルクを先にカップに淹れてから熱いお茶を注ぐ

コーヒー豆はマンダリン
計量スプーンできちんとはかり、
手早くミルで挽いて
最初は粉を蒸らす感じで、
ゆっくり少しずつ円を描くように湯を注ぐ


彼なりの「掟」みたいなものだった
いつも私に教えようとしてくれたけど
結局いつも彼ひとりの仕事になり
私は美味しいお茶をいただくだけで

そのやり方や確かこんな話もしてたかなあ?と娘に伝えると、彼女はまた丁寧にイラスト入りのメモをおこしている(娘は絵師でもあります…)

いつかまたお父さんに教えてもらうといいよ

なんの気なしに娘に投げかけたら
予想外の反応だった

「お母さんはもう辛くないの?」


…あらら、しまった!
娘や息子たちがあまり彼のことを話したがらないのは
私に気を遣ってのことだったのか。

辛かったことは何処かに置いてきた。
きっと彼とはもう会うこともないけど
彼が私や子どもたちにしてくれたことや
実際「父親」としてはなかなか健闘してくれたことは
ちゃんと私から子どもたちに伝えていかなきゃいけない

頑張って思い出す
これは!と思えるエピソードはその都度伝える!

私と彼の関係が歪んでしまった時期にも
彼は子どもたちを傷つけない配慮は欠かさなかった
(それが余計に辛かったと後で長男に聞いた)

彼は君たちをあいしていたよ。

紛れもない真実を
本来ならもっと長く身近に
受け止められていたはずのことを

自分の古傷はさておき
私はまだまだ君たちに話さないと
いけない事があったんだ。


12年振りにフォートナム&メイソンの
アールグレイを買って思い出すこと
教わった通りにしたのに
あの味にならないのは何故だろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?