ポケモンSV雑感

ソード/シールドとの比較とメタ視点から見るスカーレット/ヴァイオレット

ネタバレあり

  • チャンピオンロード

「仕事と趣味と文化」「ソード/シールドとの対比」「真剣勝負の世界へ入ること」の意図を感じる

各地のジムをめぐりチャンピオンと闘い、勝利を目指す往来のポケモンにおけるプレイヤーの主目的だがこのルートのみを追いかけると他と比べストーリー性が極端に薄い。
ジムチャレンジャーとして行動している主人公にとってはジムリーダーとしての側面としか触れないためバトルしてバッジを渡して終わる。

興行としてのポケモンバトルが主題のソード/シールドではジムリーダーたちはポケモンの育成と対戦が本業であり、ジム運営が副業や趣味の粋になっているスカーレット/ヴァイオレットとは明確に対比しているように見える。
見えるというかカエデはジム仕事を忘れるしコルサはどうでもいいとまで言い切っている。

ジムリーダーたちの本職と文化に触れる部分としてジムチャレンジでオリーブを模したボールを運んだりセリに参加してみたり配信に出てみたりすることでそれぞれの職業に興味を持つとっかかりになっていると思われる。
演劇でクイズ出してポケモンの能力を左右するようなことはしないあたり真面目に割り切ってる。

このあたり俯瞰して見ると仕事をしている大人でも趣味を持つことを是としているし、人には色んな側面があってしかるべきという印象を受ける。
この多様性を演出する部分はテラスタルというシステム自体にも表れているのか、各自最後に出してくるポケモンのタイプもジムリーダー各自の趣味イメージが強い。
テラスタルの情報が出た時にネットで騒がれたでんき単タイプが浮遊したら弱点が無くなる戦法を配信者は使ってくるしパティシエはこぐまのケーキ屋さんを開店する。

ただ必ずしもそれらは両立するものではないが、現数学教師である元ジムリーダーのタイム先生の存在が責められる事でもなく後ろめたい事でもないと諭してくれる。
学校の授業はジムクリアで解放され、授業を受けると先生の話が解放される流れを踏まえると、ポケモントレーナー以外の職業をしているジムリーダーを見て回る社会科見学をした後にジムリーダーを辞めて教師として働く人と話し合うことで、現実のポケモンを遊ぶプレイヤーへの語り掛けになっているのかもしれない。
というのも基本的に授業はゲーム内での仕様を学べるようになっているが言語の授業だけは半分ほどポケモンに関係ないリアルのコミュニケーションの話になっているあたり明確にプレイヤーへ向けてのメッセージになっているように思える。

このルートで何度も顔を合わせるネモについても、ソード/シールドのダンデやソニアとの対比として描かれているのかもしれない。
現実のスポーツやゲームにしても勝負事に関するのは男が主軸になることが多い中で女子がポケモンバトルという勝負事に積極的であり、かつそれはこの世界において普遍的であるのはトップチャンピオンも女性のオモダカであることからも印象強い。
その上この二人、学校大会が終わるまででバトルにのめりこんだ過去を注視するような描写も無く好き好んで勝負の世界に入り勝ち上がっているあたり背景も必要ないことを示している。
ソード/シールドのバトルマニアでチャンピオンのダンデは大人として興行のポケモンバトルやチャンピオンとしての立ち振る舞いを意識しているが、学生のネモはある程度自制しつつもバトルを仕掛けてくる上にライバル宣言を断ろうとすると断固拒否するあたり子供であることをのぞかせる。
後々明かされる周りの評価からして無自覚に主人公以前にも若い芽を摘んだりしていた可能性がある。
Twitterでは完全にヒソカ扱いになっているが否定できない。

四天王に挑む短すぎるチャンピオンロードについても、冒険は終わり純粋にポケモンバトルへ臨む姿勢を作っていたように思う。
最たるのは今までなかった面接要素。
挑戦理由や苦戦したジム戦を聞いてくるあたり、真剣勝負を行う際の心構えや苦戦した原因の洗い出し、知識の重要さを問うていた。
また四天王メンバーはポケモンバトルマニア要素が強めであること、年齢が幅広く性別も男女揃っているあたり多様性を重んじているようだ。
このときのムービーでネクタイ位置を調整するアオキがジムリーダー戦時と同じ動作でありながら四天王の共通グローブを見せる構図になっていることや四天王みんなでアオキをいじっているあたりスタッフにも相当好かれていることも感じ取れる。

総合すると、いろんな人や環境を見た上で明確な勝ち負けがある勝負の場に敬意を持って入ること、誰でも真剣に戦ってもいいと思える最後に着地するルートだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?