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曖昧さ不回避 そのへんのあれ

昔から、自分は半端者だなぁ、なんてことを思っていた。
色んなものを齧って、興味が薄れた時にサラッと離れていく。好きな人間、好きな音楽、好きな本が沢山言えるのに、「じゃあその中で一番は?」って訊かれると、全然決められない。

けれども、意外とこの半端さも役に立っていることに、大人になって気がついた。

例えば、絵を描く時のやり方。描いてる絵で行き詰ったときは、深く悩むだけ無駄だとわかってるので、さっさと別の絵を横で描き始める。それもまた飽きたら、最初に描いてた絵に戻ったり、また違う絵を描いたりする。ただ単に自分の性格の問題なのだけども、このやり方だと平均して5枚ぐらいを同時制作できちゃうので、制作時間が圧倒的に速くなる。

他にも、固定されたコミュニティに所属したり、人間関係がかっちりしてる場所が合わなさすぎるので、自分の居場所を固定するのを諦め、あっちこっちにフラフラするようになった。結果、その時々の気分により居場所を変えることができるようになって、人間関係で頭を抱えることがまったく無くなった。いつでも心が安定してる感じ。
あと、画家というザ・インドアなことをしているのに、世の中との接点を多く持てるというところも気に入っている。気を病まずに人並みの生活が送れているのは、なんやかんやフラフラしてるおかげだと思う。

そんなこんなで、今ではむしろ半端者を極めつつ、この考え方を軸にした作品を作っている。


作品テーマ”ニュートラル”の根っこ

▲私のシーニュによる、シニフィエのためのシニフィアン(I,II)


「様々な物事を、善と悪、白と黒、好きと嫌い、などはっきり言い切ることはできない、というか、できるわけない。」そんなことを思って、常日頃過ごしているのだけど、これは別に悲観してるわけじゃない。
だって、同じ言葉や文字一つにしても、自分たちが生きてきた環境や文化や時代背景、つまり価値観によって、それぞれ持つ意味が変わってしまうなんてことはざらにあるし、私からすると超美味しいご飯でも、友達からしたら二度と食べたくない激マズご飯だったり、あの日は素敵だと思ったけど、今日はまったくキュンとしなかったり、めちゃくちゃ大切なものなのに、お母さんにゴミと勘違いされ捨てられてしまったり、とかとか、所詮そんなもんだ。

でも、これが私自身すごく大切にしている考え方で、物事に期待しないことは、偏見を持たずに中立的なポジションで自主的に日々を過ごせることに繋がり、分かり合うことができない曖昧で中途半端で複雑な他者とですら、気軽に冗談を言うことができる。


今回の展示イベント『曖昧さ不回避 そのへんのあれ』は、そういう”分からないもの”や”曖昧さ”、”グレー”など、混ざり合っている物事の現象を、絵画作品だけではなく、状況そのもので表現してみたくて、絵画と音楽のコラボレーション、絵画と音楽に合わせた料理、そしてフクロウまでいる空間をつくってみた。
それぞれが互いに打ち消しあうのではなく、互いを融合させた場所になって、来た人が受け身になりすぎず、気持ちでも作品でも何かしら持って帰ってくれればいいなぁと、ワクワクしながら企画を立てた。文書にするとカオスって感じすごいね。

だけど、ただ好き勝手に場所を作っただけでは、情報量が多い喧しい空間になってしまう。それは避けたかったので、今回は入場料としてお金を貰う代わりに金額相当の作品を全員に渡すことと、全作品の説明文を配布するという、わかりにくさを少しだけわかりやすくする工夫をしました。直接的ではあるものの、頭の中が停止しっぱなしになるのをなるべく回避できるよう、主体的に考えるキッカケを渡したつもりです。

▲こじまっくすの燻製ポテチ。赤のソースは私のイメージ、白のソースは美有ちゃんのイメージで味を考えてくれたそうです。どっちもめちゃくちゃ美味しかった!

▲配った作品。裏面に英語と日本語で短い主張を書くことによって、人が気になるポイントを与えてみました。

やってみた結果、嘘偽りなく、自己満足記録更新の超楽しいイベントになりました。
歌を歌ってくれた佐藤美有ちゃん、料理を作ってくれたこじまっくす、そして来てくださった友達、先輩、仲良くしてるお店の皆さん、シェアハウスのみんな、友達の旦那、友達の友達、美有ちゃんの音楽仲間、などなど、全員のおかげでよりぐちゃぐちゃになった空間は、まさに『曖昧さ不回避』でした。
年齢、学齢、職業…色んな境界線がなくなって、溶けて、交差して、混ざって、そういう、言葉にするのがややこしい『そのへんのあれ』が出来上がっていたんじゃないかな。とっても面白かったです。

▲午前に流してた、美有ちゃんのアルバム、パッチワーク。ジャケットの絵と中の挿絵を提供させていただきました。がっつりコンセプトがあって、BGMにも主役にもなる曲がたくさん!


別にね、こういう展示やイベントをして「みんなも私みたいになろうよ!楽しいよ!」なんてことは一切考えてないし、「もっとたくさんの人に気に入ってもらうための作品を描こう!」なんてことも全く思っていません。自分がやりたいことしかやりませんし、やれません。
むしろ、私は私で勝手に楽しむので、みんなも勝手に楽しみな、というスタンツで活動しています。えへへ。

今年は疲れたので一旦休みますが、またこういう試みをしていきたいです。なんてったって楽しいから!もし一緒にやってみたい方や、興味を持ってくださった方は、ぜひ今度作品や私に会いにきてみてください。まってるね。

佐藤美有ちゃんのノートもみてね!私よりとってもわかりやすいし読みやすいです。笑

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スエイシ ユミ


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