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#26 Is that too much to ask?

「誰がこの私のひたむきの愛の行為を、正当に理解してくれることか。いや、誰に理解されなくてもいいのだ。私の愛は純粋の愛だ。人に理解してもらう為の愛では無い」

わたしは太宰の『駆込み訴え』が好きだ。夜な夜な朗読してしまうくらい好きだ。
けれども、自分があのイスカリオテのユダにこれまで感情移入するなんてことは、今回限りにしておきたい。


本来これはある人に宛てた「恋文」になるはずだったものだが、此度目出度く振られたということで、飽くまでも失恋の記録として残す。

いや、恋のつもりはなかった。
わたしはただ「仲良し」になりたかっただけなんだ。
できれば唯一無二の仲良しに。

どうせ、貴方はこんなものは読まないでしょうから、好きに書かせていただく。

わたしはただひたすら、貴方とまた言葉を交わせる機会を待った。およそ3ヶ月。

貴方に「いないもの」として扱われるこの拷問のような生活に決着をつけたくて、定期的にお返事を催促していたが、最後まで恨み言のひとつも言わせてはくれなかった。

こんなに無視されるなんて、こんなに苦しい思いをするなんて、ああ一体わたしはどんな悪いことをしたのでしょう

その理由含めしっかり貴方の口から出る言葉で聞きたかったんだ。

愚かなわたしは健気に耐えて数ヶ月を生きたが、なんだ、貴方はとっくにわたしのことなんてどうでもよくなっていたのですね。
わたしがどれだけ貴方の目に止まるような写真を撮ったとしても、どれだけ日常生活で苦しんで貴方に助けてもらいたくても、貴方にはどうでもよかったのだ。
仕事の休みが無さすぎて、ソンビのような日々を送り、髪が抜けニキビは増え、不正出血がある中「貴方とまた楽しく会話ができる日」だけを希望に生きているわたしのことは、もう気にもとめていなかったのだ。
わたしが死体になったとて、貴方はもうお経の一つも唱えちゃくれない。

わたしをうっとおしがる貴方の気持ちを全く気が付かぬまま、「また仲良く音楽や性癖の話ができるはず」だと勘違いして数ヶ月放置され続けたわたしが馬鹿だったのか、という話…

でもね、「返信は不定期になる」だなんて言われたら、そんなんまだ希望を見出してしまうに決まっているじゃないですか。

わたしは「見てるだけ」のただのファンのままでもよかったんです。
けれど貴方はわたしを見つけてしまった。あまりにもわたしが欲しい言葉をたくさんくださった。
あの言葉たちは、嘘偽りのない、貴方の口から発せられてわたしに届いたものだと、愚かなわたしは今も信じている。
英国での旅の写真を見せた時、「写真から音楽が聴こえてくる」だの「ロックが血管を流れている」だのとわたしを形容してくれましたね。ロックスターに憧れる旅人としてはその言葉がどれだけ嬉しかったことか。本当に貴方はわたしを喜ばせるのが上手かった。

初めて通話でお話した時も、急遽会えることになって1泊2日共に旅ができたのも、ただのファンにしては幸運すぎた。

あんなに楽しい時間を過ごしたわたしたちが、こんなにも早く寂しい関係になるのが耐え難くて、どうにかまた仲良しに戻れないものかと、わたしは悩み続けた。

まさかもう8月の時点で、貴方からわたしへの感情がゼロになっていただなんて、思わないじゃないですか…


これからネットで知り合う人間に気軽に「運命だ」なんて言うのは、やめてくださいね。クールぶってても舞い上がっちゃうんですから。

貴方に口説かれるのも、女として扱われるのも満更でもなかったし、貴方に触れて、貴方と繋がる妄想をしたのだって一度や二度ではない。
けれど、男女の関係になって気まずくなって貴方に距離を置かれるくらいなら、
わたしという存在を無かったことにされるくらいなら、女の感情なんてものは容赦なく殺してやる
やはりあの場で即YESと答えなかったわたしの判断は正しかった。
わたしは貴方の女になることなんて望まない。
みっともない嫉妬なんて全て捨て去って、貴方の美しさにただ平伏していたい。それだけ。

散々この「ただのファンだった奴」をここまで調子に乗らせておいて、この引き際は残念でなりません。


漫画に出てくるメンヘラ女のように、貴方に鬼電することも、メッセージを連投することも、(貴方が教えてくれちゃった)実家に凸することだって、わたしには出来たはずだ。何故しなかったのか。理由は一つしかない、「貴方に嫌われたくない」それだけだ。
わたしをこんなに哀しませる貴方を恨みたいけれど、それでも貴方を困らせたくなくて、大人しくしていたつもりだ。
けれど3ヶ月待っても、貴方が何も言ってくれないんじゃ、わたしはもうどうしたらいいのか分からない。
わたしはもう自分の寂しさを誤魔化すのに疲れちまいました。だからこそ決着をつけたくて、行動したのだ。


いきなり電話をかけるなんてことを今までしなかったわたしが、何故こんなことをするまでに至ったかなんて、ちっともお考えくださらない。確かにわたしはもうすっかり病み切ってしまっていて、余裕が無かった。
わたしのことを「相手の気持ちを考えず我欲を通しすぎ」なんて言っていたけど、貴方はわたしがどんな思いでこの数ヶ月を生きていたのか、お考えいただけますか。

貴方とまた仲良くお話するために、わたしはどうすればよかったんでしょう。


それにしても、わたしの誕生日が「ミッシェルの『バードメン』が発売された日」と同じだと教えてくれた貴方に、誕生日をスルーされたのは流石に応えたなあ…



〜だった、〜したかった、などと過去形で話すのは飽きた。以下に、わたしのTwitterの鍵垢での数ヶ月前のツイートを供養する。
これらをまとめて恋文として、貴方の実家住所宛に送り付けることだってできた。キモいのでしませんが。

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  ホテルの一室で、わたしが貴方を見て流した涙は、
そんな気軽なものでは無いんです。
もうあの御姿はわたしの走馬灯に必ずしも残る
なんて愛おしい 貴方の尊さに涙を流すこの行為が、
愛ではないのなら一体なんだというのでしょう
貴方と縁ができた今年の素晴らしい夏を、
忌々しいものになどしたくはないのです

ああ、はやく貴方とあの映画の話がしたい
劇中歌の「愛の起源」の歌詞にもあったような、「片割れ」と思わしき人と貴方は出会ったことはありますか
サントラの中で一番好きな曲はなんですか
そんな話をしたいのです
わたし、あれからあの主人公のメイクをしたりも
したんです
わたしがそいつに似ていると、貴方は言ってくれましたね どれだけ嬉しかったか分かりますか

貴方が一瞬でも、わたしとロックスターを重ねてくれた
貴方の中で一瞬だけでも、ロックスターになれたのならこの上ない名誉です

こんな素敵な人が横にいてくれている
あんな夢心地は本当に久しぶりだったもんだから、
舞い上がって仕方なかったんです
クソッタレた日常でしっかりと
貴方はわたしの光であった


これからネットで出会う人間に、
迂闊に本名や、住所なんて教えちゃダメです。
わたしがストーカー性質のある病んだ人間だったら、
今頃きっと貴方は…ああ、考えたくもない。
いやです、貴方が危ない目に遭うなんてことは。
想像したくもない。お願いですから、
わたしに向けてくれたその信頼を、
簡単に他人に向けるようなことは絶対しないでください

わたしは貴方の「忌まわしい記憶」などにはなりたくないし、わたしも貴方を「夢の人」だと思うには
まだ早すぎると思うんです
ねえ、またわたしに貴方を口説かせちゃあくれませんか


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今となっては叶わぬものたち、届かぬものたち
せめて時間が経って「いい経験してんなあ」と笑い飛ばせますように

いや、一歩引いて見ると確かに気持ちが悪いし、重いと形容されても無理はない。
この気持ち悪さが見透かされていて逃げられたのかな。
かなり普通を装っていたはずだったのに…
モリッシー崇拝者でただでさえポエマー気質の根暗ナルシストが、愛する対象を人間にしてしまうとこうなるのか…?
でもわたしには確かに、平伏しておきたい美の存在が確かに必要だった。

あ、そっか、平伏しておきたいとか抜かしながら友人にもなろうとしちゃうから気持ちが悪いのか

貴方にはこんなわたしがずっとおぞましかったのですね

夢見る馬鹿なもので、数ヶ月間ずっと貴方からの返事がいつか来るものだと期待してしまっていた

微かな光だけを頼りになんとか生きてきた数ヶ月。


夏に貴方とした旅を、また振り返る通話がしたかった
貴方が一番好きだと教えてくれたあの映画を語り合いたかった
貴方がプレゼントしてくれた服を着て、昭和ラブホでの撮影を楽しむわたしを見てほしかった
わたしのファーストタトゥーも見てほしかった
貴方とあの街を並んで歩きたかった…

悔いは残りまくりだが、こんなことを書いていてももう涙は出てこない。
貴方をわたしの大事な「秘め事」にしておく必要はもうないのだ。


一方的にこんな長文をぶつけるんじゃなく、ちゃんと言葉を交わして、 貴方の声でしっかりと、貴方の気持ちが聞きたかったんですよ。貴方が言葉をもってして名誉な仕事をされている方なら尚更。

関係を濁して少しばかりの希望を与えて放置しとくくらいなら、最後くらいわたしと話すことから逃げないでほしかったのです。


貴方の御御足にキスしたいという気持ちも今やすっかり失せている

ただただ、残念でなりませんという気持ちだけが残り
きっと良い友人になれると、心を躍らせていた日々は報われなかった。


貴方の真っ直ぐな美しさと、貴方の紡ぐ言葉たちを愛していました。
さようなら。

.
.
.
.

一方的に「さよなら」を言われてから二晩経って、気持ちはびっくりするくらい落ち着いている。
すっきりとした気持ちで「夏の思い出」として消化できると思う。
だってもう連絡が来なくて不安になる日は終わったのだから。TwitterもLINEもブロックされて、執着する必要がなくなった。
もっと早く決着をつけていたかったな
死出の旅におけるパートナー探しは、再び振り出しに戻る。


一先ず方はついたけど、以前からの悩みからは解放されたわけじゃない。


わたしが心から愛したい、大事にしたいと思った人は、なんだかわたしの元から綺麗さっぱり逃げていく
わたしを「忌まわしい記憶」にして
わたしの愛とは、そんなにおぞましくて醜いものなのか

愛させてくれる人間が傍にいてくれないから、わたしは英国とか、昭和ラブホとかに逃げる。人ではなく、場所に恋をしよう。音楽のような人生を旅するのだ

けれど、どれだけ音楽や映画や旅に憧れ、それらを真っ直ぐに愛しても、そいつらはわたしを抱きしめて頭なんて撫でちゃくれない、体温を感じ合うことはできない、わたしの名前だって呼んではくれない

わたしの愛とはもっと高尚なもので、そんなお気軽なものじゃなくて、儚くて、…美しいものであるはずだった    わたし自身が醜いならば、せめてもの美しい愛でありたかった

憧れはまだ遠い

「You just haven't earned it yet, baby
You must suffer and cry for a longer time」

わたしの神は悩むわたしに向かってこう歌い仰せる

まだわたしに苦しめと

苦しめば、もっと絶望を味わえば、神よ わたしは貴方のようなロックスターになれるのでしょうか


14.11.2022


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