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奇跡で、平凡で、幸せな。

苦しい展開に胸が締め付けられたり、
辛い過去に引き摺られたり、
残酷な現実に歯を食いしばるしか無かったりする。


涙が人を強くするとか、苦しかった分だけ成長できるとか、時が解決してくれて、いつか笑えるようになるとか。

よく言われるし、嘘じゃないと思う。


どん底から這い上がる主人公とか、辛すぎる過去を背負ったキャラクターの成長する物語とか、輝いて見えるのはきっとその姿が美しいからだろう。

辛いはずなのに、泣きたいはずなのに、よく頑張ったね。よく頑張っているねと尊敬できるから。


だけど、苦しい辛い思い出なんて、ない方がいい。

悲しくて出る涙より、嬉しくて出る涙を増やしたいし。

消してしまいたいほどの記憶なんか背負わない方が楽に生きられると思う。


なのに物語フィクションとして光が当たるのは、見えないし言葉でも表しきれない何かを背負いながら、必死にもがく人の一部分。

もちろん美しい。

けどね、そんなに苦しめる必要はあるだろうか。

辛い過去を背負わせる必要はあるだろうか。


その経験は人を強くするだろうけど、そんなもの経験する必要はなくて。

心を痛めつけることなんてしないでほしくて。


何が言いたいかっていうとね。


物語に描かれる美しく残酷で、恐ろしいほどに輝いた青春よりも、

泥臭く、ありふれていて、
きっとカメラにも走馬灯の一部分にも切り取られないような、
なんでもない日々の一瞬一瞬が
それが当たり前のように続いていることが
奇跡で、平凡で、幸せなんじゃないかなって。


それでも命を簡単に散らせたり、心を抉ったりするのは、
その出来事の方が色濃く遺ってしまうからなんだろうね。