AIがもたらすDXの新たな可能性
DXは次のフェーズへ
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、「デジタルを活用して、圧倒的かつ優れた顧客体験を提供し、事業を成長させること」です。
ここでの「成長」とは、「稼ぐ」「儲ける」と言い換えてもいいでしょう。
そもそもなぜDXが重要視されるようになったのでしょうか。
その背景の一つは、法人内でのスマホ・タブレットの普及とSaaS(サース:BtoBの業務ソフトウェア)の浸透です。業務プロセスそのものもDX化しなければ、生産性を高められず、企業は生き残れません。
さらに、GAFA(アルファベット傘下のグーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)やBATH(百度=バイドゥ、アリババ集団、騰訊控股=テンセント、華為技術=ファーウェイ)と呼ばれる巨大プラットフォーム企業の異業種参入です。そういった企業がデジタルを最大限活用し、自社や自分たちの産業に全く新しい競争原理を持ち込むことで、破壊(ディスラプト)されてしまうかもしれないという危機感も背景にありました。
これらに加え、新型コロナウイルスの世界的蔓延も後押ししました。対面で人と会うこともままならないなか、DXはコロナ禍によって大きく推進せざるを得ない状況になりました。経営者は否が応でもリモートワークやビデオ会議といった働き方の変化や、非対面・非接触を前提とした事業継続を余儀なくされました。
デジタルをフル活用し、稼ぎ、顧客体験を変えることが求められるようになったのです。
この辺りは拙著「90日で成果をだすDX入門」に詳しく書いてありますので、ご興味ある方はぜひ読んでみてください。
そして現在、コロナ禍を経て、DXは次なるフェーズを迎えています。「顧客体験=UX」と「業務プロセス=DX」がAIで直結される時代の到来です。
AIにより加速するDX
「顧客体験=UX」と「業務プロセス=DX」が直結するとはどういうことか。生命保険会社を例に、説明していきます。
流れとしては、①流入(商品検索)②獲得(申込/購買)③顧客管理(CRM)④オフライン(コールセンター/営業/契約)となります。①〜③が「顧客体験」、④が「業務プロセス」です。
AIで生成される顧客体験
まず、「顧客体験」を見ていきましょう。
例えばこの「Galileo AI(ガリレオAI)」を使えば、申込/購買ページのUIのモックをAIが制作してくれます。そのデザインは、そのままFigma(フィグマ)などで編集して使うことができます。
またすでに2016年の段階からアリババではAIでバナーを自動生成していました。
最近では、Meta(メタ、旧Facebook)やグーグルにもAIによる制作編集機能の搭載が発表されるようになりました。もはやプラットフォーマーがAIでクリエイティブを制作する時代になっているのです。
Meta AI Sandbox
Your marketing, multiplied by Google AI
このように、生成AIは、「顧客体験」に関わるクリエイティブやコンテンツ、UIを生成できます。さらにパーソナライズされたクリエイティブも生成可能ということです。
これは、AIが顧客体験を生成し、顧客体験に関するクリエイティブを制作していた人間の役割を代替する事が近い将来可能になることを意味しています。
業務プロセスを担う生成AI
続いて、「業務プロセス」です。
こちらに関しては、AIに指示すると人間の代わりにUIを操作してくれる「Adept(アデプト)」が460億円を調達するしました。
その「Adept」が公開しているACT-1というプロダクトのデモをご覧ください。
セールスフォースのUIを見事に扱って、リード情報を入れたり、電話のログを記入しています。
また、この「MULTI-ON」というChatGPTのプラグインのデモ映像もなかなか衝撃的です。
ユーザーの代わりにTweetを考えて投稿したり、お店の予約を名前や住所、電話番号などの個人情報を覚えて入力してくれたり、と途中プログラムを書いたりしながら、UIを操作して予約を完了している事がわかります。
これらのデモからわかる事は、生成AIは全く異なるインターフェースを扱って操作することができるという事です。さらに言えば、将来的には人間がUIを触らないで済む時代が来る可能性もあります。
すなわち、AIに指示すれば社内の基幹システムや営業システムのSales Force Automation(SFA:セールス・フォース・オートメーション)、マーケティング業務の管理・自動化のMarketing Automation(MA:マーケティング・オートメーション)ツール、LINEなどさまざまなものと組み合わせ、業務をこなすことができるという事です。
強いAIと弱いAI
現在のAIは、弱いAIと言われ、特定の人間の知覚や判断、学習の能力を模倣することで、高度なタスクを実行できるようになったものです。
弱点は、それぞれのAIが得意な事が非常に狭い範囲の事に限定されているという事です。
ただし、その狭い範囲の中では人間を遥かに超える能力を発揮します。
自然言語処理の分野では、AIが膨大なテキストデータを解析し、情報を抽出したり、意図を理解したりすることが可能です。また、画像認識や映像解析においても、AIは高い精度で物体やパターンを識別することができます。
この弱いAIを組み合わせることにより、企業や組織はAIを活用して様々な業務を効率化し、新たな価値を創造することができるということです。
例えば、AIを活用したチャットボットを導入すれば、AIが顧客の問い合わせに対応し、迅速かつ正確な情報を提供してくれます。これは、AIが大量のデータを即座に処理し、必要な情報を選び出す能力があるからです。
具体的には、AIは過去の顧客との対話データや関連する情報源を参照して、問い合わせに対する最適な回答を生成します。
その中で得た顧客の予算や納期の要望などの情報を、また別の弱いAIに受け渡し、それをSFAなどの顧客管理システムに人間の代わりに記入する事も可能です。
ここに人間は介在していません。
また、AIは24時間365日働き続けることができ、人間が休息を必要とする時間帯でも顧客の問い合わせに同時に対応することが可能です。
さらに、AIは機械学習を通じて常に進化し続けるため、経験とフィードバックサイクルを回すことで、その対応能力は向上し続けます。これらの要素が組み合わさることで、AIは迅速かつ正確な情報を提供し続けることができるのです。
こうして、ChatGPT、GPT-4に代表される生成AIの登場により、「顧客体験」と「業務プロセス」のDXをAIが接続し、さらにDXが加速する時代が到来しているのが今という訳です。
生成AIは人間のような自然な文章を生成する能力を持っています。これにより、顧客とのコミュニケーションはより人間らしいものになり、顧客満足度を向上させることが可能になりました。
さらに、生成AIは業務プロセスにも活用できます。例えば、顧客体験の自動化の中で生じた顧客との対応情報をビジネスレポートにしたり、SFAツールに起票したり、メールの自動回答などに使用することができます。これにより、従業員は繰り返しの作業から解放され、より高度な業務に集中することが可能になったという事に他なりません。
これが、生成AIの登場によりDXがさらに加速する理由なのです。
適応か?死か? 「AIリテラシー」がビジネス変革の要
AIとDXは互いに補完し合い、ビジネス変革の重要な要素となっています。そのため、私たちは今までのDX戦略をアップデートしていく必要があります。
生成AIの登場以降で、それを前提にしたDX戦略に書き換えていく必要があると言えます。
私たちの会社では、デジタル領域での顧客体験をより良くするために、さまざまなサービスを展開しています。たとえば、ウェブサイト上の顧客体験の向上を図るために、当然GPT-3.5やGPT-4をはじめとした様々な生成AIのAPIを利用し始めています。これにより、スムーズに生成AIを顧客体験に組み込む事が可能になりました。さらに、業務プロセスにおいても、AIを核としてシステムを結びつけ、それらの操作を自動化していくことで、業務の効率化を実現しています。
このような変化に対応し、DXを加速するために重要なのは、AIリテラシーです。
AIで何ができるのか? 何がリスクなのか? を正しく判断できる能力を、経営者及び組織のメンバーが身に付けていかなければなりません。
これまでのDX人材に求められるスキルセットは、「ビジネス(既存オペレーションに対する理解)」「クリエイティブ(ユーザーに対する理解)」、「テクノロジー(技術で何かできるか? )」の3つでした。
3つ目の「テクノロジー」がまさにAIリテラシーに取って代わられようとしています。
DXを加速し、ビジネス変革を行う上でAIでなにができるのか?というリテラシーを持つ事がこれからの最重要スキルとなると考えているのです。
まずは経営者自らが、そして組織全体がAIをどのように経営に活用していくか?を考えることができるAI活用経営人材にトランスフォーメーションする必要があるのです。
まさにヨーイドンの号砲で世界中で幕が開いた、新しい生成AI時代の市場の
競争ルールに適用していくための「AIドリブン経営」への進化を模索するフェーズに、全経営者が同時に突入したと私は考えているのです。
追伸
PIVOTの後半もかなり再生数が伸びております
ありがとうございます🙇♂
頂いたサポートは、災害地域やいくつかの支援を必要としてる社会的なプロジェクトに寄付させて頂いております。