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スーダンのコーヒー

暮らしに彩りをもたしてくれるものは数多かれど、コーヒーほど世界中の人に幸せを与えているものはないと思う。
一日の始まりや終わりにも、頑張りたい仕事の合間にも、読書のお供にも、コーヒーの味と香りは僕らを優しく包み込んでくれる。人類のコーヒーに対する愛は、1日に世界では25億杯のコーヒーが消費されていることからもはっきりしている。

コーヒー伝説

そんな、コーヒーと人間との出会いをあなたは知っているだろうか。コーヒーは5000年前にエチオピアで食用が始まったとされている。しかし、これは明確な史料が残されているわけではなく、伝説として言い伝えられてきた。
コーヒーの起源にはさまざまな諸説があるが、2つ有名な伝説がある。ひとつは、「コーヒーの実を食べた山羊が興奮しているのをみた山羊飼いが自分もコーヒーの実を食べてみたら精気がみなぎってくるのを感じ、近くの修道僧たちにすすめたところ、彼らは長年悩んでいた儀式中の睡魔から救われた』というもの。
もうひとつは、「無実の罪で追放されたイスラーム教徒が、小鳥がついばんでいる実を見つけ食べてみたところ、やはり活力が沸くのを感じ、やがてはその煮出し汁で病人を救った功績により罪を解かれた」というもの。
真偽は定かではないが、ここで重要なのはコーヒーの効能が古くから知られており、その魔力に人々が虜になっていたことではないだろうか。


スーダンの位置

日本のみなさんにはあまり馴染みがないと思うが、スーダンは北東アフリカに位置し、コーヒー伝説が残るエチオピアとはお隣の関係にある。スーダンとエチオピアの関係性は歴史が古く 、メロエ王国を滅ぼしたのはアクスム王国であるし、マハディの時代にはタナ湖近くまで攻め行ったりもしている。現在、日本のニュースで話題となっているルネサンスダムも大きな外交問題となっている。
エチオピアで始まったコーヒー文化がスーダンの生活にも深く浸透している。エチオピアもスーダンもコーヒーでゲストをおもてなしするコーヒーセレモニーが存在する。


カリオモンとは?

カリオモンとは、ゲストをもてなすために女性がコーヒーを淹れる作法のこと。エチオピアとスーダンの作法を比較してみます。

1.家を訪問する
居間に通され、主人と談笑
※イスラーム文化の強いスーダンでは、女性と顔を合わせないことも

2.女性はその間にカリオモンの準備を始める。
床に花などを敷き、コーヒーカップを置く台座を用意して、お香を焚く。
※スーダンでは、床にコーヒーカップを置かずにテーブルを用いる。

3.コーヒーの生豆を洗い、豆を鉄鍋に入れ生豆を煎る。

4.コーヒー豆を棒ですり潰す
※このとき女性たちは喜びの歌を歌う

5.素焼きのポットに水と細かくすり潰したコーヒーを入れ、火にかけてコーヒーを煮出す
※スーダンでは素焼きのポットよりも金属ポットを使うことが多い。

6.1杯目はアボルといい、砂糖をくわえて飲む。2杯目のトーナには塩を、3杯目にはカルダモンやクローブなどの香辛料、バターなどを加えるとされる。
※スーダンでは各々が好きな飲み方をできる。飲み方に決まった作法がない。

7.ゲストは3杯飲み終えた後、作ってくれた女性のこととコーヒーの味を褒めるのがカリオモンのマナー。
※スーダンでは杯数や文言に決まりがない

比較してみてわかる通り、スーダンのコーヒー文化はエチオピアの影響を受けつつも、より簡略化されていることがわかる。

路上のお茶屋シッタシャーイ

一見豊かにみえるこれらのコーヒー文化も裏を返せば、カフェインなしでは暮らせなくなっているカフェイン中毒者を生み出しているとも言える。
手軽にコーヒーが飲めるようにスーダンでは路上でお茶屋さんが商いをしている。これはシッタシャーイと呼ばれている。シッタとは、「女性」、シャーイは「紅茶」のこと、つまり女性がやっているお茶屋さんという意味になる。この露店のお茶屋スィッタシャーイは街の至る所にあり、朝から晩までコーヒーのニーズに応えている。
スーダンにおいてシッタシャーイの仕事は、女性が現金収入が得られる仕事として雇用のセーフティネットの役割を果たしている。
ただし、このシッタシャーイの商売を始めるには初
期コストが必要である。

次回

私は子どもの勉強の機会を守る活動を行っている。子どもが学校に通うためには学校の受け入れ能力を向上するだけではなく、子どもが働かなくて済むように家庭の収入を向上する必要がある。
今回、いただいた寄付金でシッタシャーイを1から作ってみて、成果と課題がみつかったので次回にそれを書いていきたい。

皆様からの温かいサポートは、日本に憧れを持ち、日本に留学する夢をもつスーダン人の若者が日本語を学ぶ活動に使わせていただきます。