アラフォー上海留学日記【138日目】

7/13 土

12時前に起床し、著者さんに教えてもらった朝ごはんの店へ。どこもかしこも骑楼(東南アジアおよび海南省、福建省、台湾、广东省、广西壮族自治区等沿海侨乡地区に見られる建築様式。一階がアーケードとなった多層建築)だらけじゃないか。南にきたんだなあとグッとくる。
四果汤の店をよく見かける。フルーツと豆などを混ぜた闽南スイーツ。闽南の結婚式用品店もあった。アーケードのおかげで、なんとか暑さもしのげて散歩が楽しめる。路上で何かを炒めているお姉さんがいた。干物屋の向かい、横断歩道で太刀魚みたいな魚が干されている。ここで干した商品を売っているのか。

お目当ての店、佳味再添小吃店に到着。店頭にはいくつかブースがあって、麺類、スープやおかゆ類、ちまき、おかず、と分かれているようである。扇風機はまわっているものの、ものすごい暑さ。汗が吹き出し、背中と胸に流れ落ちていくのがわかる。ブースのなかにいるおばちゃんたち、大丈夫なの?
まったく勝手がわからないので、とりあえずちまきのブースに行くと、食券は?と聞かれた。おばちゃんが指さしたほうにある食券販売所で、肉ちまきとエビ麺の食券を買い求めるが、8元? 10元? 12元?と言われてなんのこっちゃ状態。松竹梅みたいなこと? とりあえず両方とも10元のものにしてもらった。

イートインスペースはかろうじてエアコンが効いている。でも暑いことには変わりない。
肝心の味はというと、エビ面のエビ出汁がうますぎてちょっと二度見した。汗をかいたから塩味がよりおいしく感じる。とろとろ肉、ホタテ、栗、しいたけなどが入った肉ちまきもたまらない。梅っぽい爽やかさがあるチリソースに合わせて新感覚。中国に来てから食べた料理のなかでいちばん好きかもしれない。
ごはんを食べている途中で、蒸しあがったなにかが隣のテーブルにおかれた。これもなんだかおいしそうである。

ここから海までは徒歩で5分くらいの距離。店を出てそのまま海へ向かう。アーケードが途切れると灼熱地獄だ。厦門行き直前に買った日傘をさしているのに頭がくらくらし、こんな時間に出歩いてごめんなさいとなにかに赦しを請いたくなった。冷えた水を買い、脇や首にあてながら前へ進む。
コロンス島行きのフェリー乗り場(中国大陸の身分証保持者専用)のまわりの日陰で、島をながめながらぼーっとして休憩。植生がぜんぜん違う。アイス売りの自転車が何度か通りかかった。

地下通路に昔の厦門建築の構造が示されていた。なるほど、奥へ奥へと延びる形の住居だったんだ。

建築物を見ていると飽きない。ちょっとした意匠がかわいいんだよな。とはいえ、暑さで早くも歩くのがつらくなってきた。フレッシュジュース屋さんでスイカジュースを作ってもらう。

市場が見えた。このあたりはぜったい楽しい。いい感じの日用品屋と、ホヤみたいな果物の写真を撮る。

著者さんとの待ち合わせの時間が近づいてきたので、早めにお茶屋さんに入って涼む。入口がわからず、1階にあった旅行手配店の人に聞くと、この店の奥の小さな階段を上ればいいとのこと。なんというわかりにくさ。
中はとてもおしゃれで、ウェディングドレスを来た女性が撮影をしていた。雰囲気がいいから、撮影場所として貸し出しているんだろう。トイレはベランダわきの細い通路の奥にあり、不思議な設計にちょっとワクワクした。

著者さんがいらしたので、お茶を飲みながら仕事の話をば。お茶の入れ方がわからず、隣のお兄ちゃんに教えてもらった。著者さんは、中国の民間信仰を研究されいてる方で、厦門を拠点に全国各地にフィールドワークに出かけており、興味深いお話をあれこれ教えてくれた。厦門まで来てほんとうによかった。

著者さんのご厚意で、市場まわりを少し散歩。さっき見かけた謎フルーツは、ゼリー状の果肉をストローでチューチュー吸って食べるものだそうな。つぶつぶの入った経口補水液のような味。
ウニに何かを流し込んで加熱した食べもの、プルプルした皮みたいなもののゼリー寄せ、タケノコの漬け物など、ご当地食材に心躍る。包丁とぎのおじさんがかっこよかった。

無常(中国の民間信仰に登場する神仏のひとつ)が近くにいるから見てみますか?と、路地を案内していただく。あれっここじゃなかったかな、こないだ来たばっかりなんですけど、と著者さんも迷うほど路地が入り組んでいる。
階段で底上げされた建物が多い。海抜が低いからだろうか。また、厦門は石材が有名らしく、建築物には石材がよく使われている。

そしてついに、初めて生無常とご対面。裏路地の奥まったところに石の神様が祀られており、その横に白黒無常がいた。ここの神様の誕生日(農暦5/18)にはさまざまなイベントをやるそうで、お金を払えばここに名前をのせてもらえますよ、とのこと。
ああ、こういうのが見たかったんだよ。現地でしか見られない、経験できないもの。入り組んだ路地、湿気まみれの生活空間、突如現れる謎の神様。中国にきたかいがあった…としみじみ思う。通りの名前に八卦とあるのがまたよい。

さらに、近くにあるもうひとつの廟も紹介していただく。祀られているのは、殺害された38人の科挙。不慮の事故や不遇で死んだ人が神様として祀られるのはよくあることなんですよね~と著者さん。

そろそろ夕飯でも食べますか、ということで、島の北のほうにある市場にタクシーで移動。車内で日本語で話していたら、タクシーの運転手さんに、日本人? 日本鬼子! ハハハ~と言われてドキッとした。ただ、この運転手さんはとくに日本人に何か言ってやろうと思ってこの言葉を発したわけではなさそうで、その後は、息子が大学生のとき日本人の友達をうちに連れてきて、いっしょに日本の歌を楽しく歌ったよ、好听だった~とかのんきに話していた。ただの「ツカミ」として日本鬼子!と言っただけのようである。ドキッとさせないでくれ。

市場では、大きな水槽がたくさんあるエリアをひととおり見てまわり、小さい深海魚、見たことない白黒まだらの魚、はまぐりを購入した。

そしてメインディッシュはオオサンショウウオ(娃娃鱼)。日本では天然記念物だが、中国では食材である(養殖だけど)。水槽にぎっちり詰め込まれた娃娃鱼、大きいものだと1m近くもある。2人で食べるのでいちばん小さいものを老板に選んでもらった。70元くらいだったかな。

市場の2階にひっそりとあるレストランで、食材を調理してもらう。厨师のおじさんは、中華包丁でダンッと娃娃鱼を切りつけ、袋に入れて口を縛った。赤い袋のなかで、断末魔の娃娃鱼がびちびち動いている。動かなくなったら調理するとのこと。
ビールを飲んで待っていると、ついに娃娃鱼がやってきた。半分あっさり炒めに、もう半分は甘じょっぱいたれで煮絡めたパンチのある味に。ぷるぷると歯ごたえのある食感でおいしい。

おなかがいっぱいになったところで店を後にした。タクシーで地下鉄駅の近くまで戻り、なにからなにまでお世話になった著者さんにお礼を言って辞す。
水を買ったコンビニにいた犬がかわいかった。厦門の暑さと今日1日の目まぐるしい興奮の連続で神経が高ぶっているのか、まったく寝付けず、3時半ころ無理やり就寝。

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